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100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【対談】

100年経営対談

注目企業のトップや有識者と、タナベコンサルティンググループの社長・若松孝彦が「100年経営」をテーマに対談。未来へ向けた企業の在るべき姿を描きます。
対談2020.09.30

アフターコロナを見据え、九州のサステナブルなインフラに貢献し続ける:九州旅客鉄道 代表取締役社長執行役員 青柳 俊彦氏 × タナベコンサルティング 若松 孝彦

コロナショックの経験をサステナブルな経営に生かす

 

若松 全世界に広がったコロナショックの波紋によって、多くの産業がビジネスモデルの見直しを迫られています。

 

青柳 まさに、世の中が大きく変化しています。今回の経験からリモートワークが急速に浸透しているのはその一例です。

 

そうした世の中の変化を拒むのではなくチャンスと捉え、鉄道事業の在り方や事業体系を見直すことも必要でしょう。人間は経験によって変わります。強制的な経験であっても、それによって変わらざるを得ないと思います。

 

若松 おっしゃる通りです。経験したことのないリスクに直面したことで、時間と場所の概念が劇的に変化していますよね。

 

青柳 そうした変化は、コロナショック後も人や物の移動を担う企業に影響をもたらすでしょう。当社も早急に対応策・挽回策を打つ必要があり、日々、試行錯誤を重ねているところです。

 

若松 ここ数年、インバウンド(外国人旅行客)消費の増加によって潤った地域や産業ほど、コロナショックで多大な影響を受けています。サステナブルな経営を目指すならば、リスクヘッジした着地点を検討すべきでしょう。特定の顧客や分野に過度に頼ったビジネスモデルは、リスクが非常に高くなります。

 

青柳 当グループの場合、コロナショックでは鉄道事業だけでなくホテルや飲食、小売りといった全ての事業に影響が出ました。これは初めての経験であり、リーマン・ショックとの決定的な違いです。

 

これまでもポートフォリオを意識した経営を心掛けてきましたが、この経験をきちんと生かさないといけません。2016年の株式上場を機に、事業をどう体系付けていくか社内で検討を重ねているところですが、その意味でも非常に重要な局面となりました。

 

若松 中期経営計画の見直しを迫られる企業も多いでしょう。企業にとって、サステナブルな経営やBCP(事業継続計画)について、例外なく再考するきっかけになったと思います。

 

 

世の中の変化はチャンス。
これまで以上に九州の持続的発展へ貢献したい

 

 

社会インフラを担い九州の元気をつくりたい

 

若松 JR九州グループでは3年間の中期経営計画に加え、2030年を見据えた長期ビジョンを策定されています。先行きが不透明な時代ですが、今後のビジョンや展望についてお聞かせください。

 

青柳 10年先を見据えた長期ビジョンとして、「安全・安心なモビリティサービスを軸に地域の特性を活かしたまちづくりを通じて九州の持続的な発展に貢献する」を掲げています。モビリティーサービスとは、鉄道だけでなくタクシーやバス、自動車のシェアリングといった交通手段をつないだサービスのこと。お客さまの利便性を高めるために、あらゆる移動手段を結ぶMaaSの中で鉄道がどのような価値を発揮すべきか、あるいは価値を変化させていくべきかを真摯に検討しながら、鉄道がさらに存在感を高めていけるよう取り組んでいきます。

 

また、九州で事業を展開している以上、「九州の元気をつくる」という思いは、この先も変わることはありません。これまで以上に、鉄道事業やまちづくりを通して持続的な発展に貢献していきたいと考えています。

 

若松 JR九州グループの根底には強い「九州愛」があります。それが九州を元気にするインフラをつくり、発展を支える源となっているのでしょう。先行きの不透明な環境ではありますが、JR九州グループが地域を発展させる要としてますますご活躍されることを心より祈念しております。本日はありがとうございました。

 

 

※MaaS(Mobility as a Service)。ICTを活用して交通をクラウド化し、マイカー以外の全ての交通手段によるモビリティー(移動)を一つのサービスとして捉え、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念

 

 

 

九州旅客鉄道(株) 代表取締役社長執行役員 青柳 俊彦(あおやぎ としひこ)氏
1953年生まれ。1977年東京大学工学部卒業、日本国有鉄道入社。2005年九州旅客鉄道㈱取締役鹿児島支社長、2008年常務取締役鉄道事業本部長兼鉄道事業本部企画部長、2012年専務取締役鉄道事業本部長兼北部九州地域本社長、2013年代表取締役専務鉄道事業本部長兼北部九州地域本社長。2014年代表取締役社長、2018年より現職。

 

(株)タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ たかひこ)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

 

PROFILE

  • 九州旅客鉄道(株)
  • 所在地 : 福岡県福岡市博多区博多駅前3-25-21
  • 設立:1987年
  • 代表者 : 代表取締役社長執行役員 青柳 俊彦
  • 売上高 : 4326億円(連結、2020年3月期)
  • 従業員数 :8172名(2020年4月現在)

 

 

 

 

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