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【特集】

デジタル×プロモーション

プロモーション(販売促進)手法のデジタルシフトが進んでいる。顧客の消費行動にも大きな影響を及ぼすまでになったデジタルプロモーションの最前線に迫る。
2019.09.30

目指してきた精神を受け継ぐ
「 崎陽軒LOVE」の厚みを増し、裾野を広げる
崎陽軒

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2019年10月号

崎陽軒「昔ながらのシウマイ」 豚肉と干し帆ほ 立たての貝柱の豊かな風味で、冷めてもおいしい、ひと口サイズのシウマイ。発売以来、変わらぬレシピで作り続けている

崎陽軒「昔ながらのシウマイ」
豚肉と干し帆ほ 立たての貝柱の豊かな風味で、冷めてもおいしい、ひと口サイズのシウマイ。発売以来、変わらぬレシピで作り続けている

 

名物とは、地域に愛され、貢献する存在――。
横浜の人と街に密着し、伝統を守りながら、進取の気風で新たな食文化を創り出す「ローカルブランド」戦略とは。

 

日常の食文化として地域に定着した「1日2万5000食」

JRや東急、京急、相鉄、市営地下鉄に第三セクターの横浜高速鉄道も。一つの駅に国内最多の鉄道事業者が共存する横浜駅には、巨大なターミナルにふさわしい名物がある。崎陽軒の「昔ながらのシウマイ」と「シウマイ弁当」だ。

駅周辺だけで15店舗を数え、東口には本店ビルがそびえ立つ。そんな“崎陽軒ワールド”が全開の横浜駅を拠点に、同社は神奈川県・東京都など関東圏で約150店舗の直営店を展開。シウマイと弁当、点心、レストラン、ウエディングや宴会など五つある事業のうち、人気も知名度も抜群のシウマイと弁当が、売り上げの8割超を占める大黒柱である。

「シウマイ弁当は、1日の販売が約2万5000食。日本一売れている駅弁といわれています」。そう笑顔で語るのは、広報・マーケティング部の金田祐輔氏。「横浜名物=崎陽軒」と呼ばれる、高いブランド力を誇るのも納得の実績だ。だが一体、顧客に何を愛されて、そのブランド力が成り立つのか。そして、顧客とは誰なのか。その疑問をぶつけると、金田氏は歯切れ良く答えてくれた。

「地域の方々に支えられているんですよ。横浜市内や神奈川県内で暮らし、働くお客さまが、昼のお弁当に、帰宅時には夕食のおかずに、と買ってくださいます。駅弁だけでなく、ご家庭でも召し上がっていただける商品に育ったおかげです」

昼と夕方に2回の販売ピークを迎える他、朝も「ハマの朝ごはん弁当」を提供。地域の日常の食文化として定着した愛されるブランドということだ。そして、創業100周年から経営理念に掲げて目指すのが「ローカルブランド」戦略である。

特定地域への集中出店はドミナント戦略と似ているが、その実態は異なる。「シウマイも弁当も日持ちがせず、販売エリアを拡大できない一方で、限られたエリアでより多くのお客さまに、真に愛される、優れた存在になること。それがローカルブランドの狙いです」(金田氏)

食品の安全や鮮度という物理的な条件だけでなく、精神的にもローカルブランドを目指す理由がある。実は以前、包装技術の進歩で長期保存の真空パックが可能になったため、全国の小売店へ卸売りを始めた。だが、地方の店頭では「横浜名物」にふさわしくない販売が展開されたこともあった。また、「横浜土産に持参したのに『近所のスーパーで売ってるよ』と言われ、残念な気持ちになった」という声も寄せられた。

「かわいそうな売られ方も、喜んでもらえない悲しさも、お客さまと当社が共に、そうあってほしくないと願うこと。『長い目で見たときに、地域に愛されている価値、地元でしか買えない商品としての価値を優先し、大事にしていこう』と現社長の野並直文が決断しました」(金田氏)

その後、ウェブ通販や百貨店の名産品売り場などを除き、全国販売は大幅に縮小。取引拡大のチャンスロスには当然、葛藤があった。それでもあえて、目に見えやすい売り上げや事業の拡大だけでなく、自社が保有する価値を最大限に発揮し、地域貢献で存在感を高める道を選んだ。ローカルブランド戦略の本質は、その追求にあると言えるだろう。

崎陽軒「シウマイ弁当」 シウマイの妹分として、1954 年に登場したシウマイ弁当。崎陽軒のこだわりが詰まっている

崎陽軒「シウマイ弁当」
シウマイの妹分として、1954年に登場したシウマイ弁当。崎陽軒のこだわりが詰まっている

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