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【特集】

サステナブル農業

離農や高齢化に伴う担い手不足、耕作放棄地の拡大、食料自給率の低下といった問題に直面する日本の農業。作業の効率化・省人化や面積当たりの収穫量アップなどの課題を最先端の技術で支えるアグリテック企業の取り組みに迫る。
2021.03.01

水耕栽培にIoTと再生可能エネルギーを活用
グリーンリバーホールディングス


2021年3月号

 

 

常識にとらわれない新たな農業の仕組みを開発

 

「起業したものの、グリーンリバーは7年間ほったらかしの状態でした」と長瀬氏は振り返る。父の会社の立て直しを優先した長瀬氏は、全国を飛び回り、大規模な建築土木工事に携わった。それを可能にしていたのは、父の先見の明によって取り入れた海外工法だった。すでに海外メーカーと太いパイプができており、業界内で評判になっていた。

 

転機となったのは2013年の太陽光発電所の造成工事である。当時、メガソーラーという呼び名はまだなかったが、試行錯誤の上、ドイツの先例を参考にしてメガソーラーの施工に取り掛かった。長瀬氏は太陽光パネルを設置する独自の支柱を考案。プラントを作る効率的な工法や機材を組み合わせ、数々の特許を取得した。

 

経営状態が落ち着き、紆余曲折を経てグリーンリバーの事業を始動させたのは2014年だった。建築・土木から農業へ。ベジーの構想は3日間で完成したという。

 

新規事業の原動力は「お金がないから、お金を生み出す方法を考える」というゼロベースの環境だと語る長瀬氏は、「アイデアを形にしてくれる技術を持った人がいるはず」と自ら協力者を探した。こうした地道な努力の結果、資金面や広報面で賛同してくれる専門家とつながっていった。

 

長瀬氏はその後も画期的な製品やシステムを開発した。例えば、縦型水耕栽培装置「3D高密度栽培バイグロウシステム」(以降、バイグロウ)。日本で農業と言えば土耕が常識だったのに対し、米国で盛んに行われている水耕へ目を付けた。

 

一般的な水耕栽培は水平方向に展開しているが、日本には広い土地が少ないため、限られた面積でも栽培できるよう、垂直式の水耕栽培の仕組みを考案した。長さ1.5mの装置にフェルト生地を挟み込んで苗を定植するバイグロウは、場所を取らない上、単位面積当たりの収穫量が土耕栽培の30倍にもなる。栽培しやすいバジルから育て始め、現在は50種類以上の葉物野菜やハーブなどの試験栽培を行っている。

 

パッケージ商品「SMART AGRI FACTORY(スマートアグリファクトリー)」も話題だ。バイグロウやIoT、再生可能エネルギーを掛け合わせた同システムは、ハウス1棟でサッカーコート約2.5面分の収穫量と、作業の効率化が見込める。コストが下がるため短期の投資回収が可能になり、低単価な野菜を作れるという実証モデルが、福岡や沖縄、岩手などで確立されつつある。再生可能エネルギーは太陽光だけではなく、佐賀ではゴミ処理場の排熱とCO2を回収したバイオマス資源、岩手では地熱発電所の排熱を利用している。

 

農業従事者は年々減っているものの、農業に興味を持ち、チャレンジしたいと考える人は少なくない。しかし、初期投資の負担の大きさや農地の確保、栽培のノウハウをつかむのに時間がかかることなどがネックとなる。この課題を解決できるのが同社の製品やシステムだ。

 

ベジーは資材を2年間レンタルできるため初期費用が抑えられ、省スペースで植物を栽培できるバイグロウは施設の屋上など土地を有効利⽤できる。さらに、SMART AGRI FACTORYはグリーンリバーHDから技術指導を受けられる上、作物の生育データや運用状況の分析などの情報を得られる体制が整っており、勘とコツだけに頼らない農業が実現可能である。

 

 

 

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