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【特集】

成長M&A

かつてM&Aといえば「乗っ取り」「身売り」など暗いイメージが付きまとったが、いまや多くの企業が持続的成長を図る手段として選択する時代になった。後継者難、本業の競争力低下、早期の新規事業開発など、一筋縄ではいかない経営課題を最短距離で解決したM&A事例をリポートする。
2019.12.27

中小企業のM&Aで廃業危機を救うプラットフォーム:TRANBI

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2025年に70歳(平均引退年齢)を迎える中小企業経営者は約245万人。そのうち5割に当たる約127万人が後継者未定といわれている※。こうした“大廃業時代”の課題解決を図るトランビのサービスが脚光を浴びている。

※ 中小企業庁「事業承継・創業政策について」(2019年2月5日)

 

 

取引先が次々と廃業
危機感から生まれた新サービス

 

「会社の一番の商品は会社そのもの。いつもピカピカにして売れるようにしておきなさい」

 

トランビの代表取締役社長・高橋聡氏が今も鮮明に覚えているこの言葉は、米国へ留学していた約20年前、ホームステイ先の会社役員に言われたものだ。 

 

「TRANBI事業は、この時点から始まったのかもしれません」。そう振り返る高橋氏が2011年に開始した「TRANBI」は、会社の売り手と買い手をマッチングするM&Aプラットフォームである。当初は、高橋氏の父が経営する工業資材製造卸のアスク工業(長野県長野市)の一事業として始めたサービスだった。

 

「私がアスク工業に入社したのは2005年。数年後には父の後を継いで経営者になりましたが、当時すでに取引先が次々と廃業していく状況でした。特に、アスク工業に金属加工部品などを納入してくれる会社については、後継者がいない、子どもに継がせたくないという理由での廃業を目の当たりにしました」(高橋氏)

 

新たな仕入れ先を探さなければならない上、新しく取引を始めても、確かな品質の部品を安定供給できる体制づくりには時間を要する。「優れた技術を持つ会社が存続・成長できる仕組みをつくりたい」と考えた高橋氏が始めたのは、中小企業の事業承継やM&AをマッチングするTRANBIだった。自社のビジネスを成長させる上でも活用できる可能性がある事業としてスタートしたわけだ。

 

優れたノウハウを持つ会社や高いスキルを持つ従業員を引き受けてくれる会社があれば、廃業の必要はなくなる。ところが、当時M&Aを行えるのは大企業ばかりだった。仲介企業の高額な報酬が大きな理由である。M&Aでは買い手探しが困難とされ、加えて度重なる条件交渉や煩雑な契約などがあるため、仲介料は2000万~4000万円といわれる。対して中小企業の譲渡金額は平均1000万~2000万円。高額な手数料を支払うことはできない。

 

つまり、「中小企業のM&A」という市場は存在しなかったのだ。しかも当時、M&Aは “ハゲタカファンド”による敵対的買収など悪いイメージが先行していた。中小企業の経営者の多くに「会社を売る」という発想はなく、仮にあったとしても嫌悪感が強いのが実情。まずはM&Aに対する認識を変える必要があった。

 

こうした状況の中、高橋氏は自社の事業支援にもつながる「中小企業の事業承継とM&A」というビジネスモデルを推進していった。

 

これまでのM&Aの場合

■ M&A の打診は、売り手サイドから買い手サイドへ実施するのがこれまでのマッチング方法■ 買うことを検討するかどうか不明な候補先に打診するため、空振りも多くなり、探すのに多くの時間とコストがかかる傾向■売却先候補は仲介会社の発想に委ねられる

■ M&A の打診は、売り手サイドから買い手サイドへ実施するのがこれまでのマッチング方法
■ 買うことを検討するかどうか不明な候補先に打診するため、空振りも多くなり、探すのに多くの時間とコストがかかる傾向
■売却先候補は仲介会社の発想に委ねられる

 

 

プラットフォームを活用した場合

■ M&A の打診は、買い手サイドから売り手サイドへ実施するのがTRANBIのマッチング方法■ 少なくともサイトを見て興味を持った先との交渉となるため、空振りが少なくなるとともに、売り手は待っているだけでよいため、時間とコストの軽減につながる傾向■幅広い買い手候補から交渉がくる可能性がある

■ M&A の打診は、買い手サイドから売り手サイドへ実施するのがTRANBIのマッチング方法
■ 少なくともサイトを見て興味を持った先との交渉となるため、空振りが少なくなるとともに、売り手は待っているだけでよいため、時間とコストの軽減につながる傾向
■幅広い買い手候補から交渉がくる可能性がある

 

 

 

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