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チームコンサルティング対談

クライアント企業などとタナベコンサルティンググループのプロフェッショナル・コンサルチームによる経営対談。企業成長の施策と成果を紹介します。
2020.06.30

食品ロス大国・日本の未来を
リサイクルの仕組みで変えていく:
日本フードエコロジーセンター × タナベ経営

料理(右下)写真はイメージ

 

食品廃棄物を有効活用した発酵液状飼料を開発し、ジャパンSDGsアワード※1の最高賞である「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞」を受賞した日本フードエコロジーセンター。循環型社会の実現を目指す同社の取り組みについて、創業者・髙橋巧一氏に話を伺った。

 

 

発酵液状飼料として未利用資源を活用

 

山口 日本フードエコロジーセンター(以降、J.FEC)では、「『食品ロス』に、新たな価値を」を掲げ、廃棄物処理と畜産農家の経営という二つの社会課題をビジネスで解決されています。まずは創業の背景を教えていただけますか。

 

髙橋 きっかけは1998年に農林水産省で始まった、未利用資源の利用推進事業です。世界的な人口増で輸入穀物の飼料が高騰すると、豚も牛も鶏も、日本の畜産経営は立ち行かなくなる未来が見えていました。対策として未利用資源、つまり食品廃棄物を家畜のエサに利用することを、私も農水省に打診していました。獣医師で経営コンサルタントも経験した私の話を面白いと思ってくれたのでしょう、打診後に農水省の方がワーキンググループ(WG)に参加させてくれました。

 

食品廃棄物の飼料化における最大の課題は、安全性の確保とコストです。安全で安心、安価な飼料でなければ、誰も使いません。ただ、腐敗を防ぐために必要な「乾燥工程」には膨大なコストが必要で、WGの専門家も頭を悩ませていました。そこで私が「(乾燥不要の)液状飼料にすればよいのでは」と提案したところ、「何だ、それは?」と。

 

液状飼料はヨーロッパでは当たり前の存在。例えば、チーズづくりの副産物であるホエー(乳清)やウイスキーの廃液は、栄養分が豊富で養豚のエサに最適です。そう伝えると、「君が始めるプロジェクトに補助金を出そう!」という話になりました。

 

山口 日本が直面する飼料自給問題の解決モデルですね。そこからビジネス化を進めることになりますが、小田急グループで事業を始動されてから黒字化に至るまでの道のりをお聞かせください。

 

髙橋 まず農場を借りた実験プラントで、日本古来から酒やみそに使われてきた発酵技術を使って保存性を高める「発酵リキッドフィーディング」を、産官学連携で開発しました。

 

その後、2001年に全ての食品排出事業者を対象に食品リサイクル法の施行が決まりました。スーパーマーケットや食品メーカーが続々と視察に訪れ、鉄道以外に百貨店やホテルも展開する小田急電鉄が「ビジネスとして、一緒にやろう」と声を掛けてくれたのを機に、2005年に小田急ビルサービスの環境事業部で「エコフィード」※2事業を立ち上げました。

 

実は、4年目には実質的に黒字化しました。しかし、多額の管理費や、決裁などの意思決定に時間を要したため、会社分割を提案して2013年に独立し、J.FECとして再スタートしました。独立以降、管理業務はアウトソーシングしてスリム化。意思決定のスピード感も高まり、黒字が続いています。

 

 

※1…SDGs推進本部(SDGs推進本部長:内閣総理大臣)が、持続可能な開発目標(SDGs)達成に資する取り組みを行う企業・団体などを選定し表彰している
※2…食品残さなどを利用して製造された飼料

 

 

日本フードエコロジーセンター
代表取締役 髙橋 巧一氏
1967年神奈川県生まれ。1992年日本大学生物資源科学部獣医学科卒。同年獣医師免許取得。経営コンサルティング会社、環境ベンチャー、(株)小田急ビルサービス環境事業部顧問を経て、現在、日本フードエコロジーセンター代表。2018年(一社)全国食品リサイクル連合会の会長に就任。

 

 

 

環境に良い事業だからこそ利益が生まれる

 

山口 エコフィード事業の特徴として、排出事業者は廃棄物の処理費用を、畜産農家は輸入穀物と比べて飼料代を削減でき、ブランドとしての付加価値を高められることが挙げられます。またJ.FECも、食品廃棄物の処理費と加工販売する飼料代、二つの収益が得られます。契約数はどのぐらいですか。

 

髙橋 食品事業所は180~190事業所、養豚場は15農場です。1日にスーパーなら1店舗で30kg~100kg、食品工場なら500kg~1t。合計で約35tの食品廃棄物が毎日、原料として工場に入りエコフィードに加工され、エサとして養豚場へ届けられます。

 

生育段階や目指す肉質が農場ごとに違うので、数種類のエサを農場ごとにカスタマイズして提供しています。365日休みなく稼働し、食品廃棄物はその日のうちに飼料化し翌日に出荷するので、基本的に在庫はありません。

 

 

エコフィードの原料となる食品廃棄物。品質の高い食品を有効活用しながら、フードロス削減に貢献

 

 

山口 1日に35tというのは、想像もつかないスケールですね。

 

髙橋 液状飼料を使う畜産農家は国内にほぼ皆無でしたが、今では約100万頭の養豚に使われています。全国の養豚数は920万頭なので、養豚飼料に占める割合は10~15%まで増えたことになります。工場見学者にはロイヤルティーを頂くことなくノウハウを伝えているので、私たちと同じモデルの事業者も誕生しています。

 

山口 国内外を問わず、多くの企業や団体から工場見学の申し出が寄せられていると伺っています。社長自身が他社にも惜しみなくノウハウを継承されるという行動の裏には「フードロスをなくしたい」という思いが込められていますね。

 

髙橋 工場見学をされると、皆さん驚きます。廃棄物と言っても、食べ残しや生ごみではなく、賞味期限が切れていないフレッシュな食べ物ばかり。原料として品質のいい食品を有効利用し、焼却炉で燃やすための税金も削減していることを、もっと世の中に訴求していきたいですね。

 

山口 環境負荷も軽減できる持続可能なビジネスモデルを実現されています。

 

環境・リサイクルビジネスは儲からないという印象をお持ちの方も多いかと存じます。

 

現在の業績についてお聞かせください。

 

髙橋 毎年増収増益で年商は現在3億1500万円、利益は数百万円で推移しています。環境ビジネスやリサイクルビジネスは「儲からない」「コストが高くつく」といわれ続けてきました。しかし、環境に良いことをやるからこそ収益性も高くなるし、リサイクルするからこそコストダウンができるというのが私の実感です。

 

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