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【特集】

新価値創造

世の中に提供された価値は、 時代や経営環境・市場の変化によって必ず陳腐化する。 企業の持続的成長には、 新規事業開発や新市場開拓が必須なのだ。 コロナ禍という逆境へしなやかに対応して新たな価値を創造し、 新しい市場を開いた先駆者の「価値の生み出し方」 に迫る。
2021.05.06

「困り事の解決」から「時間の価値づくり」へとシフト
友安製作所


2021年5月号

 

 

おうち時間を彩る
3万点を超える品ぞろえのうち、約1万点が自社ブランド「Colors」だ。「認知度が上がり、Colorsの世界観を気に入って購入いただけている
実感があります」(啓則氏)

 

 

Founder’s day――。創立記念日をそう呼ぶ企業は、未見に挑み、苦難を乗り越えてきた創業者に対して敬意を込めてFounderと呼ぶ。入社の条件として難題を突き付けられ、新事業を創造、成長させ、持続する道を切り開いた後継者の視座と軌跡をたどる。

 

 

「隠す」商品から「魅せる」商品に

 

本業以外に新事業を立ち上げ、自分の給料を半年以内に稼ぎ出せ。友安製作所の代表取締役社長・友安啓則氏が、この条件付きで当時社長だった父の友安宏明氏(現会長)に入社を認められたのは2004年である。高校で米国へ留学し、MBA(経営学修士)を取得後、現地商社で働いて充実の日々を送っていたが、宏明氏の体調不良を機に帰国。家業への愛着や父と一緒に働きたいという思いから、3代目として後を継ぐ決意を告げた矢先に受けた洗礼だった。

 

「当時、私を含め社員は6名。カーテンレールのフックなどの線材加工品メーカーで、業績は右肩下がりでした。父は自分の代で廃業を決めていて、『戻ってきたら迷惑だ』と。父が出した厳しい条件は『ビジネスは甘くない。諦めて他社へ就職する方が良い』という愛情だったのです」(啓則氏)

 

決算書で債務超過の現実を知り、焦燥感が湧き上がった。「何とかしなければ」。その思いが、条件達成へのエネルギーに変わった。着眼した新事業は、前職のキャリアを生かせるインテリア・DIY用品の輸入販売で、ビジネスモデルは「No Middleman」。徹底的に中間業者を省き、高品質な商品をより安く顧客に届けるのが狙いだ。

 

「当時のインテリア市場は、小売店→問屋→商社→海外商社→海外問屋→海外メーカーという発注プロセスがあり、それぞれに利益が上乗せされ、店頭では驚くほど高価でした。店員に『ブランド品ですから』と言われても、誰もが知るブランドじゃない。ややこしい流通システムのせいで、エンドユーザーが搾取されている状況を壊してやろう、と」(啓則氏)

 

独りで自社ブランド「Colors」を立ち上げ、商品とカタログをトラックに積んで日本全国を行脚。百貨店やインテリアショップへの卸売りを始めた。商品にもこだわった。機能性に特化し“隠すもの”だったカーテンレールに、“見せる(魅せる)”価値を加えようと、あえて装飾性の高いものを仕入れた。

 

これまでにない提案は反響を呼んだ。宏明氏との約束を3カ月前倒しで達成した啓則氏は、さらにECショップをスピード開設し、エンドユーザーと直接つながる販売チャネルも切り開いた。

 

「顧客の困り事を解決すればビジネスになる。長い間そう言われてきましたが、便利な世の中になり、昔と比べて解決ニーズは多くありません。市場に存在し続けるには、いまあるものに、まだない価値を加えて提供することです。当社のつっぱり棒『クラシカ』はアンティーク調など意匠的な価値を高め、2000円を超えても売れ続けています」(啓則氏)

 

No Middlemanの流通フローと、Add valueの付加価値を追求し続ける友安製作所。時代や顧客が求める価値を的確に知る意味でも、その姿は業種業態を問わず、新事業に挑む道標となっている。

 

 

 

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