伝統食のかつお節を現代に合う姿へ
こだわるのは「だし感の追求」
マルトモ
2020年3月号
豆腐、おひたし、お好み焼きのトッピング。和食の原点とも言える、だし。どちらにも伝統食のかつお節は欠かせない存在だが、さらに日本の食の未来をつくる挑戦が始まっている。
栄養価が高く保存に適し、トッピングにも、だし取りにもいい。マルチユースな日本の伝統食がかつお節だ。
その存在を全国で最も身近に感じる街がある。瀬戸内海西部、伊予灘を臨む愛媛県伊予市。この地に本社を構えるのが、国内シェアトップ3の一角を占め、2018年に創業100周年を迎えたマルトモである。
荒節や枯節の削り節、だしパックに顆粒「だしの素」、液体つゆ。かつお節から派生する商品群で競い合う中で、マルトモはチルド製品やサプリメント、ペットフードなど、時代のニーズや食文化の変化に合う味づくりにも力を入れてきた。そしていま、新たな商品開発で大ヒットしているのが「プレ節®」だ。
鹿児島県枕崎市の協力工場で製造したアミノ酸とイノシン酸含量の高い特許製法の枯節を、薄さ25μ(ミクロン)に削って柔らかな食感も実現。高い技術力を結集し、2015年の発売から4年連続で10%増と快調な売れ行きを見せる。
「特許製法の強みに加え、豊かな味わいを伝えるために、高級志向の『プレミアムシリーズ』という価値カテゴリーブランドを創出しました。25μのソフト削りで口溶けが良く、味を濃く感じるので、ご飯に乗せてもしょうゆ要らず。おいしく食べやすく減塩もできる“21世紀の猫まんま”が誕生しました」と、同社の取締役開発本部長・土居幹治氏は言う。
「おいしさ」のシーズと「プレミアム感」のニーズ、「食べやすく健康」というウォンツ。その三つを満たす要素がそろい、新しい食べ方も提案するプレ節®が、人気ブランドとして独走する理由がもう一つある。特許製法はすでに一部公開され、競合他社が後追いすることも可能だが、それができないのは独自のマーチャンダイジングを構築しているからだ。
生のカツオ原料をマルトモと協力工場が協議して購入し、協力工場でかつお節に仕上げてマルトモで削り節を作る。その三位一体のバリューチェーンによって、協力工場は営業活動なしに一定の仕事量を確保でき、経営が安定。マルトモも厳選の素材を安定的に入手し、トレース(履歴管理)も完璧。消費者に良いものを安価で供給できる仕組みである。
「透明なバリューチェーンで互いの信頼が深まって、思い切った商品開発の挑戦もしやすい。40年前から続くこの仕組みがあるからこそプレ節®が実現したのです」(土居氏)