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【特集】

未来戦略

未来の不確実性が高まる中、企業には、外部環境を精緻に分析・予測することよりも、自社の意志でどのような未来を切り開くのかを明確に示すことが求められている。「前期の踏襲」をやめ、成長の限界を突破するための長期ビジョン・中期経営計画構築メソッドを提言する。
2021.09.01

経営理念を再構築して自社の未来像を明確化
三洋貿易


2021年9月号

 

 

付加価値の高いビジネスの創出を目指す

 

収益基盤の強化では、持続的な成長に向け「事業領域の深化」「新規ビジネスの開拓」「グローバル展開の加速」「新規投資案件の推進」の4つの戦略を掲げる。

 

三洋貿易は、あらゆる移動体を対象としたモビリティー、合成ゴムをはじめとしたファインケミカル、再生可能エネルギーの資材や畜産関連機器および飼料添加剤を取り扱うサステナビリティー、食品添加物や化粧品、在宅医療に関わるライフサイエンスという4つの市場をメインターゲットに設定。特に事業領域の深化に注力し、既存領域で新しい付加価値のあるビジネスを仕掛けるべく、事業の深掘りを進めている。

 

「2017年2月には、米・エンジニアリング会社のCaresoft Global(ケアソフト・グローバル)社と連携し、高エネルギーX線スキャンによるベンチマークデータ販売を開始しました。これは、病院のレントゲン解析と同じ原理を用いて、自動車の構成部品、組付け手法、材質などのCADデータ化を行うエンジニアリングサービスです。自動車の試作品づくりの効率化に大きく貢献できる技術として注目されています。このように、既存分野で新たなニーズを掘り起こして付加価値の高いビジネスを展開していきたいと考えています」(新谷氏)

 

また、2020年10月には「事業開発室」を設立。「6つの事業部を横断しつつ、新たなビジネスチャンスを創出するのが狙い」と、経営戦略室・M&Aグループ兼IRグループの木村康行氏は続ける。

 

「今まで事業開発は事業部の中に存在していましたが、事業ごとの縦割りの発想が強く、他事業とのシナジーが生まれていませんでした。ここを横断的に動き、広い視野を持って新しいビジネスの種を見つけることが重要だと考えています」(木村氏)

 

ほかにも、スタートアップ企業と連携して人間の心理状態を判断するセンサーの開発なども進めているという。

 

海外展開では、米国・中国・タイの拠点を中心にグローバル展開の加速を掲げる。同社は、自動車メーカーの製造拠点の海外進出に合わせる形で海外展開を進め、日本国内と同様のサービスを海外でも提供することで、顧客の信頼を獲得してきた。こうした柔軟な対応力を生かしながら、経済発展が著しいASEANを中心にさらなる成長を目指す。そして、新規投資案件の推進では、将来の成長市場などを中心に優れた技術を持つ既存企業やスタートアップ企業への投資と連携を進めている。

 

VISION2023はすでに3年目を迎え、着実に成果を上げている。2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一時的に売上高と連結経常利益が落ち込んだものの、2021年度はV字回復を遂げた。

 

「手弁当からスタートし、長期経営計画の策定を通して強く感じたのは、経営には長期ビジョンが不可欠ということ。会社としての理念や目指す方向、目標を設けることで社員の意識が変化し、仕事に対するモチベーションも上がったと感じています。

 

当社は2022年で設立75周年を迎えます。そして四半世紀後には100周年を迎える。次の世代に良い形でバトンを渡すためにも、まずはVISION2023で掲げた目標を達成したいです」(新谷氏)

 

2度にわたる長期経営計画の策定で企業の進むべき道標を定めた三洋貿易は、企業体質・収益基盤の強化とともに付加価値の高いビジネスを創り出し、さらなる「最適解」の提供を目指していく。

 

 

 

三洋貿易 経営戦略室 M&Aグループ兼IRグループ 木村 康行氏(左)
代表取締役社長 新谷 正伸氏(右)

 

 

PROFILE

  • 三洋貿易(株)
  • 所在地:東京都千代田区神田錦町2-11
  • 設立:1947年
  • 代表者:代表取締役社長 社長執行役員 新谷 正伸
  • 売上高:760億円(連結、2020年9月期)
  • 従業員数:413名(連結、2020年9月現在)
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