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ニューヨークレビュー
スタートアップファースト志向が
×Tech戦略を加速する
タナベ経営 若松 孝彦

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2019年4月号

今回は、2018年7月号の米国シリコンバレーリポートに続く、第2弾。2018年10月2日から7日にかけてビジネスで訪れたニューヨークをレビュースタイルで紹介したい。

ニューヨークでもベンチャー企業や市場が活況

ニューヨークの経済概要およびベンチャー市場の概略をあらためて紹介すると、ニューヨーク都市圏のGDP(国内総生産、2016年)は1.6兆ドルであり、カナダ(1.5兆ドル)、韓国(1.4兆ドル)、ロシア(1.3兆ドル)、メキシコ(1.0兆ドル)を上回る規模である。経済は底堅く、リーマン・ショックからの回復速度は米国平均を上回った。

ニューヨーク市では金融・保険、メディア、不動産などサービス産業の比率が米国平均に比べ高い。家計の年間支出額を見ると、ニューヨークは住宅関連支出が非常に大きいのが特徴だ。ニューヨーク都市圏の市場規模は他の主要都市圏よりも圧倒的な規模を誇り、日本に比べて若者や学生も多く、他地域より高所得者層の絶対数が多い。また、人種も多彩である。

米国におけるベンチャーキャピタル(VC)の投資動向を分析した「マネーツリー・リポート」によれば、2016年のニューヨーク都市圏への投資額は81億5593万ドル(1ドル=110円換算で8971億5230万円)と、サンフランシスコの211億3923万ドル(同2兆3253億1530万円)に次ぐ全米第2位である。

一方、2016年の日本におけるベンチャー資金調達規模は前年比22.3%増の2099億円(ジャパンベンチャーリサーチ調べ)で、日米のデータを比較すると、ニューヨーク都市圏への投資規模(円ベース)は日本国内の資金調達額の約4倍である。

世界のスタートアップ・エコシステムを比較・分析しているスタートアップ・ゲノム社の「グローバル・スタートアップ・エコシステム・レポート」によると、世界20都市のうち、ニューヨークはシリコンバレーに次いで世界第2位に評価されている。マンハッタンを中心に高所得者層が居住しており、巨大市場でのビジネスを目的に進出・起業するベンチャー企業が多い。

ユニコーン企業として知られ、先般、ソフトバンクの孫正義氏が大型出資(44億ドル)を発表した「WeWork」もニューヨーク発の企業である。WeWorkのビジネスモデルの本質は不動産の仲介業であり、不動産オーナーから借り上げた遊休資産を魅力的なコワーキングスペースに仕立て、幅広いビジネスパーソンに貸し出している。

金融、不動産、ファッション、メディア、大学(主にニューヨーク大学やコロンビア大学)など、多様な分野で事業パートナーや顧客となり得る企業が存在しており、人材も人種、性別を超えたダイバーシティー&インクルージョンが都市として成熟しているのだ。結果、ITと他産業を組み合わせて新しいビジネスサービスを創造する「×Tech(クロステック)」企業が多く生まれている。

今回の出張ではコロンビア大学にも訪問したが、キャンパスに世界中から学生が集まっている光景を目にした。大学関係者にインタビューをしてみると、留学生の多くは中国系やインド系の学生であり、日本からの留学生はめっきり減っているとのことであった。ともあれ、米国では身近なものとしてダイバーシティーが存在しているのだ。

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