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【特集】

ホールディングカンパニー

事業承継を機に「ホールディングカンパニー」(持ち株会社)を設立し、グループ経営に移行する中堅・中小企業が増加している。持ち株会社は「独占禁止法」の改正で解禁されたが、従来は大手企業を中心に業界再編ツールとして運用されてきた。この古くて新しい「ホールディング経営体制」の導入企業事例を通じ、経営戦略上のメリットを浮き彫りにする。
2019.06.28

総合力を生かした地域密着型の営業で九州一の “電材卸のコンビニ”へ:カンサイホールディングス

モノ売りからコト売りへ
フェース・ツー・フェースの提案

 

「カンサイフェアは毎年リーダーが変わりますが、たとえ100円でも前年度の売り上げから落とせないという暗黙の了解があります。社員には優しく言っているつもりですが(笑)」とにこやかに前置きした上で、勉氏は真剣なまなざしで語る。「相当なプレッシャーだと思います。報告会ではプロジェクトリーダーが男泣きするのです。この時代、人前で泣くなんて、めったにないでしょう?」

 

目下の課題は人材不足だと語る勉氏。九州トップクラスの中小企業だとしても、その影響は数年前から顕著に表れている。そこで、昨今では地元プロ野球・サッカーチームのスポンサーになったり、ラジオCMを流したり、「カンサイCUP」と冠し、男子学生ゴルフ選手の育成支援のためゴルフ大会を開催するなど、企業PRや社会貢献活動にも乗り出した。

 

「今まではモノを左から右に動かす売り方で良かったのですが、今後はメーカーも含め、仕組みを全体まるごと売っていく時代。例えばゼロ・エネルギー・ハウスを提案する場合、太陽光パネルやLED照明だけ売っても意味がありません」

 

事業そのものにも大きな課題が待ち受けている。電気工事自体が減少傾向にあり、今後はメインクライアントである電気工事店だけではなく、今まで業界でタブーとされていたエンドユーザーや工務店に直接売り込んでいかなくてはならない。そこで2016年、分析や提案を専門とするエネルギーマネジメント事業部を立ち上げた。この部署には予算がついていない。

 

「予算を持てば数字に振り回されてしまう。この部署の提案の受け皿こそがカンサイ各営業部であり、グループ会社。提案力を現場に引き継げば、必ず数字は上がります。なおかつ、うちは商社ですからメーカー色がない。いわゆる“いいとこ取り”ができ、どこに提案してもいいという強みがある」と語勢を強めて語る。勉氏はこうも付け加えた。「だから、東京や大阪に進出する暇がないのです。九州でやることがたくさんある。社名が知られている九州で、時代の変わり目にフェース・ツー・フェースのお付き合いを地道に行っていけば、『カンサイさんの提案なら大丈夫』とお客さまに言ってもらえる自信はある」

 

「手を広げるだけが能じゃない」と地域徹底密着の営業で“電材卸のコンビニ”を目指すカンサイホールディングス。今後も九州を拠点として、総合提案力を強化しながらグループ会社の価値向上に挑んでいく。

 

カンサイホールディングス 代表取締役社長 忍田 勉氏

カンサイホールディングス 代表取締役社長 忍田 勉氏

 

PROFILE

  • ㈱カンサイホールディングス
  • 所在地:福岡県福岡市博多区東比恵3-32-15
  • 設立:2013年
  • 代表者:代表取締役社長 忍田 勉
  • 売上高:284億200万円(連結、2019年3月期)
  • 従業員数:350名(連結、2019年4月現在)

 

 

 

 

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