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【対談】

WORLD REPORT:ウィズコロナでアップデートする世界

コロナ禍によって世界が変容する中、海外のビジネス現場はどう変わろうとしているのか。米・英・独・中・印のビジネス専門家とタナベコンサルティンググループの社長・若松が対談しました。
対談2021.03.01

ウィズコロナでアップデートする世界:米国 ニューヨーク・サンフランシスコ編【Vol.1】

【図表】ウィズコロナ時代に注目の
    米国スタートアップ企業とビジネスのポイント

出所:Scrum Ventures Newsletterより皆木氏が作成

 

 

BtoB向けのDX関連ビジネスが台頭

 

若松 2018年にマイクロソフトのシリコンバレーオフィスを訪問した際、Microsoft Teamsを活用したカスタマーサクセス(顧客の成功体験づくり)型の組織展開に関するプレゼンテーションを受けました。同社の先見の明に驚くとともに、米国で起きていることは2年後に日本でも起きる可能性が高いという経験則を強めました。

 

やはり、米国はビジネスアイデアの発信地。コロナ禍でのビジネス展開の創意工夫、新ビジネスの台頭などを紹介してください。

 

Scharf 企業規模にかかわらず、かつてないような経営環境の大変化にはデジタル化で対応するしかありません。過激な表現ですが「DXができない企業は死ぬしかない」と私は思います。注目すべきは、ウェブ会議システムのZoomや電子署名サービスのDocuSign(ドキュサイン)といった、従業員が在宅勤務でもシームレスに業務を遂行でき、チームでの共創も可能にするテクノロジーの発達です。

 

また、リアル店舗を展開してきた小売店は、来客数の減少を穴埋めするために、オンライン販売のプラットフォーム整備を大幅に加速。レストランも、オンライン注文システムやカーブサイド・ピックアップ(ECで注文した商品をリアル店舗の駐車場で受け取るサービス)の導入などに努めています。デリバリー専用レストランや個人のスマートフォンからメニューにアクセスできるタッチレスメニューなども登場しました。

 

ジムやダンススタジオは、Zoomを使用したオンラインクラスを開催。また、自動車販売店は、顧客がオンラインで自動車の内外装をチェックして価格交渉を行い、販売店が顧客の自宅まで試乗車を届けるサービスを始めました。

 

医療分野では、遠隔診療・診断サービスの利用が急増しています。また、アマゾンが処方箋の必要な医薬品のオンライン販売を始め、物流力を生かした品ぞろえと価格設定で話題になっています。

 

皆木 コロナ禍の中で活躍が期待されるスタートアップにmmhmm(ンーフー)があります。英語の相づちのように発音する、ユニークな社名です。

 

同社が開発したのはZoomなどのウェブ会議システムやYouTubeなどの動画配信サービスで利用できるバーチャル・プレゼンテーション・カメラアプリ。プレゼンテーターの姿をサイズ調整しながら画面に登場させたり、背景画像や資料と合成したりすることで、リアル感と双方向性の高い提案が可能になります。出資者にはスクラムベンチャーズやデジタルガレージ、そして三木谷浩史氏(楽天の代表取締役会長兼社長)なども名を連ねます。

 

若松 このアプリは画期的ですね。提案者がその場にいるような雰囲気になるので、プレゼンの説得力が増します。ウィズコロナの時代には、こういった身近なイノベーションが無数に生まれてくるはずです。ピンチの時にこそ勝者は動くものです。

 

皆木 他にも有望なスタートアップ企業が続々と現れています。「生産性・便利さ」と「健康・安全」を追求したBtoB向けツールの開発が主流になっています。(【図表】)

 

若松 確かに今回のコロナ感染によってBtoB向けツールの必要性が高まったと言えます。BtoCの大前提となるBtoBコミュニケーションが寸断されましたからね。日本でもBtoBデジタルマーケティングなどのDXニーズが非常に高まっています。

 

私はコロナショックの現象を「世界同時リセット」と呼んでいますが、米国の状況をお聞きして、国境を越えてほぼ同時に同様の社会解題が発生していて、それを解決する企業のイノベーションは以前のように2年の遅れを待たずに日本でも起きているのでしょう。コロナ禍がもたらすニューノーマル(新常態)に対応する切り札は、やはりDXだと確信しました。お二人とも健康に留意されてご活躍ください。本日はありがとうございました。

 

 

今回のディスカッションでも、バーチャル・プレゼンテーション・カメラアプリ「mmhmm」を活用

 

 

 

アクセスアジア 代表 ジョナサン・シャーフ 氏
専門領域は成長戦略の策定、効果的な販売トレーニング、販売プロセスの改善。クライアントと協力し、売り上げや利益、顧客サービスの大幅な向上につながる変革を推進する。主なクライアントは、米国で事業を展開している日本・韓国ほかアジア関連企業と、アジアに進出・拡大している米国企業。約30年のキャリアの中で、駐在員として日本に7年駐在。シンガポールにも7年居住し、東南アジア全域で活動している。

 

 

ミナキコーポレーション 代表 皆木 寛樹 氏
東京で生まれ、2歳の時に父親の転勤で渡米。帰国後、日本の公立小学校に通い、再び父親の転勤で香港の英国系学校にて中学時代を過ごしバイリンガルとなる。日本で高校・大学を卒業後、日本の大手メーカーにてプリンターの海外向け販売の仕事に従事し、東京とアムステルダムに通算8年間勤務。MBA取得のために退職・渡米後、米国にて経営コンサルティング会社、航空宇宙産業用アルミ材のマーケティング担当VP、半導体スタートアップのCOOなどを経て、2010年に翻訳・通訳業で独立。在米歴は通算30年以上で、米国市民権を持つアメリカ人。

 

 

タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦
タナベ経営グループのトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。
 

 

 


 

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