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【特集】

未来戦略

未来の不確実性が高まる中、企業には、外部環境を精緻に分析・予測することよりも、自社の意志でどのような未来を切り開くのかを明確に示すことが求められている。「前期の踏襲」をやめ、成長の限界を突破するための長期ビジョン・中期経営計画構築メソッドを提言する。
2021.09.01

未来視点で事業を変革し「スペースクリエーション企業」へ:サンゲツ

 

 

スぺースクリエーション事業部がプロジェクトマネジメント業務を行った梓設計本社「HANEDA SKY CAMPUS」(上)。
sangetsu design site サンゲツ品川ショールーム(左下)。
きめ細かな配送体制の拠点となる関西ロジスティクスセンター(右下)

 

 

過去ではなく、未来を起点とした改革に挑む

 

 

事業の転換に向けた強みと課題

 

同社は、商品力に加えて、機能やサービスの面でさまざまな強みと課題を持っている。

 

例えばデザインでは、国内外の建築家・デザイン会社とのコラボレーションによる、空間創造をベースとした商品を開発している。今後は、顧客へはニーズを踏まえた企画立案から、1つ1つの商材選び、空間のデザイン、そして施工に至るまで総合的なデザインを提案できるよう体制づくりを進めている。

 

調達力においては、2021年3月に日本最大の塩ビ壁紙製造メーカーであるウェーブロックインテリアを子会社化。需要の増加する量産壁紙において、安定供給の確保と製販一体による効率化を進めている。

 

配送機能においては、代理店の先にある内装施工業者や全国の施工現場、ハウスメーカーやゼネコンまで、幅広い顧客のオーダーに応え、商品を10cm単位でカットし、即日納品するという非常にきめ細かいサービスを実現している。

 

また、ビジネスモデル転換の急先鋒を担うスペースクリエーション事業においては、これまでインテリア事業において培ってきた顧客基盤やデザイン力、施工力を生かしつつ、より専門性を高め、総合的な施工管理力を持った事業体制の構築を進めている。

 

これらの機能を高め、グループ全体でデザインを含めた提案営業を強化することで、マーケットにおけるポジションの強化・拡大を図る考えだ。

 

一方、社内の課題についてはどうか。社長に就任して以来、「社員が経営を担う企業」として、自主性の向上を社内に訴え現場力を強化してきた安田氏だが、「従業員一人一人がより強くなければならない」と述べる。

 

そのためには、社員がやりがいを持って働くことや、能力を生かして効率的・創造的に働くこと、その結果に対して適切な評価を受けることが重要であるとの考えから、待遇の改善やダイバーシティーを推進している。「ジェンダーダイバーシティーにより多様な人材の活躍を推進することは、インテリアを提案するというサンゲツの業態からも必要不可欠な取り組みです。当社ではすでに多くの女性がさまざまな職場で活躍していますが、性別にかかわらず誰もが力を発揮できる、より魅力的な職場に変えていくことが、会社をより良く、強くすることにつながると考えています」と安田氏は話す。

 

また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の促進も重要な課題と捉えている。

 

「約1万2000点に上る商品や、10万社以上の顧客情報など、事業におけるデータを整備・活用していくことで、サプライチェーンを効率化するとともに、顧客サービスの向上を目指しています」(安田氏)

 

「スペースクリエーション企業」という長期ビジョンの下、新たな事業構造を打ち出しているサンゲツ。バリューチェーンの中でより強く、より主体的なポジションを獲得し、収益力を高めることで、全てのステークホルダーに価値を還元できる事業体制を、着実に構築していきたいという考えだ。

 

 

サンゲツ 代表取締役 社長執行役員 安田 正介氏

 

 

PROFILE

  • (株)サンゲツ
  • 所在地:愛知県名古屋市西区幅下1-4-1
  • 設立:1953年
  • 代表者:代表取締役 社長執行役員 安田 正介
  • 売上高:1453億円(連結、2021年3月期)
  • 従業員数:2359名(連結、2021年3月期)

 

 

 

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