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【特集】

インナーブランディング

自社の経営理念や商品価値を社内に浸透させ、従業員満足度を高めるインナーブランディングの重要性が高まっている。社員が自社のミッションを「自分事化」し、企業の「ありたい姿」に向かって力を発揮している事例から、社員の本気を引き出す仕組みをひもとく。
2020.08.19

クオリティーに対する社内の意識をアップデート
サイバーエージェント


2020年9月号

 

 

経営者はデザインをデザイナーは経営を理解するべき

 

経済産業省・特許庁が推進する「デザイン経営」の必要条件の一つは、「経営チームにデザイン責任者がいること」だが、佐藤氏は次のように指摘する。

 

「単にデザイナーを役員に出世させればいいのではなく、経営者とデザイナーが理解し合う必要があります。デザイナーは経営を理解し、経営者はデザインを理解しなければいけない。ただ、互いのスキル面で対等になれるわけではないので、リスペクトを持って歩み寄ることが欠かせません」

 

経営はデザイナーの業務範囲ではないのではないかという疑問に対し、佐藤氏は、「デザインではユーザー視点を大切にするので、デザイナーは意思決定者とユーザーの間でもまれます。それにより課題解決のために取捨選択を行う力が養われ、柔軟なアレンジができるようになるのです。デザイナーにどこまで任せるべきか迷うかもしれませんが、『デザイナーの仕事の範囲はここまで』という固定観念を捨て、意思決定を求めればいい。必要なのは『信頼』であり、それは丸投げとは違います」と語る。

 

経営とデザインの世界では、使う言語も考え方も、重視するポイントも違う。だからこそ経営者とデザイナーが互いを理解して、否定せずに議論することが大切なのだ。コミュニケーションを取り続けて経営課題をクリアし、その実績を積み上げて信頼を築き上げなければ成果につながらない。

 

社員と経営者の距離が近いことも、同社のデザイン経営が成功している秘訣である。デザイナーが提案したいことがあれば、社長室の前で待ち構えてその場で藤田氏の判断を仰げる。また、新しいことを始めたいとき、「やっていいですか?」と聞くと、「やってから持って来い」と叱られる。やった結果、「良かったのでこのまま進めたい」なのか、「あまりうまくいかなかったので次はこうする」なのか、改善提案までを求められる。結果、意思決定が速く、経営者とのベクトルのブレも少なくなるという。

 

加えて佐藤氏は、クリエイターの技術力向上や働く環境の整備のためにさまざまな施策を実施してきた。例えば「デザイナーロワイヤル」は、すでにリリースしているサービスに対してデザイナーたちが改善案を出し、審査員が採点して、そのポイントを競う企画。デザイナー同士が刺激を与え合って自然にスキルアップを図れる仕組みである。

 

このように、佐藤氏はクオリティーの底上げで全社をけん引してきたが、メディア事業の100名弱のクリエイターを1人ではマネジメントしきれない。そこで、室長の下にクリエイティブディレクター8名を置き、クオリティー管理と組織マネジメントを任せた。

 

ところが、「クオリティーは上がるが人は育たない」、あるいは「クオリティーはそこそこだが人はとても育っている」と、チームによって差が大きかった。人材マネジメントが得意なディレクターと、そうではないディレクターがいたのだ。そこで佐藤氏は、チームマネジメントを行う「クリエイティブマネージャー」という役職を設置。井上氏が就任した。

 

「この経験から『そもそも人を育てなければ』という意識が強くなり、技術力だけではなく、どのようにクリエイターの視座を上げていくのかということも議論するようになりました」(井上氏)

 

 

 

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