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【特集】

「新しい食」をつくる

日本の伝統的食文化である「和食」が世界で人気だ。しかし、その発信源である日本では「和食離れ」が進んでいる。伝統を守り継ぐだけでなく、新しい食文化の創造も重要だ。新しい食の開発で先行する企業の取り組みを追った。
2020.02.28

店は劇場、店員は劇団員、顧客は観衆
いつも「良質な外食体験」を
銚子丸


2020年3月号

 

 

100円回転ずしとは一線を画し、職人がその場で魚をさばいて握る「グルメ回転ずし」。食の味わい方や楽しみ方、顧客の求める価値観が変わりゆく中で、未来の食のシーンに向けて銚子丸が打つ一手とは――。

 

 

 

 

「商品・人・場」で独自の劇場型モデルを確立

 

「商品と人、場。それは外食産業に共通する商いの要点ですが、当社はその全てに独自の位置付けがあり、企業文化として根付いています」と語るのは、1都3県(東京、千葉、埼玉、神奈川)の首都圏ドミナント戦略で、「すし銚子丸」などグルメ回転ずしチェーン94店舗(2019年8月現在)を展開する銚子丸の代表取締役社長・石田満氏だ。同社の人気ぶりは2017年に『週刊ダイヤモンド』誌の外食総格付で「顧客満足率ナンバーワン」に選ばれたほど。その秘訣は、何よりも冒頭の「商品・人・場」の違いにある。

 

魚は鮮度を追求し、築地や水揚高日本一の銚子港から新鮮でいいネタを仕入れ、入荷日当日のうちに顧客の口に入るように。しかも一皿が130~580円と、食べたいネタを懐事情に合わせて選べる。人材も、減少する街のすし屋で鍛えられた職人をそろえ、目の前で握る江戸前ずしの伝統の技を継承。そして場は、立地以上に雰囲気を大切にし、店という舞台で顧客に感動を与える劇場空間となっている。

 

「顧客に喜んでもらうことを第一に、商品・人・場の良さを最大限に引き出すのが、本当の店作り。それをチェーン店でも実現しようと創業者がたどり着いたのが『店は劇場、店員は劇団員、顧客は観衆』という、銚子丸ならではの店作りです」(石田氏)」

 

創業者・堀地速男氏(故人)と現会長の堀地ヒロ子氏が、夫婦二人三脚で育んできた銚子丸。そのかじ取りを2014年に継承した石田氏は、「外から来た2代目」だ。信用金庫や食品スーパーマーケット、ビデオレンタルのチェーン店で要職を務めたが、外食産業は初めて。異分野からの転身者は、爆発的な成長軌道を描く原動力を独自に分析し、気付いた。これだけの商品と人、場がそろう銚子丸が、成功しないわけがないと。

 

他にない劇場型モデルの「銚子丸一座」と、店員が自分の役割を演じきる「銚子丸人」の姿が定着し、2007年にはジャスダック上場も果たした。だがその後、石田氏の入社時には成長軌道も右肩上がりから横ばいに鈍化。出店攻勢で増収を続けてきたものの、個人経営のすし屋で鍛えられた職人が街から姿を消して人が集まらず、劣化した既存店の売り上げも減少し始めていた。

 

「実は入社直後、創業者から宿題をもらったのです。『永続していく企業として何をすべきか、3カ月後に考えを聞かせてくれ』と。3カ月後、現場を見た上で『組織体制と幹部の育成ができていないことに手を打ち、劣化した店の強化にも力を入れましょう』と率直に伝えました。当然、そんなことは創業者も分かっていますが、私なりに堅実な出店による成長を提言しました」(石田氏)

 

その後、2016年には売上高も利益も最高額を記録。しかし、創業者が不帰の人となる。それから2年間、スクラップ・アンド・ビルドを推進し減収減益となったが、経営基盤と組織体制の構築という踊り場を経て、2019年5月期決算で安定基調ヘと反転を遂げる。

 

「今期はそこに接ぎ木をしてもう少し伸ばし、2021年に売上高200億円の達成を目指しています」(石田氏)

 

最も深くかがむ者が、最も高く飛躍できる。明日伸びんがために、今日は縮むのだ――。そんな先人の教えを体現する姿が、ここにある。

 

 

料理長のすし職人は「座長」、ホールの責任者は「女将」。劇団員が演じる役割を明確化し、顧客にも分かりやすく見える化。顧客が気軽に「女将さん!」と呼ぶ声が飛び交う

 

 

 

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