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【特集】

「新しい食」をつくる

日本の伝統的食文化である「和食」が世界で人気だ。しかし、その発信源である日本では「和食離れ」が進んでいる。伝統を守り継ぐだけでなく、新しい食文化の創造も重要だ。新しい食の開発で先行する企業の取り組みを追った。
2020.02.28

店は劇場、店員は劇団員、顧客は観衆
いつも「良質な外食体験」を
銚子丸


2020年3月号

 

 

主な業態である「すし銚子丸」の店舗(上、写真は志津店)。東京・大手町にある新業態「鮨 Yasuke」の店舗外観(下)

 

人を育て、場に磨きをかけて「求められる喜び」に対応

 

目標に掲げる200億円は、創業者も見ることがなかった景色への新たな船出だ。

 

既存店の設備改装に3億円を投資する店舗運営力のてこ入れは、タッチパネル式のセルフオーダーや高速レーン、皿会計などの新システムで機械化・省力化を推進。また、高齢化に伴う職人減を補う人材の育成は、タナベ経営と連携して新たにウェブ講座の「銚子丸立志塾」を開校。教える項目と順番を体系化した120講座(1講座10分)の教育ツールを、個々のレベルに合わせて学べる仕組みで、現場のOJT(職場内訓練)任せだった教育の均質化を狙う。

 

「創業者に鍛え上げられた“劇団員”が後進を育てる。そんな良き『教え、教わる文化』の百科事典みたいな立志塾をつくり、見せて、やらせて、しっかり受け継いでいこうと。今後は動画を1分に凝縮してコツだけ分かり、個々の習熟度も検証できるようなブラッシュアップの仕組みも考えています」(石田氏)

 

働き方改革も積極的に推進し、全店舗で年間2万時間超の営業時間短縮を実施。2019年10月には、年末年始の繁忙期前後に2~3日間の休業日を設け、家族と過ごすリフレッシュ休暇「劇団員ファミリーホリデー」も創設した。「安定的な人材の確保や定着率・生産性の向上につながりますし、一番の狙いはより高度なQSC(品質・サービス・清潔)で、良質な外食体験を提供することです」と石田氏は話す。

 

良質な外食体験。石田氏が編み出したその言葉の本質はもちろん、顧客に喜んでもらうことにある。だが、その喜びが大きく変わり始めている。顔なじみの密接な関係や特別扱いが好まれたのが、近年は一定の距離感を置く難しさがあるという。

 

「職人がマスクや手袋をしないのかと問う声もあります。レーンのすしを手にしない顧客が増え、健康志向で糖質オフがブームの時代に、何が求められ、すし屋としてどんな手を打つのか。価値観の基準を、一つずつ確認していく過渡期ですね」(石田氏)

 

出店戦略にも変化が生まれている。従来、首都圏を環状に結ぶ国道16号線の内側のロードサイドに出店していたのは、一定の経済力を持つ団塊世代の住まいが集中し、人口が安定的に多いエリアだからだ。だが、時がたち、生活圏はより都心部へと移り始めている。「人の通行量が多い都心の駅近が、得意とするロードサイドよりも、2:1の比率で増えていくでしょう」(石田氏)

 

 

 

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