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【特集】

建設テック

「Construction(建設)×Technology(技術)」の融合で、建設業の生産性向上と技術革新を図る動きが活発だ。AI 活用やドローン 3D測量、XRなどの最新技術を建設現場に全面導入し、土木・建築・設計の常識を覆しつつある事例を紹介する。
2020.01.31

BIMが建物の資産価値をさらに高めていく:安井建築設計事務所

建設業界を変革し、これからの持続的成長を促す決め手につながると評価されるBIM。そのリーディングカンパニーとして注目されているのが、大阪市に本社を構える安井建築設計事務所だ。同社にこれまでの取り組みと、今後の可能性や抱負について尋ねた。

 

建築BIMとは

BIM(Building Information Modeling)。コンピューター上に作成した主に3D の形状情報に加え、室などの名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げなど、建物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルを構築するシステム

新築だけにとどまらず改修プロジェクトにおいても、空間や改修手順の可視化、関係者間の方針共有、情報活用に役立つ

 

 

出典:国土交通省「BIM標準ガイドラインとは(素案)」(2019年10月)を基にタナベ経営が作成

 

 

日本でもBIMの本格導入に向けた動きが加速

 

ここ数年、建築界で話題となっているのが、BIMである。「BuildingInformation Modeling」の略称として一般的に「ビム」と呼ばれている。簡単に言えば、3次元(3D)のデジタル設計図面である。3DCAD(3次元コンピューター支援設計)との違いは、設計データの活用に対する考え方にある。

 

3DCADは、2次元(2D)の設計図を描いてから立体の形状を組み立てていくのに対して、BIMでは最初から3Dの設計図を描いていく。従来の設計手法では2D図面の作成から3D図面の作成と2段階の手間がかかっていた上、3Dで修正が生じると、2Dに戻って修正を行う必要があり、膨大な手間を要した。

 

これに対してBIMは、実物の建物と同じような3Dの仮想モデルをつくり、そこから平面や立面、断面など2Dの図面を切り出す設計手法だ。3Dモデルを一つ修正すれば、2Dの切り出し図面も同時に修正されるため、図面の不整合の低減と設計業務の大幅な省力化が期待できる。

 

また、3Dや2DのCADが手描き図面の機械的なドローイング(作図)という概念に対して、BIMは壁や建具、仕上げ材など建物を構成するパーツの一つ一つに「属性情報」というデータが保持され、モデルが構築される点に違いがある。そのため、設計や施工、維持管理に関する情報の活用次第では、建物のライフサイクルコストの削減をもたらすことも期待されている。

 

BIMは、その原型となるモデルが1970年代の米国で発表され、1980年代後半にはBIMをコンセプトとしたCADソフトウエアが開発された。現在のBIMが脚光を浴びるようになったのは、2007年に米国連邦調達庁(GSA)でBIMのガイドラインが提唱されたことがきっかけだ。遅れて、日本では2009年が「BIM元年」と呼ばれ、ようやくBIM関係の書籍が出回るようになり、業界で一躍注目されるようになった。

 

だが、現在においても建設業界で十分に普及したとは言い難い。というのも、導入コストや組織内の教育体制づくりの手間がかかる上、建材などのパーツの互換性が進んでいないといった事情が普及を妨げている。ただ、建築会社の経営者の間では「BIMの導入は重要課題の一つ」との声が出ており、この数年で普及が急速に進むものと考えられている。

 

 

 

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