TCG REVIEW logo

100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【インタビュー】

変革への挑戦

独自の経営や独創のビジネスモデルで、業界と自社の変革に挑む企業とその施策を紹介します。
インタビュー2021.08.02

日建リース工業:「機能活用」を軸に新領域へ進出する

 

魚を眠らせて運ぶ「魚活ボックス」。1箱で、約1.5kgのマダイを200匹ほど収容可能。産地から消費地までの長距離輸送、飲食店への短距離輸送、店舗での活魚備蓄槽など、幅広い用途がある

 

 

日本の仮設資材レンタル業界のリーディングカンパニー、日建リース工業。建設業界にとどまらず幅広い分野にレンタルサービスを展開し、新領域で次々と事業を創出しながら、さらなる成長を目指している。

 

 

建設業界から介護業界・物流業界へ

 

建設用仮設資材のレンタルを皮切りに、ユニットハウスやオフィス備品、物流機器、介護用品など、新しい分野で次々とリース・レンタル事業を拡大してきた日建リース工業。「所有する」のではなく「機能を活用する」という発想でさまざまな新サービスを提供し、顧客の業務の効率化やコストダウンに寄与すると同時に、限りある資源の有効活用という社会貢献も果たしている。

 

同社の創業は1966年。日本は高度経済成長期にあった。道路や鉄道など交通インフラの工事が盛んに行われ、オフィスや商業施設、マンションなどのビルも次々と建設されていた。こうした工事・建設の現場には、作業員の作業用足場や現場を囲うフェンス、資材の落下を防止する安全ネットといった資材が不可欠。顧客が必要とするときに必要なだけ貸す仮設資材レンタル事業は順調に成長を遂げた。

 

1974年には、建設工事の事務所として活用できるユニットハウスをはじめ、そこで使用する机や椅子、棚、OA機器などの備品レンタル事業を開始。幅広い資材レンタルで、大規模工事から特殊工事まで数多くの現場を支えた。

 

しかし、1990年代のバブル崩壊後、道路建設などの公共事業は一気に減少。ビルやマンションの建設も、景気の冷え込みから需要が鈍化した。

 

「このままではいけないと判断し、他分野への進出を図りました。その代表が介護事業と物流事業です。超高齢社会へと突入しつつあった2000年代の初め、近い将来には介護のニーズが高まると考えて、介護ベッドなど福祉用具のレンタル事業を開始しました。同様に、物流業界もeコマース(EC)の浸透などで拡大が望めると考えて参入。常に先手を読んで成長できる市場を選択し、培ってきたレンタルのノウハウを生かす新規事業を開拓しています」

 

異業種への進出を果たした背景をそう語るのは、日建リース工業の代表取締役社長、関山正勝氏である。同社は現在、「仮設資材」「ハウス・備品」「物流機器」「介護福祉用具」の4本柱でレンタル事業を展開している。

 

 

M&Aを重要な成長戦略と位置付ける

 

もう1つ、日建リース工業の特徴として挙げられるのが、複数の企業をM&Aにより子会社化し、グループで経営を行っていることである。ただ、同社のM&Aは、後継者が不在で承継が難しい企業を存続させるために株式取得などを行ってきた結果だと関山氏は言う。

 

「日本のように成熟した市場では、M&Aは有効な成長戦略です。しかし、企業規模の拡大を目的にM&Aを行ったことは一度もありません。また、グループ化による事業のシナジー効果も求めません。当社がグループ各社に経営的な介入をすることはなく、連結決算も行いません。各社が自立経営を行い、自社の事業を成長させることが最も大切だと考えているからです。そのため、当社は今も単独で新たな事業を立ち上げ、新領域や新市場の開拓を行っています」

 

この言葉を裏付けるように、関山氏が社長へ就任した2012年からの8年間で、522億円だった売上高は898億円(2020年9月期)まで伸びた。年平均で7%の成長率だ。2024年には売上高1000億円を目指すという。

 

原動力はさらなる新事業の開拓。その代表が「トンネル事業」である。2018年、同社はトンネル技術の開発で定評のある東宏(北海道札幌市)の株式を95%取得。2019年には日本コンベヤ(東京都千代田区)、宇部興産機械(山口県宇部市)と提携してトンネル工事という新分野に乗り出した。

 

レンタル提供するのは、長さ2km以下の短距離トンネル工事用のベルトコンベヤーシステム「モール・ストレッチ・コンベヤ」である。通常、短距離トンネル工事で搬出される土砂はダンプカーで運ばれるが、粉塵や排気ガス、騒音が出るという課題があった。この課題解決のために開発したのが、移動式の高性能破砕機と連続延伸コンベヤーをパッケージ化したモール・ストレッチ・コンベヤだ。安全性と生産性の向上、現場の環境改善にも寄与するシステムとして注目を集めている。

 

 

 

「はーとふる農園」では、特別な農具や機材を必要としない「高床式砂栽培」を採用。腰をかがめずに作業できるので体への負担が軽く、車イス使用者も無理なく作業が可能

 

 

スモールスタートで領域を拡大していく

 

