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デジタル×プロモーション

プロモーション(販売促進)手法のデジタルシフトが進んでいる。顧客の消費行動にも大きな影響を及ぼすまでになったデジタルプロモーションの最前線に迫る。
2019.09.30

パイン流“バズマーケティング”:パイン

公式キャラクター「パインアメくん」のLINEスタンプ

公式キャラクター「パインアメくん」のLINEスタンプ

 

他社の公式アカウントとつながり
思わぬコラボレーションに発展することも

パインがツイッターを始めて9年。環境は大きく様変わりした。今では企業がツイッターやインスタグラム、フェイスブックといったSNSを活用することは当たり前だ。広報や広告宣伝の専門部署すらなかった同社にも2018年、ついに広報室が誕生。会社の広報活動に協力してマッキーさんも日々ツイッターを更新している。

「始めたころは、『少しでも会社の役に立ったらいいな』くらいの気持ちでした。正直に言うと、ここまで話題になるとは想像もしていませんでした」とマッキーさんは言うが、多くの人が同社のツイッターをフォローしたくなるのには理由がある。

まず、すぐにまねできる工夫として、何より「見て楽しい、面白いつぶやき」である点を押さえていること。例えば、アイコンに使われている同社の公式キャラクター「パインアメくん」は、マッキーさんがツイッターのために描いたもの。季節や記念日などに合わせて描き直しているという。

また、ツイッターは短い文章中心になりがちだが、写真やイラストに加えたり、パインアメを連想させる「◎」を文章や絵文字に盛り込んだりすることで、フォロワーの印象に残るように心掛けている。

次に、つながること。企業によっては、フォロワーからのコメントに返事をしないところもあるが、マッキーさんは時間が許す限り返信する。「ツイッターの良いところは、リアルタイムに反応できたり、お客さまと直接やりとりができたりするところ」。フォロワーとの掛け合いの中で話題が膨らんだり、新しい商品のアイデアが生まれたりすることも珍しくないそうだ。

さらに、マッキーさんが勧めるのは、他社の公式アカウントとつながること。あまり関わりのない企業でも、コメントやフォローをするうちに注目が集まって、思わぬコラボレーションにつながることがある。実際、同社ではニッセンやセガ、シャープといった異業種企業とのコラボイベントやコラボ商品へ発展。それがきっかけとなり、従来とは違う場所で、違う顧客層にパインアメを広く知ってもらう機会ができたという。

「他社とのコラボは話題づくりだけでなく、従来とは違う売り場に『パインアメ』の名前が並ぶところに価値があります。常に新商品が発売されるお菓子は、商品棚の入れ替わりが激しいことが特徴。既存の商品が忘れられないためにも、お客さまの目に触れる機会を少しでも増やしていく努力が大切です」

広告宣伝の専門部署を持たない中小企業でも、ツイッターを使えばお金をかけずに大きな話題を集めることができる。パインは、アイデア次第で“バズる”、つまり、インターネットやSNSで一気に話題が拡散し、注目を集める企業になることを証明した良いお手本と言っていい。

 

『攻めるロングセラー パインアメ「中の人」の心得』(クロスメディア・パブリッシング刊)も大きな話題を呼んでいる

『攻めるロングセラー パインアメ「中の人」の心得』(クロスメディア・パブリッシング刊)も大きな話題を呼んでいる

 

日常業務や商品の中に「バズる」ネタは隠れている


「初めこそネタに困りましたが、倉庫で見つけた昔の写真を掲載したり、新商品がコンビニに並んだ様子を投稿したりしているうちに、うまく回り始めました」。マッキーさんがこう話す通り、社員にとっては当たり前に感じる日常業務や会社の歴史、商品の中に「バズる」ネタが隠れている可能性は十分にある。

とはいうものの、これからツイッターを始めようと考えている企業の中には、どうしても「炎上」が気になり二の足を踏んでしまうところもあるだろう。しかし、マッキーさんは「実は、炎上はなかなか起こりません」とアドバイスする。

「商品にまつわることや会社に関係する情報発信を心掛けている限り、炎上する可能性は低いと思います。ただし、会社の公式アカウントであることを常に意識すること。主観的になり過ぎるのはよくありません。つぶやく前には必ず、受け取る相手の気持ちになって読み返すことをお勧めします」(マッキーさん)

大事なのは、目的を忘れないこと。会社や商品の話題から大きく外れずに、相手の気持ちを考えて発信することがポイントだが、これは普段の営業活動や店舗における接客であっても同じこと。ビジネスにおける鉄則と言っていい。

同社のすごいところは、ツイッターによって消費者の中に眠る「懐かしさ」に火をともしただけでなく、消費者や他社の視点を切り口にパインアメの新たな魅力を引き出していったところにある。そうした変化を恐れない姿勢は、創業から受け継がれてきた同社の企業DNAでもある。

「パインアメは昔と変わっていないように見えて、絶えず時代に合わせて改良されています。メーカーとしての商品や品質に対する強いこだわりが安定した販売数をつくっており、そこにツイッターという新たなツールが加わったことで今も販売数がじわじわと増え続けている状況です。これからも『パインアメを知っている』という人が増えて、キャンディーを購入する際の選択肢に、当社の商品を入れていただけるよう取り組んでいきたいと思います」(マッキーさん)

係長マッキーさん(ご本人の希望により写真を加工)。いまやインスタグラムやフェイスブックでも会社の“ 顔”だ。

係長マッキーさん(ご本人の希望により写真を加工)。いまやインスタグラムやフェイスブックでも会社の“ 顔”だ。

 

PROFILE

  • パイン㈱
  • 所在地:大阪府大阪市天王寺区生玉寺町1-5
  • 創業:1948年
  • 代表者:代表取締役社長 上田 豊
  • 従業員数: 105名(2019年3月現在)
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