オーナー、役員、社員による合議制経営へ
ホールディング経営導入で100年企業を目指す
千代田ホールディングス×タナベ経営
2019年7月号
福岡県に本社を置き、電気通信や空調計装、情報を中心に事業を広げる千代田ホールディングス。2015年、創業60周年を機にオーナー経営からの脱却を図るため、グループ会社を再統合する大胆な組織変更を断行。オーナー、役員、社員による合議制経営を目指して新体制をスタートさせた。
オーナー・役員・社員による三権分立の組織を構築
中須 千代田ホールディングスは、千代田興産、千代田計装、千代田情報システム、大和冷機をグループ会社に収める持ち株会社です。その始まりは1955年に創業された千代田電機(現千代田興産)にさかのぼります。まずは、これまでの経緯をお聞かせください。
谷川 父・雅雄が炭鉱に電線を販売する代理店として創業しました。1956年に日本電線(現三菱電線工業)の代理店となったこと、1960年にビルの空調設備を扱う山武ハネウェル(現アズビル)と特約店契約を交わしたことで事業が拡大。エネルギーが石炭から石油へと移行する流れに合わせ、電線やモーター、電灯、空調設備へと商材を広げながら順調に成長していきました。
その後、業務拡大を受け、1971年に計装部を独立させて千代田計装を設立。さらに2001年に千代田興産のコンピュータシステム部を、千代田情報システムとして分離しました。
中須 各社が専門性を高める形で分離独立を進めてこられました。それを再統合されたのはなぜでしょう?
谷川 以前から、「会社は誰のものか」について考えてきました。会社は「社会の公器」といわれる通り、オーナーが会社を私物化すべきではないと思います。私は社員を守るために会社を経営していましたが、本来は力のある人材が社長になるべきだと考えています。
ただ、社員が社長になる場合、経営者の個人保証は大変な問題ですから、千代田興産、千代田計装、千代田情報システムの3社を再統合するホールディングス化を決断しました。さらには2016年にM&A(合併・買収)を通して大和冷機がグループ会社に加わり、現在の形が出来上がりました。
中須 組織変更に伴って谷川取締役(前代表取締役社長)は所有していた株式をホールディングスに拠出し、役員持ち株会や社員持ち株会に充当されました。その理由をお聞かせください。
谷川 目的は、オーナー家の独断専行の抑止です。以前は、私と弟の幸雄を中心に谷川家が全株式の51%を保有していました。その比率を42%まで下げる一方、役員持ち株会を29%、社員持ち株会を29%まで引き上げました。
オーナー家と役員、社員の株式保有比率を近づけることで資本の三権分立を実現したのは、3者による合議制で経営する組織を目指したためです。
中須 資本構造だけでなく、組織面でも合議制による経営を明確にされています。
谷川 経営戦略の最高意思決定機関は千代田ホールディングスの取締役会に持たせています。取締役会のメンバーは同社の代表取締役社長と取締役によって構成されていますが、グループ各社の社長が取締役を兼任する形としました。社長の選出や経営方針の決定といった重要事項は、全て役員会で決めています。

千代田ホールディングス 取締役(前代表取締役社長) 谷川 進氏
1946年広島県生まれ。九州産業大学工学部卒業。1972年千代田興産入社。1985年取締役、1992年代表取締役社長。1997年千代田計装取締役、2001年千代田情報システム代表取締役社長。2008年千代田興産代表取締役会長、2009年千代田情報システム代表取締役会長、2011年千代田興産会長、2015年千代田ホールディングス代表取締役社長。2019年5月より千代田ホールディングス取締役、千代田情報システム代表取締役社長。