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【特集】

ポストコロナ時代の働き方

テレワークやジョブ型雇用など、働き方や雇用が変化し始めている。ポストコロナの「真の働き方改革」とは何か。企業の持続可能性や人が働くことの意味をあらためて探る。
2020.09.30

効率的に最大限の成果を生み出す働き方
誰がどこにいても仕事ができる
日本HP


2020年10月号

 

 

テレワークで営業効率が向上。
「1日のオフィスワーク」も検討へ

 

フルテレワークが始まって5カ月(2020年7月末現在)、業務フローにも変化が生まれている。羽鳥氏や川邑氏の耳に営業部門から届いたのが「営業効率が上がった」との声だ。

 

オンラインで北海道の顧客とリモート商談を行い、その1時間後に沖縄の顧客にアポイントを取る。出張では物理的にあり得なかったことが現実になっているからである。

 

「お客さま自身が、リモート商談にメリットを感じ始めています。新型コロナ禍が終息しても、必ずしも対面である必要はないというケースが増えるでしょう」(川邑氏)

 

もちろん課題もある。テレワークを躊躇する要因の一つがセキュリティーの問題だ。特に官公庁や金融機関では、「安全性>効率・生産性」の優先順位が徹底され、デバイスの外部持ち出しは禁止が当たり前。また、紙ベースの書類決裁やはんこ文化の問題も残っている。年金や健康保険などの重要書類は郵便で届くため、同社の人事・総務部門も月2日は出社せざるを得ない。それでも、日本社会全体が変わろうとしている空気感を、羽鳥氏は肌で感じている。

 

「現行のFWP制度では、週1日はオフィスへの出社を義務付けていますが、その1日を残す意味もないのでは、と私たちも検討を始めています。取り払える制約は他にもあると思います」(羽鳥氏)

 

コンピューターウイルスの感染や情報漏えいを防ぐ高いセキュリティー機能を搭載したPCやサービスの提供と、3Dプリンティングなどデジタルによるものづくりは、どちらも同社が現在進行形で挑むイノベーションだ。自社での働き方の変革が、事業の未来像にもつながっている。

 

「retronym(レトロニム)」という言葉がある。「再命名」の意味だ。モバイルフォンの登場後、電話が「固定電話」と呼ばれ始めたように、出社して仕事をすることがレトロニムされて「出社ワーク」と呼ばれる日は、そう遠くないかもしれない。

 

 

日本HP 取締役 人事・総務本部長 羽鳥 信一氏(左)、広報部 マネジャー 川邑 和代氏(右)

 

 

Column

「働く」を可視化し、共有する

企業文化や社風が色濃くにじみ出るテレワーク。日本HPは情報の公開やコミュニケーションがオープンな環境への推進力になっている。

 

羽鳥氏は自らのスケジュール情報をグループウエアに公開し「いつでもチャットして!」と発信する。テレワークで姿が見えなくても、多忙かどうかが一目瞭然になると相談しやすく、互いの都合も無理なく擦り合わせできるからだ。また川邑氏は、Zoomでのミーティングを開催する際に、“阿吽の呼吸”で思いが伝わる対面(リアル)の会議よりも「効率的に意思を共有し、合意形成を図るように、どうリードするか」を強く意識している。どちらも、何をどうしたいのか、働く思いや行動を可視化し明確に共有することがテレワークで成果を生むアプローチになっている。ただそれは、上意下達を重んじるマネジメントからは生まれにくい。

 

「FWP制度の導入当初、当社にも『出社=仕事』『夜遅くまで頑張る=高評価』と考える役員やマネジャーがいました。でも本来、仕事とは一定の時間内で効率的に何かしらの成果を生み出すこと。それをきちんと評価できるマネジメントの視点を確立し、日常的にテレワークができることが、新型コロナ禍に限らず非常時の備えとして重要です。それはBCP(事業継続計画)の観点からも欠かせないことです」(羽鳥氏)

 

求められているのは、仕事をする空間ではなく、働きやすさが仕事の成果と評価につながるマネジメントだ。

 

 

PROFILE

  • (株)日本HP
  • 所在地:東京都江東区大島2-2-1
  • 設立:2015年
  • 代表者:代表取締役 社長執行役員 岡 隆史
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