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【特集】

実行力

経営実態を具体的にわかるようにする「見える化」に取り組む企業は多い。だが、問題が見えるだけでは何の解決にもならない。それを解決へつなげる「実行力」が不可欠だ。「見える化」によって見えた問題を解決している企業の取り組みに迫る。
2019.08.30

「仕事を出したくなる」工場へ
スピード感持ち一点突破&横展開
富士精機


2019年9月号

“2S”で見えた!在庫・仕掛かり4カ月分

前川氏が工場長に就任した当時は、業績が伸び、従業員数も増えていた時期だった。いきおい工場内の秩序は乱れがちになる。設備は汚れが目立ち、配置は場当たり的で通路にまではみ出し、至る所に物が積まれ、タバコを吸いながら作業する者もいて、納期が遅れることもたびたびあった。

「これはマズイな」。そう思った前川氏は、「工場長の私が現場のことを聞かれて答えられないようではダメ。うまく回っているのか、どこに問題があるのか、まずは私が見えるように」と、5S・見える化に取り組んだ。

スタートは整理・整頓、すなわち「2S」からだった。要らない物を捨て、要る物を残し、置き場を決めていく。しかし、たったそれだけのことが意外とできない。特に「捨てる」が難しい。「もったいない」「たまに使う」「何かに使える」で、逆に増えていくことすらある。

例えば、前川氏が現場から上がってくる消耗品の注文をチェックしていると、明細書に「スパナ」とあった。現場にはスパナがあふれていたはずだが……。工場の全員にスパナを出させると、1m四方のスペースにあふれるほどのスパナが出てきた。一事が万事、この調子だった。

そんな現場の状況を写真に撮り、整理・整頓の重要性と5Sに取り組む必要性を説く一方で、協力的な姿勢を見せた若手社員には「ここ(作業場所)をモデル部署にしないか?」と呼び掛けた。「全面展開」ではなく“一点突破”から始め、横展開へつなげていく作戦だ。こうして整理・整頓が軌道に乗ってくると、おのずと無駄な物を持たない、作らないための「物の流し方」に意識が向くようになった。

一般的に、一回一回作るより、まとめて作った方が効率的だと考えられがちだが、「大量に作ってためておいた仕掛品を、次の工程の人が探し出すというのは時間の無駄だし、現金が形を変えてここ(現場)に残るわけです」(前川氏)。同氏は社内の勉強会で、材料の手配やお金の流れなどを説明しつつ、仕掛品を作らない流し方、合理的な設備の配置を進めていった。

こうして工場のあちこちにため込まれていた仕掛品の山が徐々に消え、かつて材料、仕掛品、完成品(在庫)合わせて4カ月分あったものが、現在では1.9カ月分に激減した。目標は1.5カ月分だという。

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