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【対談】

WORLD REPORT:ウィズコロナでアップデートする世界

コロナ禍によって世界が変容する中、海外のビジネス現場はどう変わろうとしているのか。米・英・独・中・印のビジネス専門家とタナベコンサルティンググループの社長・若松が対談しました。
対談2021.03.01

ウィズコロナでアップデートする世界:米国 ニューヨーク・サンフランシスコ編【Vol.1】

1.パロアルト市中心街のメインストリートは歩⾏者天国となり、地元レストランが屋外で接客している
2.パロアルト市ではアップルストアも屋外で接客対応
3.ニューヨーク市地下鉄の車内。ラッシュアワーにもかかわらず乗客は2名のみ
4.ニューヨークのグランド・セントラル駅。旅行者や通勤客がいなくなり人影もまばら

 

 

テクノロジー業界はM&Aの値付けが高騰

 

若松 それぞれのリアルな街の様子はどうでしょうか。

 

皆木 サンフランシスコ郊外、シリコンバレーの中心に位置するパロアルト市の街中へ出かけると、メインストリートのユニバーシティー・アベニューは車両の通行が禁止されていて、日本で言う「歩行者天国」になっていました。

 

州では店内飲食が禁止されているので、レストランは店外にテーブルと椅子を並べて食事を提供していました。中には屋外イートスペースを建造して本格的な食事を楽しめるようにしているレストランもあり、「じっと死を待つのではなく、何とかしよう」という必死さが感じられました。

 

また、アップルストアは営業を再開していましたが、店員が屋外で接客し、希望の商品を提供するなどの対応をしていました。

 

Scharf ニューヨークでは中心部から郊外へ移り住む動きが活発になり、中心部は人口が減って家賃が下がっています。私の息子も郊外へ転居しましたが、以前住んでいたアパートの家賃は20~25%下がっているとのことです。

 

2020年10月には海外からニューヨークを訪れる観光客は9割減となり、グランド・セントラル駅をはじめ街にはほとんど人がいません。公共交通機関はガラガラですが、道路は通勤車で混雑しています。

 

若松 予想を上回る変化ですね。コロナに関連する補助金や助成金、融資などの支援制度はどうなっていますか。

 

皆木 2020年3月時点で2兆ドルの大型経済対策が成立し、国民1人につき最大1200ドル、子どもは500ドルが2020年4月に給付されました。ビジネスに対する支援としてはローンという形で事業継続資金を融資し、その後、目的と合致する用途に使ったことを証明できたら免除になる仕組みです。予算枠が決まっているので早い者勝ちの状態でした。多額の融資を受けたものの事業が順調に立ち直ったため、返金した企業もあったと聞きます。

 

若松 ダウ平均株価はコロナ禍でも高止まりで、米国は「金余り状態」と言えます。ビフォーコロナ時代と同様に、こうした資金は企業の方へ向かっているのでしょうか。

 

Scharf ファンドや富裕層が投資先を熱心に探しているのは確かです。テクノロジー関連の業種ではM&Aが頻発し、買収価格はとんでもない額に跳ね上がっています。このような状況においては従来の“値付け”、つまり売り上げと市場シェアから今後のキャッシュフローを予測して買収額を設定するようなやり方は通用しません。利益が出ていないスタートアップでも、顧客を取り込んで競合に奪われないような技術を持っていれば、高値で買い取ろうとする動きが顕著になっています。

 

例えば、クラウドコンピューティングサービスを提供するセールスフォース・ドットコムは、ビジネスチャットアプリを手掛けるスラック・テクノロジーズ(以降、スラック)のM&Aを進めているそうです。スラックはコロナ禍でもそれなりに利益を出していますが、セールスフォース・ドットコムが欲しいのは、そのキャッシュフローではありません。スラックのビジネスツールを自社のプラットフォームに統合することで利便性を高めて顧客を増やし、競合であるマイクロソフトのコラボレーション・プラットフォーム「Microsoft Teams(マイクロソフト チームズ)」に対抗できるシステムを構築するのが目的です。

 

 

 

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