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【特集】

マネジメントDX

海外では「ビジネスの成果に貢献する付加価値部門」と位置付けられるバックオフィス部門。だが、日本では「下支え部門」という認識が根強く残るのが現状だ。バックオフィス業務の無駄を洗い出し、最新のデジタル技術によって改善を施すためのシステム再構築メソッドを提言する。
2022.02.01

相談件数を見える化し、KPIにして利用促進:KIRIHARE

KIRIHAREのLINEキャラクター。ユーザー(従業員)を癒すのがお仕事

 

ストレスや心の不調を回復するメンタルヘルスケアを、事後対応から予防・早期発見のプレ対応に転換。従業員を不調に陥らせず、やる気と仕事力を維持するBtoBオンラインメンタルヘルスケアEAP(従業員支援プログラム)を提供するKIRIHAREは、「心の健康を大切にできる社会」の実現を目指している。

 

 

テクノロジーを活用したメンタルヘルスの「予防」と「早期ケア」

 

 

不調の予防がメンタルヘルスケアの最適解

 

「心の霧が晴れるように」。その願いを込めた社名「KIRIHARE」と独自のメンタルヘルスケアサービスは、代表取締役・佐藤元輝氏の実体験から生まれた。

 

「仕事とは別の問題で、私自身がうつ病を患ったことがあります。病院へ治療に通いながら、日本のメンタルヘルスケアの社会的な枠組みが遅れていることに気付きました。病院によって診断が変わり、軽症と言われたら薬を飲むだけ。通院を恥ずかしいと感じてしまう日本の風潮も、肌で感じました。より良い治療法を探り、たどり着いたカウンセリングで回復できました」(佐藤氏)

 

スマートフォンアプリ開発のスタートアップ企業のCTO(最高技術責任者)で、フリーのITコンサルタントでもあり、常に「次代のビジネス」を思い描いていた佐藤氏の照準が、「メンタルヘルスケアの社会課題をDXで解決する」ことに定まったのは、そのときだった。

 

佐藤氏は、臨床心理士の契約カウンセラーによるBtoCのオンラインカウンセリングサービス「KIRIHARE」を2020年にスタート。だが、すぐに課題に直面した。心の不調を抱える人が進んでカウンセリングを受けたがらず、費用負担も少なくないことだ。「診断を受け、薬をもらう」という病院なら分かりやすい体験フローが、カウンセリングでは見えにくいこともネックになっていた。

 

「当時のお客さまは、カウンセリングを受ければ良くなると知っている、メンタルヘルスリテラシーの高い方に限定されていました。オンラインの利便性は評価されても、このままでは社会課題の解決には遠いと感じました」(佐藤氏)

 

このボトルネックを解消すべく、2021年5月に新たにキックオフしたのが、BtoBのオンラインメンタルヘルスケアサービス「KIRIHARE EAP」だ(【図表1】)。従業員満足度(ES)の向上や「働き方改革」「健康経営」につながるバックオフィス改革として、EAP(従業員支援プログラム)の導入企業が増える中、同年9月現在で3社と契約。大手企業へのトライアル提供も始動している。

 

 

【図表1】「KIRIHARE EAP」の提供サービス(赤色部分)

出所:KIRIHARE提供資料よりタナベ経営作成

 

 

最大の特長は、メンタルヘルスケアの「予防・発見」「早期の介入・回復」に重点を置き、そのフローを明確にしたことだ。(【図表2】)

 

 

【図表2】「KIRIHARE EAP」の特徴

出所:KIRIHARE提供資料よりタナベ経営作成

 

 

「従来のEAPサービスは、基本的に心の問題が生じてから回復をフォローします。でも、それでは手遅れのケースも多い。後からのフォローではなく、不調にならないためにどうするか。『おかしいかもしれない』と思ったときに、何をすべきか。進化するテクノロジーを活用し、これまでになかった『予防』と『早期ケア』に注力して、利用しやすくすることで解決できます。今はその最適解を広めているところです」(佐藤氏)

 

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