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チームコンサルティング対談

クライアント企業などとタナベコンサルティンググループのプロフェッショナル・コンサルチームによる経営対談。企業成長の施策と成果を紹介します。
2020.03.31

ダイバーシティーの推進で、持続可能な建設産業を目指す:
国土交通省 × ゼムケンサービス × タナベ経営

けんちくけんせつ女学校の様子。「心・技・体」の面からアプローチし、建設業界で活躍できる女性リーダーを育成

 

 

建設産業では特に少子高齢化が進んでおり、持続的成長を見据えると多様な人材の活躍は必要不可欠だ。今回は、官民の視点から「多様な人材が活躍し、定着する」上で必要な取り組みについて聞いた。

 

 

深刻さを増す建設産業の人材不足と高齢化

 

――少子高齢化が進む日本の中でも、特に、建設産業は人手不足が深刻化しています。まず、現状についてお聞かせください。

 

髙城 建設産業は今、現場の技能労働者の減少や若手入職者の減少といった構造的な課題に直面しています。1997年に約680万人だった建設業就業者(技術者、技能者含む)は、2018年には約500万人と26%も減少。中でも深刻なのは、建設技能者の高齢化です。約330万人いる建設技能者の4分の1は60歳以上であり、将来に向けた担い手の確保・育成が急務です。

 

そうした中、行政・業界を挙げて建設業界の働き方改革に取り組んでいます。働き方改革関連法では改正労働基準法に基づき時間外労働の上限規制や罰則が設けられました。ただし、建設産業については長時間労働の常態化や週休2日の確保が難しいこと、人手不足などの諸事情によって規制が5年間猶予されています。

 

――5年後に備えて、具体的には、どのような対策を取られているのでしょうか?

 

髙城 まず、2019年6月に建設業法、入札契約適正化法、公共工事品質確保法という、いわゆる「新・担い手3法」が成立しました。同法は、働き方改革と生産性の向上による、女性や若年層など将来の担い手の確保を目的としており、これによって持続可能な建設産業の構築を目指します。

 

具体的には、「発注者、元請け・下請けを問わず、全てのプレーヤーが、適正な工期で契約する」という原則が明記され、工事責任者の規制も緩和されました。例えば、大規模な工事現場では、これまで責任ある技術者は一つの現場しか担務できませんでした。これを、若い技術者がサポートに付くことを条件に、複数の現場を担当できるよう改正しています。

 

――働き続けられる環境づくりの一方、高齢化が進む中で今いる若手人材の定着・早期活躍が求められます。その点について、取り組まれている「建設キャリアアップシステム」についてお聞かせください。

 

髙城 現在、国土交通省(以降、国交省)と建設業界団体が最も力を入れている「建設キャリアアップシステム」は、技能者の資格、現場の就業履歴などを業界横断的に登録・蓄積する仕組みで、登録者はすでに15万人以上。データベースを構築することで技能者の能力や経験に応じた適正な処遇を実現し、将来にわたって建設業の担い手の確保につなげたいと考えています。

 

また、キャリアパスや将来の処遇の見える化によって建設産業のイメージアップや、現場の勤務時間管理、書類の電子化による生産性の向上といったメリットを見込んでいます。

 

籠田 将来の建設業の担い手を確保する上で、非常に重要な取り組みだと思います。加えて、若手の登用が新・担い手3法に盛り込まれたことは素晴らしいと思います。建設産業の若者離れは深刻です。建設技能者労働者数について20歳代以下は全体の約11%にとどまります。

 

経営でよくいわれますが、人を育てるには「やる気」「やる場」「やり方」が大事。やる気がある若手に、やる場を与えて、やり方を変えていくことが、建設産業の活性化につながると思います。

 

 

ゼムケンサービス 代表取締役 籠田 淳子氏
1985年滋賀県立短期大学工学部建築学科卒業後、ハウスメーカー勤務やヨーロッパ留学などを経て、1993年に実家であるハゼモト建設に入社。デザイン企画・設計・木工事職長・現場監督など自分自身のキャリアから女性の多能工化に可能性を見いだす。2000年ゼムケンサービス代表取締役。建設産業女性活躍推進ネットワーク副幹事長、けんちくけんせつ女学校校長。

 

 

ダイバーシティーの推進で魅力あふれる建設産業へ

 

――建設産業の少子高齢化に対応していくためには、若手の定着・早期活躍だけでなく、多様な人材を雇用し、活躍の場を生み出すことが必要になります。多様な人材を雇用する企業のメリットについてお聞かせください。

 

籠田 多様な人材の雇用を促進するメリットは三つあります。「新たな労働力の確保」「多様な人材によるイノベーションの創造」「新たなリーダーシップを形成することによる価値の向上」です。

 

――多様な人材の雇用・活躍を通じて、企業としても新たな価値を生んでいくということですね。

 

多様性(ダイバーシティー)とは「目に見えるもの(性別・年齢など)だけでなく、目に見えないもの(価値観・スキルなど)」を指します。今後の技術革新を含む時代の流れに見合った“新しい価値”を提供するためには、“まずは多様な人材を雇用し、多様な価値観を受け入れること”が必要ですね。

 

籠田 そうですね。その中でも特に女性雇用を行うメリットは、「女性ならではの多角的な視点(母の視点、娘の視点、仕事視点など)」による気付きを業務に生かすことができる点です。それは、現場サポートの仕組みづくりや新たなサービスの開発など、さまざまな職種において求められる視点です。

 

また、女性を含む多様な人材の雇用の確保を進める一方で、定着率を高めるためには、「誰もが働き続けられる環境づくり」が必要です。

 

――その手段の一つが女性雇用であり、女性が働き続けられる環境づくりを通じて、「誰もが働き続けられる環境」をつくるということですね。

 

 

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