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【特集】

新価値創造

世の中に提供された価値は、 時代や経営環境・市場の変化によって必ず陳腐化する。 企業の持続的成長には、 新規事業開発や新市場開拓が必須なのだ。 コロナ禍という逆境へしなやかに対応して新たな価値を創造し、 新しい市場を開いた先駆者の「価値の生み出し方」 に迫る。
2021.05.06

成功のキーワードは「喜んでもらえる出口」
いろどり


2021年5月号

 

 

イエナカ需要に着目、コロナ禍においても商機はある

 

 

80歳代でもIT機器を駆使して受注管理。タブレット端末なら山中にいてもリアルタイムで注文が分かるため、必要な量を迅速に収穫・出荷できる

 

 

コロナ禍だからこそ求められる商品がある

 

2020~21年の年末年始も外出自粛要請や飲食店への時短営業要請と、経営環境は非常に厳しかった。だが、そうした環境下にありながら、同社の2020年12月の売上高は昨年同月並みの数字を達成した。

 

中でも、爆発的なヒットを記録したのが、家庭向けに販売されるおせち用のつまもの。おうち時間を楽しもうとするイエナカ需要に焦点を当てることで、新たな市場を見いだしたのだ。さらに、2021年2月の節分に向け、ヒイラギを10万本出荷。市場を通して、コロナ禍の終息を願う全国の家庭に届けられたという。

 

イエナカ需要の好調ぶりは、コロナ禍がもたらした特徴の1つである。多くの飲食店がテイクアウトやデリバリーに参入したほか、ネット通販や定額制動画配信サービスなどの市場が拡大。コロナ禍が追い風となって過去最高益を達成した企業もある。生活様式の変化にいかに対応するかが、ピンチをチャンスに変える鍵となる。

 

「コロナ禍でも、世の中をよく見れば好調な企業は意外とある。元気な企業には共通点があります。『喜んでもらえる出口』がビジネスになっていることです」(横石氏)

 

例えば、「ステイホーム」が要請された年末年始に、家族そろっておせち料理を囲むことを楽しみにした人は、例年以上に多かっただろう。住み慣れた家であっても、おせち料理を美しく彩るつまものが特別な日を演出したに違いない。

 

あるいは、緊急事態宣言下の節分。10万本というヒイラギの出荷数の背景には、不安な生活が続く中、1日も早いコロナ禍の終息を願い、鬼を払うと言われるヒイラギを家に飾りたいという思いがあったはずだ。

 

そうした消費者の喜びや願い、思いと自社の商品をどうつないでいくか。そこに、「喜んでもらえる出口」の糸口が見えてくる。

 

 

小さな成功の積み重ねが大きな成果を生む

 

いろどりは苦境に立たされながらも、視点を変えることで新たな展開にたどり着いた。しかし、これは決して偶然ではない。これまでの経験や張り巡らされたアンテナが、新展開を呼び寄せたと言っても過言ではないだろう。それは、同社の事業の歴史を見ても明らかである。

 

葉っぱビジネス自体、横石氏の気付きから生まれた事業だった。もともと、上勝町はミカンと林業の町だったが、1981年の大寒波によってミカン農家が壊滅的な被害を受けた。横石氏は、すぐに協力農家とシイタケや葉物野菜などの生産に挑戦。短期間で収穫可能なこれらの農作物は、ミカン農家の減収を補うだけでなく、新たな特産品として農家や町を潤した。

 

転機となったのは、寒波から5年後の大阪出張だった。市場などへ営業に回った横石氏は、夕食に訪れた飲食店で、ある光景を目にする。近くの席に座った若い女性グループが、料理に添えられた紅葉を持ち上げて、「かわいい!」と声を上げて喜んでいた。さらに、その1人がきれいにアイロンの掛かった白いハンカチを取り出して、紅葉を大事そうに挟んで持ち帰ったのだ。

 

その姿を見た横石氏は、「これだ!」と直感した。日ごろから農家一軒一軒を回り、家族構成や農作物の生産状況などを知り尽くした横石氏は、活躍の場の少ない高齢者や女性ができる仕事を探していた。葉っぱは軽くて扱いやすく、毎日の食事を用意する人の経験や感性が生かせる商材。さらに、人に喜んでもらえる、人を幸せにできる仕事だ。全ての条件が整っていた。

 

さっそく意気揚々と農協に提案したものの、反応は冷ややか。しかし、横石氏は2年間、自腹で料亭に通い詰めてつまものを研究し、農家と一緒に商品力を上げながら徐々に事業を拡大していった。小さな成功を重ねるうちに協力農家は増えていき、今では156軒が参加。300名を超える雇用を生み出すまでに成長を遂げた。

 

 

 

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