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【特集】

ステージアップサイクル

若手経営者や新興企業は、さまざまな「成長の壁」とぶち当たる。難壁を突破する上で必要なことは何か。ミッション・ビジョン、ブランディング、メンタルモチベーションなどの機能に着目し、ビジネスを成長へと導く「ステージアップサイクル」を考える。
2019.10.31

徹底した”沖縄ブランド”づくりで
「沖縄の価値」を全国に発信:ゆいまーる沖縄

自社ブランド「nife(ニーフェ)」は唐草模様をあしらった焼き物で、人気ナンバーワン商品

 

ブームを振り返り「ブランドづくり」に着手

 

「2年間は経営の引き継ぎに必死でした。ビジョンなど描く暇もなかった」と鈴木氏は語る。最大で7店舗を全国展開していた事業拠点も、本店のみとなった。今後の展開を考えあぐねていたところ、2000年前半の“ 沖縄ブーム” を思い出した。自社を苦境に立たせたブームだったが、そのブームがあったから沖縄は全国で広く認知されたことになる。

 

冷静に当時を振り返り、反省点は「商品に付加価値を付けられなかった」ことだと分析した。社員を集めて話し合いを重ねると、沖縄の価値を高め、生産者も自分たちも幸せになるための一手として出てきたキーワードが、「ブランドづくり」だった。

 

鈴木氏は、自社を変革するブランドを追求し始めた。まずは経営目的に掲げる「琉球の自立を目指す」に即した商品・文化とは何かを再確認し、商材探しに着手。その基準にそぐわない薄利の商品は取り扱いを縮小、価格を変えるなどして粗利益率の向上に努めた。

 

取り扱いを続けた商品も改廃を行いつつ、新しいものをどんどん取り入れていく方向へかじを切った。「沖縄へのこだわり= “ らしさ”」を感じられる上、時代の変化に合っているかを重視したのである。

 

加えて、ブランドづくりのためにはハード面だけでなくソフト面も整備する必要があり、鈴木氏は社員に感性を高めるよう求めた。営業担当者を例に挙げると、これまでのように商品を取引先にただ納品するだけでなく、提案を行うことで付加価値を生み、数字を意識していくよう伝えたのだ。

 

今までと異なるプロセスが発生することに戸惑う社員も少なくなかった。そのため、会社と一緒に社員も変わっていこうという鈴木氏の思いとは裏腹に、価値観の違いから約1年半で10名の社員が会社を去った。

 

「ブランドづくりは、会社をイチから立て直す作業のようだった」と鈴木氏は振り返る。

 

その後、つくったブランドを育てるため、三つの重要なポイントを定めた。利益基準とテーマ、コンセプト、ターゲットイメージの設計など「ブランドルールを決めること」。やることとやらないこと、売る場所と売らない場所を明確にするという「基準を決めること」。そして、社内で自社ブランドの重要度を明確にする「立ち位置を決めること」。この判断を明確にし、社内に浸透させた。

 

取り組みの結果、5年間で粗利益率が10ポイントも向上。現在、同社は沖縄の工芸品・食品の企画プロデュース、流通、プロジェクトデザインをメインに四つのブランドを展開している。さらに、大手飲料メーカーやデザイナー、職人などとコラボレーションも行い、県内外の約200カ所で企画・流通を手掛けている。

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