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【研究リポート】

イベント開催リポート

タナベコンサルティンググループ主催のウェビナーやフォーラムの開催リポートです。
研究リポート2021.09.28

アカデミーフォーラム2021
ゲスト:アズビル、JESCOホールディングス、JR九州電気システム

 

 

新たな人材育成を学び、ニューノーマルな時代に対応する

 

 

タナベ経営は2021年9月7日、オンラインセミナー「アカデミーフォーラム2021」を開催。ニューノーマル時代にどのような人材育成へ取り組むべきか、タナベ経営の講師の講義や、企業内大学を設立・運営しているゲストの講演など、さまざまなプログラムを172名の経営者やリーダー層の方々が視聴した。

※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。

 

 

Session1 ニューノーマルな時代に対応する新たな人材育成

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、ビジネスモデルを再構築したり、収益構造を改革したりしようとしている企業は少なくない。事業戦略推進を加速化させるため、生産性・専門性の高い人材を早期育成する必要がある。

 

コロナ禍で一気に普及したオンライン研修や動画の活用だが、効果・反応をあまり感じられないといった声を聞く。ニューノーマルな時代に対応する新しい人材育成のポイントとして、次の3つが挙げられる。。

 

(1)新しい育成フレームを設計する(戦略的人材育成)
経営理念・ミッション、中長期ビジョン・計画、単年度経営方針に基づく、「求める人材像」を明確にして運用。

 

(2)新しい学習方法「ブレンドラーニング」を導入する(デジタル×体験・経験×リアル)
1日でインプットとアウトプットを行う従来の研修とは異なり、ブレンドラーニングではあらかじめ動画を見てインプットし、その後にオンライン研修を行い、また職場で実践(アウトプット)する。生産性が高く戦略的かつ効果的な学習方法である。

 

(3)効果を測定し、より早く「成果」を生み出す
アンケートで満足度、テストで理解度、レポートで実践度、人事考課で貢献度を測るなど、効果を測定できる仕組みをつくる。測定結果を基に、研修内容の見直しや受講者自身の習得状況の把握へとつなげる。

 

ニューノーマルな時代の人材育成で大切なのは、教え学び合う企業風土を醸成させることである。次の4つを意識していただきたい。

(1)運営体制の構築
全社一体となって運用体制・受講者支援体制を整える。

 

(2)社員全員参画
社内講師の活用により「組織力」「採用力」の双方を高める。

 

(3)人事制度との連動
社内大学を人事制度と連動させ、目標設定や育成計画の基準として上司と部下が共有する。

 

(4)インナーブランディング
全社員への周知・認知を行って啓もう活動を行う。

 

人事部に任せきりにせず、ぜひ経営者自らが率先して新たな人材育成に挑んでいただきたい。

 

 

株式会社タナベ経営

HRコンサルティング東京本部 本部長代理

盛田 恵介

2001年タナベ経営新卒入社。セミナー責任者を経てコンサルティングに携わる。2021年より、HRコンサルティングティング東京本部 本部長代理兼人材育成研究会リーダー。人づくりをデザインする総合プロデューサーとして、中堅・中小企業の人事・育成制度構築から運用に至るまでサポートし、中でも様々な業種・業態の企業内大学設立に実績を有する。

 

 

 

Session2 “学習する企業体”に向けた人材育成機関「アズビル・アカデミー」とは

1.アズビルに必要な人材像(能力開発の基本方針 2008年度)

(1)仕事のプロとして、集団の一員として、チームワークで協働する
(2)一流を目指す強い意欲を持ち、挑戦し続ける
(3)高い志と倫理観を持ち、国際感覚に優れている

 

2.アズビル・アカデミー(2012年設立)の機能

(1)教育機能
(2)キャリア・サポート機能
(3)研修センター機能

 

3.アズビル・アカデミー3つの約束

(1)研修機能を集結し、これまで以上に効果的かつ効率的な人材育成を目指す
(2)全社で行われる各種研修を全て可視化する
(3)社員一人一人のキャリア構築を支援し、新しい仕事へ挑戦する社員を後押しする

 

4.特長

(1)グループ社員を対象とした人材育成・教育
(2)企業理念、経営方針に直結した人材育成・教育
(3)事業/業務改革と連携した人材育成・教育

 

5.主要施策

(1)社員育成(アズビルグループ全員の育成)

①マネジメント層、リーダー層、実務層、若手層の階層別研修
②倫理的思考、問題解決能力などの強化研修
③自主学習支援(条件を満たせば奨励金支給など)

