目指すは「多様性のある組織」
ボトムアップとトップダウンの両輪で女性活躍を推進
キリンホールディングス
もう一つ、ユニークな取り組みがある。「なりキリンママ・パパ」。営業職の女性活躍を推進する異業種合同プロジェクト「新世代エイジョカレッジ」※2に参加し、組織改革や営業変革に取り組むキリングループ飲料各社の女性営業職社員の提言から生まれたものだ。
「実際には子どものいない社員が、営業ママ・パパになりきって時間の制約がある働き方をし、労働生産性を上げる取り組みです。男女共にこれを経験することで、子育てや介護をしながら働くことの大変さを疑似体験するとともに、どのような働き方が良いのか、周囲はどうサポートすべきかなどを考えるきっかけにしています。2016年度のエイジョカレッジの大賞を受賞し、社内でも2017年からテスト的に導入して、2019年から本格的に活動をスタートしました」(豊福氏)
なりキリンママ・パパでは、「育児」「親の介護」「パートナーの病気」という三つのシチュエーションから一つを選び、仮想の家族の名前を登録。残業をしない、フレックスタイムや在宅勤務などの制度をフル活用し、配偶者サポート制度やベビーシッター制度も利用するという前提で、1カ月間いつもと同じ業務に当たる。
期間中には、保育園から「子どもが熱を出した」といった突発的な連絡が入る。この連絡は、なりキリンママ・パパの事務局がランダムに入れるのだが、その時はどんなに忙しくとも仕事を切り上げなければならない。現実に起こり得る状況の中で、仕事と子育て・介護の両立生活を目指すことになるのだ。
「突発的な事態に備えた時間管理・進捗管理能力の向上や、職場でサポートしてもらう周囲とのコミュニケーション強化、巻き込む力の養成といった効果を期待しています。当然、将来のライフイベントに備えた予行演習としても効果的ですし、マネジメント力の向上にも役立つと思います」(豊福氏)。
この取り組みは、すでに同社の複数の部署に導入。メディアで取り上げられたことにより、地方自治体の職員向けの研修にも活用されているという。
若手社員への意識付けから男性社員の行動変革にまで及ぶキリンHDの女性活躍推進活動は、企業文化として根付き、大きな花を咲かせている。
※2 「営業で女性がさらに活躍するための提言」に向けた異業種合同プロジェクト。2014年にリクルートホールディングス、サントリーホールディングス、日本アイ・ビー・エム、KDDI、三井住友銀行、日産自動車、キリンの7社とコンサルティング会社のチェンジウェーブが創設し、現在まで30社を超える企業が参加
PROFILE
- キリンホールディングス㈱
- 所在地:東京都中野区中野4-10-2中野セントラルパークサウス
- 設立:1907年
- 代表者:代表取締役社長 磯崎 功典
- 売上高 : 1兆9305億円(連結、2018年12月期)
- 従業員数:3万464名(連結、2018年12月31日現在)