映像で日本の建設業界の
「技術力の証し」を一目瞭然に
可児建設
2020年2月号
会社として蓄積遠隔管理や定量化にも挑む
他に先駆けた映像CIMへの着眼。そのきっかけは、現場施工を仕切る大番頭が病で倒れ、退職したことだ。大手ゼネコンでキャリアを積み、家業に戻っていた可児氏は思いがけない現実と直面する。
「技術もノウハウも、一気に消失した気がしました。個人に依存していたのに、会社にあると勘違いしていたのです」
その気付きから、技術資産となる知財の蓄積を目的に映像CIMへの挑戦が始まった。
「i-Construction(アイ・コンストラクション)を目的とする建設業界のICT活用というのは、建機によるMC(Machine Control)/MG(Machine Guidance)のイメージが強い。私もそう思い込んでいましたが、本来、情報通信技術なら何でもいいはずですし、それなら映像データ活用もその一つだ、と」(可児氏)
当初、自らの経験知を頼りにする現場の技術者には敬遠されたが、TL映像に自分の姿が映るのを見て「主人公になった気分で、面白い」と興味を抱き始め、作業の効率化など現実的なメリットも実感することで、徐々に定着していった。
活用法も進化を遂げている。可児建設は、施工現場の必須アイテムである安全チョッキにウエアラブルカメラを取り付けたオリジナルツールをメーカーと共同開発。ジンバル機能※を強化した鮮明な画質の映像と音声で、リアルタイムなコミュニケーションを可能にしたことにより、現場の人の動き、形状寸法までもが把握できる。
この仕組みを有効活用するシーンが施工状況の段階確認工程だ。発注者は現場へ足を運ぶ手間と時間と燃料を、現場も待機ロスを軽減でき、経済的・環境的に貢献する。
また、映像データの3次元(3D)化にも着手。設計データと1日の作業後の状態を計測・作成した3Dデータの差分によって、掘った土の量を定量的に分かるようにする仕組みだ。さらに、3DCADの設計図とTL映像を重ねて見える化し、差分をより分かりやすくすることにも挑戦している。
「映像って、見て分かりやすいんですよ、情緒的には。でも、論理的には分かりにくい。そこで3Dデータによる数値化で定量化できるよう研究しています。画質は4Kや8K、通信も5Gへと、より鮮明で高速になると、さらに活用シーンが増えていくでしょうね」(可児氏)
※ 動画のブレや揺れを抑えてスムーズな撮影を可能にする仕組み
3D形状モデルと属性付加

3D の形状情報に高さという属性を加えて色で表すことにより、形態の特徴やリスクの大きさを定量的に認知させることができる