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【特集】

ラーニングカルチャーの創造

常に学ぼうとする文化(ラーニングカルチャー)がある企業は、人材育成の投資効果が高く、好業績を維持しやすい。その文化はどのように形成されるのか、事例からひもとく。
2019.12.16

「ラーニングテクノロジー」が学習にイノベーションを起こす:UMUテクノロジージャパン

ICTによって新たな学習スタイルを提供する「ラーニングテクノロジー」が企業の注目を浴びている。
そんな中、社員研修の“常識”を覆す仕組みとして導入企業が増えているサービスがある。
モバイルデバイスを活用し、双方向型学習を可能にしたプラットフォーム「UMU(ユーム)」だ。

 

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モバイルを活用し、あらゆる学習に対応

 

企業が行っている社員研修といえば、「集合研修」が一般的だろう。会議室や研究施設に受講者を集め、専門知識を持つ講師が座学形式で講義をする。その後、受講者を複数の班に分けて課題を与え、解答について討議・発表するグループワークを行うといったものだ。

 

集合研修は、多くの人材へ均質な教育を効率的に行えるほか、日頃は疎遠な社員同士のコミュニケーションを図れるといったメリットがある。だが、近年は働き方の多様化が進み、社員を1カ所に集めることが難しくなっている。そんな中、社員研修を一変させる画期的なサービスとして人気を集めるのが「UMU」である。

 

これはスマートフォンやタブレット端末などを活用し、教室の講義だけでなくさまざまな学習に利用できる、新しいラーニングプラットフォームだ。

 

「UMUはeラーニングとよく混同されるのですが、まったく異なるものです。eラーニングは、単に情報を受講者へ配信する一方向の学習です。UMUは受講者がプラットフォームを活用して、教室で授業に参加するのと同じような双方向のやりとりがデバイス上でできる『パフォーマンス型の学習』。集合研修から個別トレーニングまで、さまざまなニーズに対応することができます」

 

UMUを日本国内で提供するUMUテクノロジージャパン代表取締役の松田しゅう平氏は、eラーニングとの違いについてそう説明する。

 

UMUは、元グーグルの人材育成専門家ドングショー・リー(Dongshuo Li)氏が2015年に米国で開発。現在、世界203の国と地域で36万社以上の企業が導入し、受講者は2000万人を超す。2018年に日本法人(UMUテクノロジージャパン)が設立され、日本では2年弱で大手企業を中心に約2700社で利用されている。

 

 

認知科学に裏打ちされた効果的な方法で学ぶ

 

UMUの最大の特徴は「学習の科学」にある。世界中のユーザーのフィードバックを基に学習を科学的に分析・解析し、より効果のある学習方法を開発した。通常、トレーニングは「学習→練習→フィードバック」の繰り返しが行われる。UMUは、AIがリアルタイムでフィードバックを行う世界初の仕組みを実現。そうした科学的なアプローチと、「マイクロラーニング」を組み合わせた学習デザインができる点で異彩を放っている。

 

マイクロラーニングとは、1~5分程度の短時間で学べる学習コンテンツ(マイクロコンテンツ)を組み合わせ、ICTによって定着させる学習の仕組みである。つまり、学ぶテーマを細分化し、少しの時間で学べるコンテンツを数多く用意して、それを一つずつ学んでいく。そして全てのコンテンツを学ぶことで、テーマに精通できるようになる。

 

「一つのコンテンツはわずか数分で学べるものです。忙しいビジネスパーソンでも、電車の移動時間やカフェでくつろいでいる時など、“隙間時間”を利用すれば学ぶことができます。認知科学の分野では、一度に記憶できる数は5個プラスマイナス2個程度と言われています。そこでコンテンツは、数分の間に覚えてもらいたいことを5個程度に絞って組み込み、提供しているのです」(松田氏)

 

一般的なeラーニングは、45分間に覚えてもらいたい50個以上の要素を一挙に伝えるため、認知科学的には効果的でないと松田氏は指摘する。UMUは、短い時間でも効果的に学べるように学習設計自体の工夫を推奨している。そのためにUMUのマイクロラーニング機能には、クイズやアンケート、テスト、動画、評価など、効果的な学習を設計するためのパーツが多用されているそうだ。

 

例えば、「睡眠」について学ぶコンテンツの場合、「自分の睡眠に満足しているか?」「睡眠で困っている点は?」など、睡眠状況を確認する質問をした上で、「睡眠を改善してパフォーマンスを上げよう」という趣旨の記事や、「睡眠の質を上げるコツ」を教える動画を見てもらう。こうした複数のコンテンツで学んだ後、「朝すっきり目覚めるためのテスト」を実施することで睡眠改善が可能になるという。

 

しかも、これらのクイズやアンケートは、ランダムに用意されているわけではない。それぞれのコンテンツを戦略的に配置することで、効率的な学習を実現している。

 

「知識を身に付けるのに効果があるのはクイズです。インプットした知識は、アウトプットしなければ定着しません。そこで、UMUのマイクロラーニングではテストやリポートの提出など、アウトプットするためのコンテンツを必ず設けることをお勧めしています。このように、学ぶ内容やどんなスキルを身に付けたいかという企業のニーズを把握した上で、コンテンツの構成を考え、提案していく。これも独自のノウハウと言えるでしょう」(松田氏)

 

 

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