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【特集】

実行力

経営実態を具体的にわかるようにする「見える化」に取り組む企業は多い。だが、問題が見えるだけでは何の解決にもならない。それを解決へつなげる「実行力」が不可欠だ。「見える化」によって見えた問題を解決している企業の取り組みに迫る。
2019.08.30

「仕事を出したくなる」工場へ
スピード感持ち一点突破&横展開
富士精機


2019年9月号

床を汚す原因となる油類の置き場を1カ所(オイルステーション)に集約した

床を汚す原因となる油類の置き場を1カ所(オイルステーション)に集約した

 

5Sが徹底された工場内。通路をふさぐ物は何一つない

5Sが徹底された工場内。通路をふさぐ物は何一つない

 

生産性、品質、営業、人材採用で顕著なメリット


仕掛品が減った分、「歩き、探し、迷い、選ぶ」ことでロスしていた時間も減った。かつ工具、棚、キャビネットなども含め工場内にあふれていた物が減り、設備と設備を近づけることが可能になると、1人で複数の設備を受け持つこと(多台持ち)もできる。工具や取扱説明書の収納を工夫し、多品種化に伴う段取り変更も速やかにできるようになった。

当然、生産性は上がる。5Sを始めてからの売り上げの伸び率は150%。それに対して現場の人員増は110%──数字が正直に物語る。では、品質面はどうか。見える化ができていない頃は、加工に失敗したら捨てていたため、不具合品がどれだけ出ているのか分からなかった。リスク管理も「100個必要なら、110個作っておけばいいだろう」といった具合だった。

そこで前川氏は、不具合品を置く場所を設け、翌日の朝礼時、当事者に失敗の理由と今後の対策を述べさせた。ただし、ペナルティーは課さない。個人の問題としてではなく、システムに問題がなかったかを考え、今後に生かすことが大事だからだ。

次第に、品質に対する意識も高まってきた。「これまでは5個の注文に対して6個作っていたが、今はきっちり5個作るようにしています」(前川氏)。これも5Sと見える化の効果だ。「5Sができてないのに品質が良くなるわけはないし、生産性が上がることはない」と前川氏は断言する。

営業面でもメリットが顕著に表れている。ミクロン単位の精度が要求される精密部品のため、富士精機では取引を始める前に、顧客に対し「とにかく一度見に来て」とお願いする。すると必ず「これだけきれいな工場なら、安心して注文が出せる」と評価してもらえるそうだ。「口で言うより(見てもらう方が)早い」と前川氏。「富士精機の物を使ってくれ」と指定するメーカーも出てきており、同社はブランド的にも認知されつつある。

さらに、人材採用面にも派生効果があったという。同社では採用応募者にまず工場を見学してもらい、「ここで働きたい」と感じた人から面接希望を募る。現場のきれいなイメージが多くの応募者の好感を呼び、「人手不足が深刻化している中でも、おかげで若い人や女性の採用が増え、現場の平均年齢が一気に下がりました」(前川氏)。女性従業員数はこの5年間で7名から14名へ倍増し、現場の平均年齢も6年前の45歳から37歳へと若返った。

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