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【特集】

未来戦略

未来の不確実性が高まる中、企業には、外部環境を精緻に分析・予測することよりも、自社の意志でどのような未来を切り開くのかを明確に示すことが求められている。「前期の踏襲」をやめ、成長の限界を突破するための長期ビジョン・中期経営計画構築メソッドを提言する。
2021.09.01

経営理念を再構築して自社の未来像を明確化
三洋貿易


2021年9月号

 

 

【図表1】「VISION2023」の全体図

出所:三洋貿易提供資料よりタナベ経営が作成

 

 

先人の訓えと時代性を考慮した経営理念

 

経営理念の見直しでは、先人たちの訓えを継承しながら分かりやすい表現に置き換えていった。特に、初代社長を務めた玉木栄一氏の「根のある商売を育成したい」という訓えは脈々と受け継がれ、同社の企業文化として今も息付いている。

 

そうして生まれたのが、「堅実と進取の精神、自由闊達な社風のもと、柔軟かつ迅速に最適解を提供し、国際社会の永続的な発展と従業員の幸福を共創する。」という経営理念だ。

 

「堅実と進取の精神」「自由闊達な社風」という言葉は、設立以来受け継がれてきた三洋貿易の特長を表している。先見の明を持って商品生命の長いものを取り扱うとともに、新しい分野にも果敢に挑戦してきたからこそ生まれた長所だ。また、親族経営では生まれづらいオープンな社風も、STC VALUESなどの企業文化の醸成を推進する取り組みで育んできた。後半の文言は、同社が今後目指すべき方向性を示したものである。

 

「自由闊達な社風を生かしながら、今後も既存事業や新規開拓、グローバル展開に挑んでいく姿勢を込めています。しかし、長文の経営理念を唱和してもなかなか頭に入りづらいでしょう。そこで、経営理念とは別にスローガンとして設けたのが『最適解への挑戦』です。このスローガンを合言葉に、経営理念を具現化するための『目的』と『基本戦略』を設定し、その実現を目指しています」(新谷氏)

 

VISION2023の「目的」には、「最適解を提供する挑戦集団」と「継続的な利益成長」を定めた。前者では、スローガンにも掲げた「最適解」を取引先に提供することと、企業基盤の強化や働きがいのある環境の実現を目指す。後者では数値目標を設定している。(【図表1】)

 

「当社は設立以来、規模拡大よりも中身のある堅実な商いを目指してきた歴史があり、売り上げよりも経常利益を重視しています。VISION2023では連結経常利益を75億円に設定し、ROE(自己資本利益率)は15%、海外拠点成長率は10%に設定しました。ROEの目標値である15%は効率的に収益を上げ続けている証しと言えますし、海外での成長率10%は、経済発展が著しいASEAN(東南アジア諸国連合)でのビジネスを積極的に展開している当社にとって実現可能な数値だと考えています」(新谷氏)

 

基本戦略には「企業体質の強化」と「収益基盤の強化」の2つを掲げ、その下には7つの戦略を打ち出している。(【図表2】)

 

「中でも人材への投資は重要です。初代社長の玉木も、『商社は人である、教育は命である』という言葉を残しているように、企業の最大の財産は人です。これまでも人材教育には力を入れてきましたが、今後、新たな分野の開拓や付加価値の高いビジネスを展開していくには、より人材育成が鍵を握ると考えています。研修制度の充実はもちろん、人事評価制度も新たに構築していきます」(新谷氏)

 

同社には「商いは王道を歩み、品格をもって対応する」という伝統がある。これを実践するためにも、経営理念を体現できる人材が不可欠であり、そのための投資は惜しまない姿勢を表した戦略である。

 

 

【図表2】「VISION2023」で掲げる基本戦略

出所:三洋貿易提供資料よりタナベ経営が作成

 

 

 

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