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未来をつくる人たちへ:戦略リーダーの時代

タナベコンサルティンググループが支援した「戦略リーダー人材」育成の取り組みを紹介。育成システムや人事制度の再構築など、「人づくり」のための施策を追います。
2020.09.30

山田製作所:「多品種・スピーディー」にこだわり、危機に強い企業体質を実現

 

 

 

 

少量・多品種に軸足を置き販路を拡大

 

自動車関連部品や電気機器をはじめ、さまざまな業種の工場が集積する愛知県春日井市。1977年にこの地で創業した山田製作所は、真鍮やアルミ、ステンレスといった金属の切削加工に特化した精度の高いものづくりを武器に事業を広げてきた。

 

時代に合わせて、ガス給湯器関連や水道部品、空圧継ぎ手、医療関係へと販路を拡大してきた同社だが、愛知県にありながら自動車関連に事業の軸足を置いていない。その理由について代表取締役を務める山田政浩氏は、「参入した時期が関係している」と説明する。

 

「私が会社を起こしたのは高度経済成長期を過ぎた時期でした。金属加工においては、この地域で最後発に当たります。大量発注が見込まれる自動車分野にはすでに先発企業が参入しており、当社の入り込む余地はありませんでした」

 

ただ、一方で少量・多品種の切削加工には、まだ仕事が多く残されていた時代。そこに着眼し、地道に取り組んだからこそ「生き残ることができた」と山田氏は振り返る。

 

「少量・多品種生産の場合、大量生産と違って頻繁に機械をセッティングする必要があります。そうした仕事を数多く経験したことで技術力が高まり、人材が育ちました。これが現在の当社の強みとなっています」(山田氏)

 

例えば、2014年にスタートしたデンタル歯科材料の加工はその好例だ。ホームページをきっかけに見積もり依頼を出してくれた企業にサンプルを提出すると、高い加工技術が評価されて採用が決定。これまでに蓄積した豊富なノウハウを生かせる新たな市場は、将来的に需要拡大が見込める有望分野であるだけでなく、経営を安定させる事業ポートフォリオの面においても重要な位置付けとなっている。

 

「幸いなことに、当社は新型コロナ禍の影響をほとんど受けていません。デンタル歯科医療分野で新たな事業が育っていることも一つの要因ですが、特定の業種に偏ることなく幅広い業種と取引があるおかげです」(山田氏)

 

 

山田製作所 代表取締役 山田 政浩氏

 

 

 

働きやすい環境づくりで女性活用を促進

 

医療という新分野を切り開いた同社は今、人材面でも女性活用という新たな挑戦に取り組んでいる。

 

製造業の中でも金属加工は力仕事が多いといわれる分野。男性の職場といったイメージを持たれがちだが、同社は早い段階から積極的に機械化を進めてきたことで、性別に関係なく仕事ができる環境がすでに整っていた。それに加えて、経験豊富な社員が教育担当者としてサポートする体制や、女性用トイレをリフォームするなど環境面からも女性が働きやすい職場づくりを進めている。

 

 

職人の技術と営業的視点で顧客のニーズに応える

 

深刻な人材不足に悩む中小企業は多い。山田製作所も例外ではないが、同業他社に先駆けて進めた機械化が、女性活用という活路を開いた。ただ、山田氏を積極的な設備投資へと駆り立てたのは「お客さまの要望に応えたい」という強い思いであり、そこから導かれた「多品種・スピーディー」という同社のモットーが成長の源であることは間違いない。

 

「同じ製品を作れる企業は他にもあるでしょう。ただ、多品種への対応やスピーディーな納期など、お客さまの要望にお応えする力は他社に負けないと自負しています。

 

良いモノを作るには職人として腕を磨くことが大事です。しかし、今の時代は、お客さまのニーズに向き合い、それに応えるという営業の視点が欠かせません。難しい仕事も、どこかが引き受けなければなりません。ならば、当社が『その“どこか”になろう!』と、いつも社員に伝えています」(山田氏)

 

困ったときに真っ先に思い浮かぶ企業。それは、顧客にとってのファーストコールカンパニーだ。「縁の下の力持ちとなり、お客さまに頼ってもらえる会社になる」。その思いを社員と共有しながら、山田製作所はさらなる飛躍を目指していく。

 

 

 

PROFILE

    • (株)山田製作所
    • 所在地:愛知県春日井市松河戸町2-1-8
    • 創業:1977年
    • 代表者:代表取締役 山田 政浩
    • 売上高:11億円(2020年4月期)
    • 従業員数:45名(2020年6月現在)

 

 

 タナベ担当者より 

山田製作所は、他社が参入しづらいニッチな業界(少量・多品種生産)をあえて主戦場とし、圧倒的な「スピード」によって付加価値を高めながら、成長を継続してきた。そのスピードへのこだわりが、機械による自動化を推進させ、結果として、性別や年齢に関係なく働ける職場環境を実現させた。

 

つまり、山田製作所は、何か特別に社員を教育する制度づくりへ取り組んできたわけではない。山田氏の徹底した「こだわり」が、優秀な社員を集め、成長させることにつながっているという事実は、多くの経営者が見習うべき点と言える。

 

 

経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント
大金 雄一郎

 

 

 

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