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100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【対談】

100年経営対談

注目企業のトップや有識者と、タナベコンサルティンググループの社長・若松孝彦が「100年経営」をテーマに対談。未来へ向けた企業の在るべき姿を描きます。
対談2021.09.01

世界標準の経営理論。今こそ、夢や理想の未来を描く経営が会社を成長させる:早稲田大学 大学院 経営管理研究科 教授 入山 章栄氏× タナベコンサルティング 若松 孝彦

 

 

経営環境が刻々と変化する時代こそ、世界の経営現場の研究から生まれた経営理論が意思決定の羅針盤となる。ベストセラーとなった著書を通してグローバルスタンダードの経営理論を日本に紹介する早稲田大学大学院経営管理研究科教授の入山章栄氏に、企業が不確実な時代を生き抜くヒントを伺った。

 

 

能動的に変化しながらイノベーションを起こすことが重要

 

若松 入山先生の著書『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)には、グローバルで認められている約30もの経営理論がまとめられています。拝読した際は「コンサルティングの現場で感じていたことを代弁している一冊だ」と感じ、創業以来60年以上、経営コンサルティングと向き合ってきたタナベコンサルティンググループ(以降、TCG)のトップとして、深く共感しました。

 

このところ、「コロナ禍がビジネスを変えた」といった論をよく耳にしますが、国内外で経営学に携わっていらっしゃる立場からは、どうご覧になっているのでしょうか。

 

入山 コロナ禍でビジネスの不確実性が高まったと感じる方は多いようですが、本質は変わっていないと考えています。例えば、コロナ禍前から急速なデジタル化によってビジネスの在り方は大きく変化していました。不確実性は、コロナ禍以前から高まっていたと言えるでしょう。今の時代に大事なことは、能動的に変化し、イノベーションを起こすことです。そうでなければ企業は存続できなくなってきています。

 

若松 コロナ禍は不確実性の高まりを顕在化させる1つのきっかけに過ぎないと、私も考えています。ただ、コロナ禍で変化は加速しました。米・マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏は、2020年5月にオンラインで開催した「Build 2020」の基調講演において、「この2カ月で2年分のデジタル変革が起きた」と語りました。

 

入山 おっしゃる通りです。私は企業から講演依頼をいただく際、「この4、5年の間にさらに大きな変化、確変が起こる」とお伝えしています。そう考える理由の1つに、Zoom(ズーム)やMicrosoft Teams(マイクロソフト チームズ)といったウェブ会議システムがあります。そこに間もなく自動翻訳機能も入ってくるでしょう。

 

そうなると、これまで言語の壁に守られていたサービス業などに多大な影響が出ることは避けられません。特に、日本のサービス業は生産性が低く、いくつかの業界は崩壊する可能性もある。最後に「大学が一番危ない」と自虐的なオチを付けて話していますが、十分にあり得るシナリオです。

 

若松 デジタルリテラシーを上げなければ、企業も人も生き残れないことは明白です。2020年のパンデミック発生から約半年後にニューヨークのビジネスパートナーとディスカッションした際、「Digitize or Die(デジタル化するか、死ぬか)」と言っていたことが印象的でした。私も、世界はDX(デジタルトランスフォーメーション)で一変するだろうと直観しました。ただ、DXに関して言えば、多くの企業がコロナ禍で導入を前倒ししていますが、デジタル化が目的になっているケースが散見され、気掛かりです。

 

入山 同感です。いわゆる大企業でも、DXを打ち出の小槌のように捉えているところは少なくありませんが、「デジタル」はあくまで手段。大事なことは、自社が目指す存在意義、ビジョンです。それがないと「トランスフォーメーション」はできません。

 

 

入山章栄著『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)

 

 

 

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