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100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【インタビュー】

100年経営対談

注目企業のトップや有識者と、タナベコンサルティンググループ タナベ経営の社長・若松孝彦が「100年経営」をテーマに対談。未来へ向けた企業の在るべき姿を描きます。
インタビュー2018.10.31

vol.30
「野菜のカゴメ」をビジョンに掲げて、
「ピンチこそチャンス」の改革を推進
カゴメ 代表取締役社長 寺田 直行 氏
× タナベ経営 若松 孝彦

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2018年11月号

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2016年度、17年度と2期連続で売上高・利益ともに過去最高を更新中のカゴメ。2019年には創業120周年を迎える同社の好調の背景にあるのが、収益構造と働き方の改革を同時に進めるビジョンマネジメントだ。代表取締役社長・寺田直行氏に社員の意識を変え、持続的成長に導いた改革の要諦を伺った。

商品のバリューアップで売り上げ・利益を伸ばす

若松 トマトを中心とする加工食品分野をけん引するカゴメは、2019年に創業120周年を迎えられます。寺田社長が就任されたのは2014年。当時は2期連続の減収減益という厳しい環境の中、大胆な改革を進めて変化に強い企業体質を築いてこられましたね。

寺田 急速な円安の進行に加え、原料高騰、野菜飲料全体の需要縮小によって、社長就任時の営業利益率は2%台にまで落ち込んでいました。85年間もトマトジュースを作っているのに、ほとんど利益が出ていなかったのです。収益構造の変化に対してすぐに手を打つべきですが、改革で大事なのは優先順位です。カゴメの生命線は商品ですから、まずは既存商品のバリューアップから着手しました。最初は、国産加工トマトを使用したストレートジュースのバリューアップに取り組みました。それまで濃縮還元ジュースと同じ方法・価格で販売しており、これでは価値が伝わりません。商品名を「カゴメトマトジュースプレミアム」と改めて期間限定販売とし、商品価値を引き上げ、価格も上げました。

若松 消費者の反応はいかがでしたか。

寺田 原料の違いや製法を丁寧に伝えると、お客さまにも納得していただけるものです。その証しに、値上げ前より販売数が伸びて売り上げ・利益ともに増加しています。

若松 会社の顔とも言える象徴的な商品、強みの商品をさらに強くするアプローチは業績改善の要諦。この成功が改革の弾みになりましたね。

寺田 トマトケチャップなどの商品についても、原料高騰を理由に25年ぶりとなる値上げを実施。利益が出ていない商品はリスト化して内容を精査し、終売するかを判断していきました。多くの不採算商品を抱えてしまった原因は、収益構造の変化を現場が知らなかったことにあります。当然、本社は把握していましたが、それを現場に落としていませんでした。転換点となったのは、売り上げ一辺倒だった営業現場のKPI(重要業績評価指標)に限界利益率の考え方を導入したこと。社員が収益を強く意識するきっかけとなりました。

若松 デフレ基調が続く中、バリューアップによる値上げへとかじを切られたのはさすがです。さらなる値下げによって拡販を狙う企業も少なくありませんが、これを続けていくと屋台骨が崩れかねません。価格を上げていくには、消費者の行動や生活を変える新たな価値提供が必要です。

寺田 2016年に発売した新商品「野菜生活100 Smoothie なめらかグリーンmix」は、お客さまの飲用シーンを広げたことでヒットにつながりました。スムージーブームという追い風もありましたが、容器にリキャップ(再栓)式のフタを採用したことで開封しても持ち歩いたり、何度かに分けて飲んだりできるようになりました。

若松 コンビニエンスストアなどの商品はストロー式で、その場で飲み切らないといけませんでした。開封後も携帯できると非常に便利です。商品のバリューアップで値上げに成功されましたが、利益を出すにはコスト削減も重要です。

寺田 その通りです。原価低減に関しては、外部に委託していた生産を内製化するなど、生産部門を中心に進めました。加えて、社内のムダ・ムラ・ムリを徹底してなくしていきました。例えば、社長用の社用車や役員特典だった新幹線のグリーン車使用を廃止したほか、残業や会議時間の短縮、コピー枚数の制限や電子化など。改革を積み重ねていくことで、現場に危機意識が浸透していきました。グループ連結で社員は2500人に上りますから、小さなことでも成果は大きいですよ。水浸しの雑巾は、少し絞るだけでたくさん水が出てくるのと同じです。

若松 細かい部分にメスを入れると末端の社員まで危機感が伝わります。大事なのは「雑巾が水浸し」だと気付く感覚。ピンチの時は思い切った改革ができますし、トップが率先して身を切る行動を示すとインパクトがあり、スピードも上がります。まさにピンチの時こそ改革のチャンスです。

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