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【特集】

営業DX

コロナ禍をきっかけに、営業現場にもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せている。デジタルの活用で、いかに生産性と勝率を上げていくのか。進化するセールステックの事例と、データを価値に変えるデータサイエンティストの育成について紹介する。
2020.10.30

ありそうでなかった「大人のフードコート」
飲食ビジネスも「シェアリングエコノミー」
WORLD


2020年11月号

 

 

街から人の姿が消えたコロナ禍の波で、大打撃を受けた飲食ビジネス。これまでにない事態をチャンスに変え、過去最高の実績を生み出したのは、「シェア型キッチン」という新しい姿だ。

 

 

 

 

シェアオフィス×飲食店で生まれた新ビジネス

 

東京・隅田川を一望し対岸に東京スカイツリーがそびえ立つ最上階テラス席で、伝統&創作の和食を味わう至福のひと時を、コロナ禍が奪い去った。

 

「東京五輪が延期になり、隅田川花火大会も中止になりました。浅草の仲見世通りも雷門もにぎわいが消え、誰も歩いていない。全てが一変しました」

 

そう話すのは、生活アイテムのECサイトやシェアオフィスを運営するWORLD代表取締役の坂めぐみ氏である。2019年11月、坂氏はインバウンド客向けの飲食店「体験Dining 和色-WASHOKU-」を隅田川のほとりに開業した。外国人観光客が最も楽しみにする和食を、味わうだけでなく自ら作れ、江戸切子の製作など伝統文化に触れることもできる「コト消費の拠点」となり、滑り出しは順調だった。だが、2020年4月、緊急事態宣言が発令されるやいなや満席だった予約は軒並みキャンセルとなり、売り上げは80%超も減少。だが、坂氏は直面する危機を新しい飲食店の姿に挑むきっかけに変えた。誕生したのは複数の飲食店やシェフが集うシェア型クラウドキッチン「&Kitchen」だ。

 

シェアオフィスで培った空間利用のノウハウと飲食店、二つの軸を掛け算して「面白いと思えるビジネスが浮かんだ」と語る坂氏。有名店や老舗も休業・閉鎖に追い込まれ、居場所を失った腕の良い若いシェフを救う狙いもあった。

 

「食は、水道や電気、ガスと一緒でインフラなんです。飲食ビジネスが窮地に立つ中で、自分の店だけでなく業界全体に対して、コロナ禍の今だからできることを仕掛けていこうと。顧客層もインバウンドからすっかり入れ替わって、新店舗をオープンする感覚でした」と坂氏は振り返る。

 

「体験Dining 和色-WASHOKU-」とシェア型クラウドキッチンを掛け合わせた事業「&kitchen」と、その1号店である「和色&Kitchen」を5月に始動させた。

 

「和色&Kitchen」では「体験Dining 和色-WASHOKU-」のキッチンをシェフに貸し出し、オンラインでオーダーを受けた料理のテイクアウトやウーバーイーツによるデリバリーなど、運営に必要な仕組みをプラットフォームとして「&kitchen」が提供。生パスタや洋風鍋、スイーツ、ハンバーガーなど多彩な専門店が出店し、ネガティブな話題ばかりの飲食ビジネスに出現したひと筋の光明として、一躍、人気店になった。

 

宣言解除後はイートインサービスも開始し、わずか4カ月間で隅田川近郊エリアに3店舗を展開。2・3号店はスペース提供者からオファーが届き、その後も問い合わせが絶えない。新しい飲食ビジネスのプラットフォーマーとなったWORLDの売上高と営業利益は、2016年の設立以来、最高を記録している。

 

「コンセプトは『都内の専門店が集まる大人のフードコート』です。家族でファストフードを楽しむ従来のフードコートとは違い、『&Kitchen』が目指すのは、ロケーションや内装、雰囲気も良く、手の込んだ料理が楽しめること。デートや女子会でも人気なのは、ありそうでなかった空間だからでしょうね」(坂氏)

 

 

 

 

 

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