商品開発の鍵は40年続くモニター会議
トップ産業
2021年4月号
ヘアアイロン収納ポケット

使用後のヘアアイロンを、熱いまま安全に収納できる耐熱の収納ポケット。忙しい朝や旅行中、すぐにヘアアイロンを片付けられると人気を博している。価格1408円(税込)
モニター会議を経て誕生したヒット商品の1つが、「ヘアアイロン収納ポケット」だ。きっかけは、ある女性モニターの困り事。彼女は出勤前にヘアアイロンを使っていたが、毎朝、洗面台の上に置いたままの状態で家を出るしかなかった。使用直後のアイロン部は温度が200℃以上あるため、すぐに収納すると家具が傷んだり、火事になったりしないか心配だったからだ。
「これを聞いたとき、『同じように困っている人がたくさんいるだろう』と直感的に思いました」と松岡氏は語る。解決できる商品が市販されていないかを徹底的に調査したが、どこにもヘアアイロンを安全に収納できるポーチはなかった。もともと同社は和装バッグメーカー。早速、ノウハウを生かして商品開発に着手したものの、「何度も試作を繰り返した」と松岡氏は振り返る。
当初、市販されているポーチ類を参考に販売価格2900円を提案するも、モニターは「1200円ぐらいじゃないと買わない!」とバッサリ。さらに、試作品を目にしたモニターから、「こんな色の商品は使いたくない」「旅行にも持って行けるサイズにしてほしい」「コードをすっきり収納したい」「タオルハンガーに引っかけたい」など、数々の要望が出された。
一見、わがままにも思えるモニターの声を1つずつクリアし、完成した商品を2016年に発売。瞬く間に多くの女性の支持を獲得し、累計販売数12万個を売り上げるヒットを記録した。
モニターの声がヒットにつながったことは間違いない。だが、数々のヒット商品を送り出している同社なら、細かい要望まで全て真摯に受け止めなくとも、売れる商品を作ることができるだろう。しかし、松岡氏は「売れることが目的ではない」と、きっぱりと言い切る。
「アイデアを積み重ねて商品を作り上げるのは、当社のものづくりの原点です。約50年前に開発した和装バッグの時代から、『商品を使うお客さまに喜んでいただきたい』という姿勢は変わりません」(松岡氏)
「和装バッグ」とは、着物をきれいな状態でコンパクトに運べる同社の看板商品。1972年に松岡康博氏の父で創業者である松岡繁二氏が開発し、現在も売れ続ける超ロングセラー商品だ。試作品を作っては社員や隣人、知り合いに試してもらいながら、着物に折り目が付かないよう持ち手の位置を変えたり、小物を収納するポケットを付けたりといった工夫を重ねた結果、同商品は今でも和装バッグのナンバーワンを走り続けている。
和装バッグ

着物をたたんで、まるでタンスに入っているような状態で持ち運べるバッグ。ポケットには、帯・小物・ぞうりなど着物を着る際に必要なアイテムを全て収納可能。価格5500円(税込)