すでに進出した物流業界においても新しいサービス提供を始めている。物流倉庫の商品を保管するラックや商品を運ぶ鉄製パレットといった従来のレンタル資材に加え、平パレットのレンタルも取り扱うようになった。

 

「物流業界へレンタルパレットを提供する企業の中で、当社は最後発組です。そこで、まずは需要が安定せず先発企業がやりたがらない鉄製パレットのレンタルに参入。この分野でシェアナンバーワンを獲得してから、平パレットのレンタルサービスを始めました。大手の半値近くで提供することで顧客を増やし、徐々にシェアを伸ばしています」(関山氏)

 

物流業界へ積極的に進出する背景には、同業界が抱える課題を解決したいという思いがある。高齢化によるドライバー不足やEC需要による荷物数の増加などで、人の手による荷物の積み降ろしは限界にきている。フォークリフトで荷積み・荷降ろしができる平パレットの需要は高まっており、そのニーズに合致したサービス提供によって、同社は物流業界で独自のポジションを確立したのである。

 

同社の挑戦は「食」の分野にも広がっている。その1つが、魚を眠らせて運ぶ新しい水産物輸送システム「魚活ボックス」だ。

 

おいしい魚を消費者の元へ届けるには、新鮮な状態での輸送が不可欠。だが、従来の活魚輸送では、輸送中のストレスで魚が弱ってしまうことが多い。また、輸送に使われる活魚車は1台4000万~5000万円、輸送コストも1回当たり40万~50万円と高額で小口輸送には向かず、水揚げ量の少ない漁港では導入しにくい。品質・効率ともに良いとは言えない流通の現状を改善しようと、同社は2017年に水産業向け物流事業へ参入した。

 

魚活ボックスは、水槽内の海水に二酸化炭素を溶け込ませ、魚を低活性化(眠ったような状態に)することで、一度に多くの魚を生きたまま輸送できる。ボックス内には酸素ボンベとセンサー、バッテリーがコンパクトに収納されており、簡単な操作で使える。

 

魚活ボックスのレンタル料は1日当たり1箱2200円(税込)。魚の低活性化には、ボックスとは別に「移動式麻酔装置」も必要だが、一般的な活魚車と比較すると約5割のコスト削減につながるほか、鉄道で輸送することも可能である。少量輸送や短期間利用にも柔軟に対応できる。

 

さらに、同社はサーモンの陸上養殖にも取り組み始めている。世界人口の増加や過剰漁業などにより、水産資源の適切な管理が社会的課題となる中、魚の養殖は将来の食糧危機を救う有効な方法だ。中でもサーモンの養殖は、マグロに比べて餌が少量で済み、低コストで環境にも優しいため、盛んに行われている。しかし、海洋で養殖すると、食中毒を引き起こす寄生虫「アニサキス」がサーモンに寄生しやすい。そこで同社は陸上養殖を選んだ。

 

「井戸を掘って地下海水をくみ上げ、サーモンを養殖する計画が進んでいます。海洋養殖では、アニサキスの発生を抑えるために抗生物資を与えることもあり、安全面に疑問が残ります。その点、無酸素のためアニサキスが発生しない地下海水を使った養殖は、安全でおいしいサーモンを提供できます」(関山氏)

 

また、2018年にスタートした障がい者雇用サービス「はーとふる農園」(埼玉県飯能市、神奈川県愛甲郡愛川町)は、郊外で働きたい障がい者と、障がい者の雇用率を上げたい企業のマッチングを図り、障がい者の就労機会を創出する事業だ。同社が中古の仮設材料を再利用してビニールハウスや高床式の砂栽培装置を整備。障がい者はマニュアルに沿った農作業で野菜などを栽培し、スキルアップしながら継続して働ける。

 

「大都市圏にある企業の本社などには幅広い業務があるので、障がい者の能力や職業適性を生かす雇用が可能です。しかし、1人で何役もの仕事をこなすことが多い地方の営業所などでは、障がい者を雇うことが難しい現状がある。また、健常者と同じ環境で働くことが、障がい者にとってストレスになるケースもあります。そこで、障がい者が中心となって農作物を育て、それを出荷することで社会とのつながりも実感できる農園を始めました」(関山氏)

 

新しい事業領域へ次々と進出し、多角化を推進する日建リース工業。「レンタルを通して大いなる社会貢献と幸せの創造」を目指す経営理念の実現に向け、参入分野の業種・業態の発展に今後も貢献していく。

 

 

静岡県・三保半島の地下海水をくみ上げて行うサーモンの陸上養殖。アニサキスフリーの安全性と活魚流通による新鮮さを売りに、新たな地域ブランドの創出を目指す

 

 

日建リース工業 代表取締役社長 関山 正勝氏

 

 

PROFILE

  • 日建リース工業(株)
  • 所在地:東京都千代田区神田猿楽町2-7-8 住友水道橋ビル3F
  • 創業:1966年
  • 代表者:代表取締役社長 関山 正勝
  • 売上高:898億円(2020年9月期)
  • 従業員数:1759名(2021年5月現在)

 

変革への挑戦一覧へインタビュー一覧へ

関連記事Related article

TCG REVIEW logo