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【特集】

デジタル×プロモーション

プロモーション(販売促進)手法のデジタルシフトが進んでいる。顧客の消費行動にも大きな影響を及ぼすまでになったデジタルプロモーションの最前線に迫る。
2019.09.30

本物の人間そっくりの架空モデルを生成:データグリッド

 

生成AIを活用した「アイドル生成AI」。世の中に存在しない架空のアイドルを自動で生成することができる

生成AIを活用した「アイドル生成AI」。世の中に存在しない架空のアイドルを自動で生成することができる

 

現実(リアル)の世界にいそうでいないバーチャルヒューマンをつくり出す、AIスタートアップ企業のデータグリッド。同社が手掛ける「クリエイティブAI」に、多くの企業が熱い視線を注いでいる。

 

次世代の主流として注目の生成AI

上記の画像をご覧いただきたい。テレビや雑誌などで見掛けるアイドルグループ――のように見えるが、実は彼女たち、この世界に存在しない。京都市に本社を置くAIスタートアップ企業のデータグリッドが開発した「アイドル生成AI」によって生成された“架空のアイドル”たちなのだ。

同社はAIの中でもGAN(敵対的生成ネットワーク:コラム参照)と呼ばれる最先端の技術を活用することで、本物の人間そっくりの架空アイドルを短時間で大量につくり出すことに成功。次世代の主流になるといわれる生成AIの先進事例として話題を集めた。

ここ数年、さまざまなビジネスの領域でAIの活用が急速に広がっていることは周知の通りだ。業務の自動化や需要予測、品質管理などの分野はもちろん、ユニクロが展開するAIコンシェルジュ「UNIQLOIQ(ユニクロ・アイキュー)」※1や、眼鏡専門店チェーンのジンズが展開中の眼鏡試着サイト「JINSBRAIN(ジンズ・ブレイン)」※2といった挑戦的な試みが、デジタルプロモーションの分野でも広がっている。

ただし、これまでAIが主に活用されてきたのは、「予測」と「認識」という二つの領域だった。それに対し、データグリッドが特化している生成AIとは、創造性を獲得した新技術である。

「生成AIは、簡単に言えば新しいものを創るAIです。世の中にない音楽を作ったり、絵を描いたり、文を作成したりするなど、予測や認識を行うAIとはまったく異なるアウトプットを生み出すことが可能になります」

そう語るのは、同社の代表取締役社長CEOである岡田侑貴氏。京都大学の学生時代から最先端のAI技術を学び、同じ研究室に在籍していた小川恭史氏(現執行役員CTO)と共に2017年に起業した。それ以降、GANを活用した「クリエイティブAI」の研究開発に取り組んできた。

※1 在庫確認やコーディネート提案、トレンド情報提供などを行うアプリのアシスタントサービス
※2 パソコンやスマートフォン上で眼鏡を試着し、似合うかどうかをAIが判定する無料サービス

 

「キャラクター生成AI」。多様なキャラクターをゲーム業界に提供している

「キャラクター生成AI」。多様なキャラクターをゲーム業界に提供している

 

先行事例のない挑戦に世界が感嘆

2018年6月、データグリッドはアイドル生成AIを発表した。同時にアニメ風の多様なキャラクターを自動生成する「キャラクター生成AI」(オンラインゲーム会社のアエリアと共同開発)もお披露目し、数々のメディアに取り上げられるなど大きな反響を巻き起こした。

生成したコンテンツの事業化も進んでいる。生成AIがつくったキャラクターをゲーム業界に提供するほか、一般ユーザーがアイドル生成AIで自分好みの架空アイドルを生成できるサービスをスタート(2019年6月)している。

順調に事業を展開しているように見えるが、「アイドル生成AIをつくってみて、まだ不十分な部分があると気付かされました」と岡田氏。問題は、人間の顔だけでは表現力が弱く需要が少ないこと。「より多くの分野で活用していただくには、全身の“バーチャルヒューマン”をつくること。さらに、それを動かすことが必要だと考えました」と話す。

そして約1年をかけて開発したのが、2019年4月に発表した「全身モデル生成AI」だ。体を含めた高解像度(1024×1024ピクセル)の架空モデルを自動で大量につくり出す技術は、世界を見渡しても先行事例がない。それだけに、「米国や欧州、中国など世界中からたくさんの問い合わせが寄せられている」(岡田氏)そうだ。

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