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選ばれる会社へ、「決断」を。
【特集】

成長M&A

かつてM&Aといえば「乗っ取り」「身売り」など暗いイメージが付きまとったが、いまや多くの企業が持続的成長を図る手段として選択する時代になった。後継者難、本業の競争力低下、早期の新規事業開発など、一筋縄ではいかない経営課題を最短距離で解決したM&A事例をリポートする。
2019.12.27

リスクを徹底的に排除し
円満な買収に成功
タカハシアートプランニング


2020年1月号

 

どうしても譲れなかった二つの課題

 

もっとも、髙橋氏にとってM&Aは初めての経験だ。不安はあった。

 

「私は、根は向こう見ずな性格です。でも、それだけにビジネスではより慎重になろうと心掛けてきました。M&Aには当然、リスクがあります。不安を一つずつクリアにしながら、話を進めていきました」(髙橋氏)

 

2社を1社にするとなれば、妥協しなければならないことも多い。だが、髙橋氏にはどうしても譲れない課題が二つあった。

 

一つ目は、統括者の不在だ。譲渡対象会社の社長は合併を機に退任する意思を表明していた。経営母体が交代することを踏まえれば、もっともな判断ではあったが、TAP側も人材に余裕がなく、新たに加わった社員をまとめていくには有能なマネジャーが必要だった。

 

「先方の社長には、何とか残って指揮を執ってもらいたかった。難しいお願いだとは思いましたが、これも譲れないところでした」(髙橋氏)

 

二つ目は社風だ。一つの会社となったときに調和してやっていけるか。これは、社風が似通っているかどうかが鍵を握る。財務や人事は数字などで可視化されており、客観的に判断することができたが、社風はそうもいかない。実際に訪問して雰囲気は良さそうに見えたが、本当のところはどうなのか。

 

この課題を解決するために、髙橋氏は一計を案じた。

 

「試験的に東京の仕事を発注してみたのです。その仕事ぶりを見れば、すぐに分かると思いました」(髙橋氏)

 

買収を考える会社へ仕事を発注するのは、そうあることではない。だが、タナベ経営のM&A担当者はその意向を踏まえて関係者の説得に当たった。そして、2件の工事を発注した。

 

その仕事ぶりは、十分に満足のいくものだったという。

 

「先方の会社は“工事を大切にする”という理念を掲げていましたが、それがお題目だけではないか不安でした。しかし、実際の仕事ぶりを見ると非常に丁寧で、理念がしっかり浸透していると分かりました。たとえ合併が成就しなかったとしても、ぜひアライアンスを組んで仕事をしたいと社長にお伝えしたら、先方も『ぜひ』と言ってくださいました」と髙橋氏は振り返る。

 

こうして一つずつリスクをつぶし、2019年2月に契約を締結。その会社はTAPの傘下に入ることとなった。買収した会社は、その年の8月に解散、事務所を引っ越し、9月より晴れてTAPの東京支社となった。前社長は現在も、東京支社長として陣頭指揮を執っている。

 

 

 

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