データサイエンティストの育成がDX推進の鍵を握る
滋賀大学 データサイエンス学部長 竹村 彰通氏
2020年11月号
DXを推進するにはデータサイエンスに精通した人材が不可欠だ。日本で初めてデータサイエンス学部を開設した滋賀大学の竹村彰通学部長に、人材育成のポイントを聞いた。
【図表】データサイエンティストの役割
DXが新たな顧客創出や顧客のロイヤルティー向上を自社にもたらすことは想像にたやすい。しかし、多くの企業が抱えている問題は、自社の状況に合ったDXをどのように構築するのかという点だ。その際に中心的な役割を担うのが、データの収集・分析を行い、新たな方策を立案する「データサイエンティスト」である。
米国や中国ではすでに若者の間で人気の高い職業として定着し、企業のマーケティングや工場のスマートファクトリー化を担当するなど、その活躍の場はさまざま。年収が高く花形職業であるデータサイエンティストだけに、大学でもデータサイエンスを学べる学部は人気だ。米国で130大学、中国に至っては300大学もあるといわれている。
「米中と比較すると日本のデータサイエンスは後れをとっているので、データサイエンティストの育成は急務と言えるでしょう。しかし、残念ながら日本でデータサイエンス学部を設けているのは開設予定のものを含めて10大学程度と、米中と比較するとかなり少ないのが現状です。今後は、そのニーズの高さからデータサイエンス学部を開設する動きは広がっていくはずです」
日本のデータサイエンスを取り巻く大学の状況をそう説明するのは、滋賀大学データサイエンス学部長の竹村彰通氏である。滋賀大学は、2017年4月に日本で初めてデータサイエンス学部を開設した。第一期生は現在4年生で、2021年春には社会人になる予定だ。
「就職を希望する学生に企業からの内定が出るなど、社会にデータサイエンティストを送り出すという本学部開設の目的は担えていると実感しています。同時に、各企業でデータサイエンティストのニーズが非常に高まっている証しでもあると考えています」(竹村氏)
2020年8月には、データサイエンス分野の発展を戦略的に促進することを目的に、滋賀大学をはじめ一橋大学、総合研究大学院大学、長崎大学、兵庫県立大学、立正大学の6大学で「データサイエンス系大学教育組織連絡会」を設立。会長に竹村氏が就任し、専門教育推進の在り方や専門教員養成などについて意見交換をしながらデータサイエンティスト育成の土壌を整備している。