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【特集】

営業DX

コロナ禍をきっかけに、営業現場にもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せている。デジタルの活用で、いかに生産性と勝率を上げていくのか。進化するセールステックの事例と、データを価値に変えるデータサイエンティストの育成について紹介する。
2020.10.30

飲食ビジネスも「シェアリングエコノミー」:WORLD

「飲食店2.0」でつくる料理人の育つ環境

 

「人を良くする」と書いて食――。その思いを胸に、坂氏は&Kitchenに集うシェフたちと共に、食を通して得られる人生の豊かさや幸福度を再定義していこうとしている。

 

だからこそ、誰もが出店できるわけではない。出店希望者の審査選考で見極めるのは、マインドや価値観を共有し、共に行動し持続的に育っていけるかどうか。それは、スペース提供者に対しても同様だ。

 

「場所を貸したい人と借りたい人のマッチングだけでは、成立しても長く走り続けられません。きっかけは初期費用や固定費が無料であることでもいいのですが、それだけの方はお断りしています。&Kitchenを通してどんなことを望むのかをヒアリングさせていただき、当社の方向性と合う方だけを選んでいます。共通の志やビジョンを持つシェフが、のびのびとチャレンジできる土壌を作ること。それが私たちのミッションです」(坂氏)

 

コロナ禍でも「体験Dining 和色 -WASHOKU-」は満席続きだ。メディアでは、料理に専念できるプラットフォームがクローズアップされがちだが、それ以上に出店者が魅力に感じるのは「育つ力」である。&Kitchenの注目度に比例して、シェフ自身の知名度など付加価値が高まること。ジャンルの異なるレシピを教え合い、シェフ同士が刺激を与え合う環境があること。その全てが従来の飲食店にはなかったものだ。

 

「飲食業界は和・洋・中など、料理のジャンルで進む道を選びます。その縦軸で区切られた世界を、料理に対する考え方や料理人としての志の横軸でつなぎ、マインドが同じ人と同じ現場で育っていけることが、本当は最も価値があるのですよ。私は勝手に『飲食店2.0』と呼んでいますが(笑)、それって、どんな業界や組織で働く人にも、当てはまることだと思っています」と坂氏は説く。

 

1号店では、新たなイベントも成果を上げているそうだ。「カジュアルにお酒を飲める店にしたいけど、本気の料理も作りたい」というシェフの願いを、坂氏がバックアップ。土・日曜夜限定の予約制で、ミシュランの星付きレストラン出身の&Kitchenのシェフたちが、磨いた腕を振るう特別メニューを提供するのである。店はいつも客でにぎわい、デリバリーサービスも好評だ。

 

「あのシェフがいるから、わざわざ浅草に行く価値も意味もある。そんな選ばれる存在になれば、何があっても生き抜いていけると、シェフたちに伝え続けています」(坂氏)

 

10月には表参道で新たに2店舗がオープンし、事業は好調。コロナ禍に新調された雷門の大提灯も、新たな浅草がにぎわう姿を心待ちにしているはずだ。

 

 

選ばれる存在になれば、何があっても生き抜いていけると、
シェフたちに伝え続けています

WORLD 代表取締役 坂 めぐみ氏

 

 

Column

新しい環境で通用しない「あるべき論」

新たな環境において、固定概念は通用しない――。思春期の転校で坂氏が得た学びは、変転する時流に自ら棹さすビジネスの大切さを教えてくれる。

 

「あの時はこうだったから、と『あるべき論』の軸を決めるのは経験値や一般論。でも、時代や地域ごとに多様な価値観があります。だから、思考もフットワークも柔軟に生きようと」(坂氏)

 

実は「飲食店だけはやらない」と公言していた坂氏。参入障壁も廃業リスクも高いのに利益は薄く、あえて挑戦する理由がないからだ。だが、インバウンド隆盛時に「地方と世界をつなぐ場所を創りたい」と志し、たどり着いたのは体験を通して伝統の美食文化を伝えること。さらに自らが感じた壁を乗り越えて「&Kitchen」の運営に踏み切った。

 

「飲食業を応援するつもりが、いまは私自身が渦中の人。コロナの波を乗り越えた新しい環境には、想像できない可能性とチャンスが広がっていると確信しています」(坂氏)。

 

 

PROFILE

  • (株)WORLD
  • 所在地:東京都中央区日本橋堀留町1-6-3
  • 設立:2016年
  • 代表者:代表取締役 坂 めぐみ
  • 従業員数:8名(連結、2020年9月現在)
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