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【特集】

サステナブルロジスティクス

なくてはならない基幹産業・物流業。働き手不足、業界特有の業務効率の悪さ、労働環境の悪化などが大きな課題となっている。持続可能な物流のため知恵を絞る企業に迫る。
2020.07.31

荷主、着荷主を巻き込んだ生産性向上
流通経済大学 流通情報学部 教授 矢野 裕児氏


2020年8月号

 

 

慢性的な人手不足と業務の非効率さは、持続可能な物流を語る上で避けては通れない課題だ。これらに企業はどう対処すべきか。その糸口を流通経済大学教授の矢野裕児氏に聞いた。

 

 

【図表1】道路貨物運送業 年齢階級別就業者構成比

出所:全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題2019」
※四捨五入の関係上、合計値は100%にならない場合もある。また、2011年は東日本大震災の影響でデータなし

 

 

深刻な人手不足と非効率な現場

 

インターネット通販の拡大に伴い、メディアで頻繁に聞かれるようになった物流危機。この問題を語る際、真っ先に挙げられるのが物流業界のドライバー不足である。特に、若年層の減少は深刻化しており、将来に向けた対策は待ったなしの状況だ。

 

2008年から2018年までのドライバーの年齢別構成比の推移を見ると、10代、20代の若年層の割合が10年間で明らかに減少している一方、増加しているのは50代、60代以上のドライバーだ(【図表1】)。2018年には全体の4割超を占めるに至っており、高齢化は一目瞭然である。

 

「このまま高齢化が進めば、ドライバーの供給が減少することは明白です。ドライバーになろうとする若者が少ない要因には、物流業界の生産性の低さが大いに関係しています」

 

こう指摘するのは、物流業界を長年研究してきた流通経済大学教授の矢野裕児氏だ。生産性を考える際、矢野氏がまず問題視するのは配送に関わる手荷役の多さである。

 

例えば、10tトラックの荷物の積み下ろしを行う場合、荷物を積むパレットを活用すれば約15分で済むところを、手作業だと2時間程度はかかってしまう。業務効率の差は歴然だが、現状はドライバーの手作業による積み下ろしに頼るケースが多い。

 

生産性が上がらない要因は他にもある。トラックが物流センターに到着してから荷物を受け渡すまでの、いわゆる「荷待ち」に1時間以上かかることは珍しくなく、3時間以上に及ぶ場合もある(【図表2】)。加えて、加工食品などでは伝票の手入力といった輸送以外の業務効率の悪さも、長時間労働の原因だ。

 

トラックドライバーの労働時間の長さは【図表3】を見ても明らかであり、こうした状況を変えるには「企業と企業をつなぐ物流における標準化と情報の電子化を進めるべき」と矢野氏は強調する。

 

「これまで各企業は社内の生産性向上やIoT化に取り組んできました。しかし、各社が独自でシステムを構築したため、物流センターに集まる荷物の形状や伝票の仕様などはバラバラのまま。これが自動化を阻む大きな原因になっています。業務の効率化を図るには、物流企業だけでなく荷主や着荷主も巻き込んだ標準化が不可欠です」(矢野氏)

 

 

【図表2】トラックドライバーの荷待ち時間の内訳

出所:厚生労働省・国土交通省「トラック輸送状況の実態調査」(2015年9月)

 

 

【図表3】トラック運転者と全産業平均の年間労働時間

出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2018年)

 

 

 

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