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【特集】

ミッション経営

「道徳経済合一」。近代日本資本主義の父・渋沢栄一の経営哲学は、今なお多くの企業家のポラリス(北極星)として輝き続けている。ミッションを掲げ、より良い社会の実現に取り組む事例から、持続的経営を可能にする組織・風土づくりを学ぶ。
2020.11.30

教育研修、講師の内製化で人材力を高める:ノバレーゼ

【図表2】ノバレーゼの制度の4カテゴリー

 

 

社員の幸せが会社を成長させる

 

最後に、環境(制度や仕組み)について、同社には「褒める」「楽しむ」「挑戦を促す」「働き方を応援」の4カテゴリー(【図表2】)からなるユニークな制度や仕組みが整備されている。

 

例えば、「褒める」には、賞金最大100万円が贈られる「年間MVP」や、年間120万円が自由に使用できるクレジットカードを退職まで付与する「殿堂入り」。「挑戦を促す」には「ノバレボ(ノバレーゼレボリューション)」という新規事業提案制度や、実力次第で希望する部署への異動が可能となる「フリーエージェント制度」などがある。これらは社員のやる気やチャレンジ精神を評価して後押しする、人を応援する文化をつくり出している。

 

また、「働き方を応援」には、「有給休暇取得率100%義務化」「育児休業3年に延長」などがある。いずれも仕事と趣味や家庭の両立がしやすい、人に優しい制度だ。

 

「『働く私たちが幸せでなくては、お客様に幸せをお届けすることはできない』。これは代表取締役社長の荻野洋基の言葉ですが、お客さまだけでなく、人を大切にする文化が社内には根付いています」(渡瀬氏)

 

また、「採用」→「教育」→「環境」のサイクルに加えて、社内イベントや社内報「ノバビタ(ノバレーゼビタミン)」、お客さまとのエピソードをイントラネットで共有する「素敵EPISODE」など、理念に触れる機会を意識的に多くつくっている点も経営理念が深く浸透している理由である。さらに、そうした機会を利用しながら、「経営陣が理念を発信し続けることも大切」と渡瀬氏は指摘する。

 

「当社では、会社説明会や社内研修、社内イベントの際、必ず社長が登壇して話をします。そうした機会は、社員にとって日々の仕事を振り返り、経営理念に沿った行動ができているか答え合わせをするような、貴重な時間になっています」(渡瀬氏)

 

ミッション経営の推進を考えるとき、どうしても独自の研修プログラムやユニークな制度に目が行きがちだが、成功事例といわれる同社の取り組みから共通して見えてくるのは、手間を惜しまない地道な姿勢だ。ただし、理念浸透に近道がないからこそ、楽しく、面白く、感動的に——。社員の興味を駆り立てる演出や仕掛けを盛り込みながら、継続していくことが成功に近づくポイントと言える。

 

 

新クレドを作成し経営理念の理解を深めていく

 

長引くコロナ禍は、幅広い業種にさまざまな影響を及ぼしている。ブライダル業界も例外ではなく、ノバレーゼにおいても2020年3月以降の結婚式の多くが来年以降に延期されているという。

 

こうした状況を受け、同社はオンラインを活用した式の配信など新たなサービスの開発にも着手しており、挙式の再開に向けリアルとオンラインを組み合わせたハイブリット型ウエディングの実現を急ぐ。また、そのころには経営理念の浸透を図る新たなツールとして、「クレド」が完成する予定だ。

 

「経営理念や社訓、本気道7カ条を策定した2008年に比べて従業員数が格段に増えており、価値観の多様化も進んでいます。そうした状況を受けて、この先もみんなが同じ方向を目指していけるよう、2019年に新たなプロジェクトを立ち上げてクレドの作成に着手しました。これからも経営理念の浸透や価値観の共有に取り組みたいと考えています」(渡瀬氏)

 

「Rock your life」を軸に進化する同社が、ウエディングで新しい顧客体験を提供する日は遠くない。

 

 

ノバレーゼ 教育研修部長 渡瀬 舞子氏

 

 

PROFILE

  • (株)ノバレーゼ
  • 所在地:東京都中央区銀座1-8-14 銀座YOMIKOビル4F
  • 創業:2000年
  • 代表者:代表取締役社長 荻野 洋基
  • 売上高:174億537万円(2019年12月期)
  • 従業員数:2279名 (連結、パート・アルバイト含む、2019年12月現在)

 

 

 

 

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