TCG REVIEW logo

100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【対談】

100年経営対談

注目企業のトップや有識者と、タナベコンサルティンググループの社長・若松孝彦が「100年経営」をテーマに対談。未来へ向けた企業の在るべき姿を描きます。
対談2017.09.29

自動車部品の100年オンリーワン企業がさらなる持続的成長へ挑む:SPK 轟 富和氏 × タナベ経営 若松 孝彦

成熟市場はアフター市場を創造できる逆転の戦略

 

若松 戦略ドメインとしている自動車部品は、創業から続く事業です。これを軸に国内外にエリアを広げていらっしゃいます。

 

轟 当社が勝負するのは自動車のアフターマーケットです。主な顧客は地域の自動車部品商であり、国内、海外、工機を3本柱として展開しています。中でも売上高の6割を占める国内市場は、持続的に成長しています。特に商品開発が好調です。国内市場が伸びている要因はいくつかありますが、1つは自動車の耐用年数の延長。従来は9年、10年といわれていましたが、最近は12年超に延びたことで、足回りなど新しい需要が生まれています。また、PM2.5対策用クリーンフィルター、高品質オイル、アイドリングストップ車用バッテリーなど環境に配慮した商品も好調です。

 

若松 常識的には国内自動車需要は減少していますが、その裏返しで耐用年数が延びる。それは同時にアフターパーツの需要が拡大することを意味しています。その需要を先取りして商品開発に努めることで、シェア拡大に成功されています。

 

轟 商品開発はSPKらしさの1つです。リーマン・ショック後、業績もドン底でしたが、原点に立ち戻って、今までにない商品や良い商品の開発に注力してきたことが、ここへきて成長の原動力になっています。なかなか実績に結び付かない時期もありましたが、社員の真剣な姿に当時「絶対に良くなる」という確かな手応えを感じていました。

 

若松 新車販売台数が伸び悩むなど国内需要は低迷しています。そうした中、社員が「SPK としてより高みを目指せる」戦略をどのようにデザインされますか。

 

轟 社員には「マクロは見るな」と言っています。自動車部品・用品の市場規模は約3000億~4000億円といわれていますが、顧客が必要とする商品を開発すればシェアは必ず上がるもの。SPKが取り組むのは、純正品ではなく、優良部品という本当に地味な分野ですが、そこが強みでもある。通常、5年間は純正部品が独占。SPKが得意とするアフターマーケットはそこからスタートします。裏を返せば、5年間かけてとことん良い商品を開発できるということです。また、大手国内メーカーが中心となる普通車は販売台数を減らす一方、軽自動車や外車は伸びています。ここはSPKの得意分野です。

 

若松 国内の新車登録台数の約10%近くが外国車であり、軽自動車も伸びていることを考えるとマーケットは縮小していない。どこで戦うかは非常に大事です。商品開発におけるこだわりのポイントはどこにありますか。

 

轟 何より品質ありきで開発に取り組んできました。新商品開発においては専門家の協力を得て勉強会や品質チェックを行っています。部品に欠陥があれば大事故につながりますから、品質には全面的に責任を持つ姿勢で開発に取り組んでいます。

 

若松 時代の流れを捉えた製品開発によって川上の機能を強化する一方、M&A や海外事務所の設立などチャネル開拓を進めていらっしゃいます。

 

轟 2003年に丸安商会、2014年に谷川油化興業、2016年にNippon Trans Pacific Corp(米国・カリフォルニア州)をSPKグループに迎えました。現在、国内においては全国19の営業拠点を構え、1000社の自動車部品商に供給する体制を整えています。また、海外は80カ国・350社以上へ商品・サービス供給を行っています。これまでシンガポール、マレーシア、タイ、中国、オランダに現地法人がありましたが、さらに2015 年にアラブ首長国連邦のドバイに駐在員事務所を開設。また、同年に米国・ヒューストンに工機の現地法人を立ち上げました。かつて米国からは撤退していますから、25年ぶりの再進出ということになります。ますますグローバル化が進む商売に適応する必要があったわけですが、真の動機は徐々に人材がそろってきたことです。

 

 

1000億円企業を目指し市場を掘り起こす

 

若松 今後のビジョンをお聞かせください。

 

轟 SPKグループとして売上高1000億円が1つの目標です。現在は約400億円ですから簡単に達成できる数字ではありませんが、人材も育ってきましたから十分に目指せると思います。

 

若松 1000億円を目指す上で、海外展開をスピードアップさせていくのでしょうか?

 

轟 まずは国内で断トツの企業になることが不可欠です。国内企業には「国内市場が伸びない」といって海外に出ていくところが多くありますが、私から見れば国内はまだまだ宝の山です。考え方次第でマーケットは変わります。現在、国内の売上高は200億円強ですが、商品開発力の強化とM&Aによって400億~500億円規模まで引き上げていくことができると思います。

 

若松 国内市場が宝の山という言葉に非常に共感します。従来の視点では頭打ちに見える市場でも、捉え方次第で深耕する余地は十分にあるはずです。一方、海外は日本車の需要が広がっており、今後もマーケットの拡大が期待できます。

 

轟 海外需要は伸びていますが、海外の販売網を自前で構築する大手企業が増えていますから、SPKとしては川下となる販売店を育てていくことが必要です。今後の戦略としては、短中期的にはアジアを重点に置いています。2017年、タイ支店を独資会社としました。今後は、今まで以上に積極的な投資を行っていく予定ですし、シンガポール、カンボジア、ミャンマーなどにおいても日本製の品質への評価が高まっており拡大が見込まれるマーケットです。ただ、価格は中国製よりも高いですから、少し時間をかけてシェア拡大に取り組んでいこうと考えています。

 

若松 「SPKらしさ」を磨くことによって、創業から100年たってもなお、持続的成長を求め続ける姿に共感を覚えます。これからも、経営理念を起点に、次の100年も成長されることを祈念しております。本日はありがとうございました。

 

SPK 代表取締役社長 轟 富和(とどろき とみかず)氏
東京大学卒業後、1974年丸紅に入社。1982年シドニー、1997年シカゴ支店長、2000年建設機械部長を経て、2002年丸紅ベルギー会社社長。2006年にSPK入社。専務執行役員を経て、2007年より代表取締役社長。

 

タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ・たかひこ)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院 (経営学修士)修了。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

 

PROFILE

  • SPK㈱
  • 所在地 :〒553-0003 大阪府大阪市福島区福島5-5-4
  • TEL : 06-6454-2531
  • 設立 : 1917年
  • 資本金 : 8億9800万円
  • 売上高 : 379億円(連結、2017年3月期)
  • 従業員数 : 335名(2017年3月現在、グループ計)

http://www.spk.co.jp/

1 2
100年経営対談一覧へ対談一覧へ

関連記事Related article

TCG REVIEW logo