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100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【インタビュー】

100年経営対談

注目企業のトップや有識者と、タナベコンサルティンググループ タナベ経営の社長・若松孝彦が「100年経営」をテーマに対談。未来へ向けた企業の在るべき姿を描きます。
インタビュー2017.01.31

開発力とセグメント力で未見のニッチ市場を開拓:
オプテックスグループ 小林 徹 氏 × タナベ経営 若松 孝彦

滋賀県大津市にあるオプテックスグループ本社のエントランス前にて。
タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(左)と、オプテックスグループ 代表取締役会長兼CEO 小林 徹氏(右) 

卓越したセンシング技術(必要なものだけを検知する技術)をコアコンピタンスとするオプテックスグループは、防犯・自動ドアセンサーで世界をリードする開発型企業だ。同社は世界15カ国に拠点を構え、グループ会社29社を展開。約80カ国に製品・サービスを供給している。ROE(自己資本当期純利益率)8.7%、自己資本比率78%(いずれも2015年12月期連結決算)という健全経営を実現する同社の経営方針について、代表取締役会長兼CEOの小林徹氏に伺った。

世界初・遠赤外線による自動ドアセンサーを開発

若松 オプテックスグループは屋外用防犯センサーで世界シェア40%、自動ドアセンサーでは30%(国内シェア60%)を誇るファーストコールカンパニーです。1979年に創業され、その翌年に世界初となる遠赤外線を利用した自動ドアセンサーの開発に成功。わずか3年でトップシェアを獲得されました。世界初の発明はどのように生まれたのですか。

小林 私は前職で(波長が短い)近赤外線に関するモノづくりに携わっており、赤外線技術研究会(現・一般社団法人日本赤外線学会)に所属していました。日本各地の大学の先生や大企業の研究者と交流する中で、主に軍事用として使われていた遠赤外線を知り、「民生品に活用できないか」と興味を持ちました。その後、展示会でわれわれのセンサーを見た人から「自動ドアに応用できないか」と打診されたのが開発のきっかけになりました。

若松 当時の自動ドアは、ゴムマットを踏むことによって開閉する足踏み式が主流でした。遠赤外線を利用することによる競争力は、どこにあったのですか。

小林 足踏み式は重さによってドアが開閉するため、比較的軽い子どもや女性は検知されにくいというデメリットがありました。また、ハイヒールの刺激や雨などによる浸水によって壊れやすく、埋め込み式のためメンテナンスや交換が大変だという課題もありました。非接触の遠赤外線センサーにすることで、人を検知する精度が上がり、故障も減って、メンテナンスが簡単になったと大変好評でした。

若松 新しい技術で、既存製品の不満、不便、不快を解決したわけですね。まさに技術によるソリューションであり、オプテックスグループのビジネスモデルの原点となるアプローチです。

小林 ただ、遠赤外線には温度や湿度の変化で誤作動が起こりやすいデメリットがありました。高温多湿の日本の夏に使用できる遠赤外線センサーの開発は難しいチャレンジであり、開発に成功した後も改良を続けました。売り上げは1年目が700万円でしたから、当然赤字。改良を続けながら販路を広げて2年目は1億8000万円、満足できるレベルの商品ができた3年目には5億円まで拡大しました。珍しい要素技術への着目と、自動ドアに加えて遠赤外線をセキュリティーと組み合わせ、防犯用センサーのマーケットを開拓した点が早期に黒字化できたポイントです。

若松 ソリューション技術を駆使して、マーケットのないところにマーケットを創造した。独創性とベンチャースピリットですね。そして、掛け合わせ、組み合わせの技術で立ち上がりが早かった点も非常に大切です。
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鳥の目と蟻(あり)の目でニッチトップ企業へ

若松 現在は、センシング技術を生かしてセキュリティー、自動ドア、FA(ファクトリーオートメーション)という3本柱を中心に事業を展開されています。タナベ経営では「1T3D戦略」と呼び、1つの技術で3つのドメイン(事業領域)を攻略するナンバーワン戦略として提言しています。

小林 ある大学の先生が冗談で「センサーは千差万別」とおっしゃっていた通り、使う人や用途によってセンサーを変えることが重要です。どのセンサーにも一長一短がありますから。

若松 センサーの特性と目的を掛け算することでバリエーションが広がっていきます。マーケットを細分化して専門性を高めることで商品のラインアップは広がり、総合力が高まります。私たちも「高度の専門化と高度の総合化」を経営理念に掲げています。本来、専門化と総合化の並列は矛盾するもの。しかし、実際の経営においては、この両方が競争力を高める源泉となります。大変共感します。

小林 当社ではこれを「鳥の目と蟻の目」と表現しています。開発においては全体と細部、この2つの視点を持つことが大事です。私は資金も経営資源もない、“無い無い尽くし”から起業しました。トップシェアを取らない限り事業の継続は難しいので、開発する「もの選び」は特に重要でした。商品の種類やお客さまをセグメントした上で、体力に合ったところを狙う方法は今も同じです。

若松 シェアの観点は重要です。売上高の大きさは市場規模に比例するため、企業本来の競争力は測れません。経験科学上、中堅企業がシェア20%を超えるとトップ企業に近づくと提唱していますが、オプテックスはシェア30%を目標に置かれています。30%までいくとプライスリーダーになれます。シェアが粗利益を決め、その粗利益を確保する上でも値決めは非常に重要です。実際、オプテックスの粗利益率は50%を超えています。

小林 新しいことに挑戦する体力を維持するため、損益分岐点比率70%を基準の1つに置いています。これを意識して、製品の値決めやビジネスモデルの考案を行っています。またトップシェアを取ると、知名度が上がって営業が楽になる。小さくてもいいから、まずはトップシェアを意識したセグメントをつくることが大事だと思います。“千切り経営”と言いますか、物事の原因を細かく突き止めていけば、課題を必ず解決できます。ここは蟻の目でしっかりと見ていくことです。

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