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【特集】

持続可能な経営

SDGs(持続可能な開発目標)の認知はかなり進んだ。しかし、CSR(社会的責任)やコミュニケーションとしての活動にとどまっている企業も多い。社会課題解決と企業利益の両方を追求するビジネスモデルを構築し他企業に「サステナブル経営」を学ぶ。
2020.06.30

ブロックチェーン技術の利活用で価値共有を
電通 イノベーションイニシアティブ
プロデューサー 鈴木 淳一氏


2020年7月号

 

 

ファンをつくりファンとともに育てる

 

ブロックチェーンを活用したビジネス展開について、鈴木氏は「ネガティブ情報を生まないこと」「生産者と消費者が対等になること」への注意が必要だと指摘する。

 

マス市場を対象とするビジネスは、必ずネガティブな反応が一定数生まれる。一方、同じ価値観を共有するニッチコミュニティーにおいて反対意見は生まれにくいが、ネガティブな情報が流れると、ブロックチェーンの特長である共感性の高さゆえにその商品・サービスは受け入れられなくなる。注意すべきは、嘘をつかず隠さないこと。生産側が情報を一元的に管理するのではなく、消費者と同じ目線で公正に情報を共有する姿勢が欠かせない。

 

「ユーザーをパートナー化することが重要であり、さらに有益な評価をするユーザーにインセンティブを付与する仕組みも大切になるでしょう」(鈴木氏)

 

これまでの評価は、あくまで個人による無償の行動だった。それゆえに玉石混淆になる課題もあった。しかし、ブロックチェーンの技術で有益な評価をする者をコミュニティー全体が正しく評価し、利益を還元することも可能となる。例えば、読者A氏が、ある漫画コンテンツを読書コミュニティーに紹介したことによって新たなファンが生まれれば、その利益をA氏に還元するという取り組みもすでに行われている。

 

鈴木氏は、「情報接触手段は、中央管理で成り立っていた従来の方法から、協力者を介した横断・ボーダレス型へと変化しつつあります。共感できる哲学(生き方)が協力者を生みます」と強調する。

 

自社の商品・サービスを構成する哲学に共感するファンをいかに生み出すか、そしてファンとともに、いかに商品・サービスを成長させるか。ブロックチェーンは新しいビジネスモデルの創出において重要な手段となるだろう。

 

 

電通 電通イノベーションイニシアティブ プロデューサー
鈴木 淳一氏
ISIDオープンイノベーションラボ(イノラボ)技術統括、ブロックチェーン推進協会(BCCC)理事。DIIにて先端テクノロジー利活用による競争優位戦略、市場性検証を担当する他、(一社)ブロックチェーン推進協会(BCCC)トレーサビリティ部会長を兼務。グランフロント大阪のICTコンセプトデザインを手掛け2013年にAegis Award(LBS)最優秀賞。専門はPost City Science(未来都市)、Inbound Scape(訪日価値向上)、Future Currency(暗号通貨)、Robotinity & Fashion(工芸繊維)、Human Data Sensing(生体科学)。クオリティ・マガジン”MODE.TOKYO”プロデューサー。客員講師として放送大学では街づくりを、東京大学ではエシカル消費を研究。

 

 

Column

ブロックチェーンを人材育成の分野でも活用

現代の日本において、「SDGsの目標にコミットした生き方や、問題解決を人生設計に盛り込む人材をいかに育てるか」は難しい取り組みだ。テストで問題を解くためのカリキュラムやインプットを評価する入試方法では、高い点を取ることが目的化する。鈴木氏は、そうした現状に一石を投じ、アウトプット重視の教育を目指して「学歴では捕捉できない学びの軌跡」をブロックチェーンの活用で可視化しようと取り組んでいる。

 

2019年8月、筑波大学准教授の落合陽一氏と鈴木氏ら電通をはじめとする主催企業は、岡山県倉敷市で小中学生を対象にSDGsについて体験しながら学ぶサマースクール「落合陽一と考える『ぼくらのミライ』せとうちサマースクール~感じて学ぶSDGs~」を開催。そこで学んだ17名の学習履歴は、アプリで共有されブロックチェーンで管理されるため、「落合氏からSDGsについて学んだ」「他の参加者にプレゼンテーションをした」という事実が証明できる。さらに、受講生同士がアプリ上でつながることでコミュニティーが生まれ、受講後の実績をもとに講師や企業が入試の際に推薦したり活動を支援したりすることも可能だ。つまり、サマースクールは単発のイベントとして終わるのではなく、SDGs活動やキャリア形成の起点となる可能性もある。

 

情報の公平性が担保されるブロックチェーンの技術は、仮想通貨やビジネスシーンで活用されるツールという先入観を超え、人材育成の分野でも活用できる可能性を示している

 

SDGsについて体験しながら学ぶサマースクール

 

 

 

PROFILE

  • (株)電通
  • 所在地:東京都港区東新橋1-8-1
  • 設立:1901年
  • 代表者:代表取締役社長 五十嵐 博
  • 売上高:1兆478億円(連結、2019年12月期)
  • 従業員数:6935名(2020年1月現在)
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