(2)ソリューション教育

①自社グループの製品・商品知識の習得
②顧客プロセス・設備・装置の知識の習得

(3)技術・技術の伝承

①各事業・各部門・各職種のスキルの要件化とグループ社員のデータベース化、およびそのスキルアップ研修
②技術プロフェッショナル制度によるトップエンジニア認定と後継者の育成
③公的資格取得支援

(4)キャリア形成

①人材活用施策
②社内公募制度(オープンチャレンジ)
③キャリア相談

 

 

アズビル株式会社

アズビル・アカデミー 学長

八木 博氏

1989年山武ハネウエル(現アズビル)入社。デバイスの開発・生産などを経て、2011年より人材開発に携わる。2012年11月のアズビル・アカデミー設立より、現在まで在籍。

 

 

 

Session3 JESCOアカデミー設立の目的と今後の狙い

1.JESCOアカデミーの目的

(1)技術の伝承、育成スピードアップ

⇒課題である建設業就労者数の減少、高齢化を解決
(2)企業文化やマインドの醸成⇒次世代リーダーの育成

 

2.JESCOアカデミーの概要

(1)デジタルで学ぶ(ウェブ動画、デジタルマニュアル)

⇒ネットで事前学習と復習、繰り返して学ぶことで理解が深まる

(2)リアルで学ぶ

⇒Face to Faceの集合研修でコミュニケーションが活性化

 

3.JESCOアカデミー設立のプロセス

 2018年6月

  社内での検討開始

 2020年2月

  設立プロジェクトの始動

 2020年2~3月

  実態調査

   ①理念・ビジョン・人に対する考え方(ヒアリング)

   ②スキル(知識・能力)の棚卸し

   ③優秀人材の特性(ヒアリング)・若手社員アンケート

   ④人事制度・教育制度分析(マニュアルなど資料類)

   ⇒アカデミー設立の方向性

 2020年3月末

  役員検討会にて決定

 2020年4~5月

  育成内容&ストーリーの作成

   ①アカデミー設立の目的・重点課題決定

   ②求める人材像・キャリアステップの決定

   ③カリキュラムの選定、コンテンツ案、担当講師の決定

   ④年間カリキュラムおよび詳細の策定

   ⑤成長イメージの設計

 2020年5月末

  育成内容&ストーリー決定

 2020年6月~

  (1)コンテンツづくり

   ①講師育成

   ②各講座のレジュメづくり

   ③Web 講座撮影

  (2)運営体制づくり

   ①事務局・委員会体制の確立

   ②教育制度と人事制度の連携検討

   ③アカデミー運営・受講フローの策定

   ④JESCO アカデミークラウドの構築

 2020年10月

  プレ開校

 2021年4月

  本開校

 

4.今後の狙い

(1)現場力と人間力を高めるコンテンツの充実化

(2)オープンアカデミー化へ

 

 

JESCOホールディングス株式会社

人材開発部 リクルート課

下村 孝志氏

2015年JESCOホールディングス株式会社入社。前職は化粧品メーカー人事部門に所属、人事・教育制度の構築に取り組んだ。JESCOアカデミーでは、事務局として導入に携わる。

 

 

Session4 わが社が取り組むブレンドラーニングとは
1.KDSアカデミー開校の目的
社会インフラを現場でつくり、支える専門的な技術・技能の伝承と人材育成

 

2.「KDSアカデミー」を社内に浸透させるための取り組み

(1)社員に「KDSアカデミー」に携わってもらうため3つの組織を立ち上げた

①「アカデミー委員会」(小林社長が委員長を務め意思決定する)
②「アカデミー協議会」(人材育成の方向性をリーダーたちが協議する)
③「ワーキングチーム」(科目別に技術のエキスパートがカリキュラムや動画教材を作成する)

(2)総務部内の研修課を「教育アカデミー部」に

 

3.「学びのデジタル化」のメリット

(1)時間・場所を問わず、深く広く技術を学べる

(2)若い社員は、デジタルの学びの方が親しみやすい

(3)技術や仕事の仕方を高いレベルで均質化

 

4.ブレンドラーニングについて

(1)概要
実践的なリアルの集合研修と、多様な技術・技能に触れられるデジタル動画。両方の良い所を取って、より効率的で効果的な教育が可能に

(2)活用例
デジタル動画教材を見て頭の中で作業内容をイメージしてから、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で実技訓練を受ける。訓練後、自信のない内容は動画を見直す

(3)社内へ浸透させた方法
育成の目的やカリキュラムをまとめた冊子「KDSアカデミーブック」やポスターなどでインナーブランディングを行った

 

5.今後の展望

(1)新入社員以外のミドル層・幹部層への教育でアカデミーを活用

(2)実技訓練のための施設を造りたい

(3)現場の知恵を取り入れながら、社員みんなが教え、学び合い、仕事が楽しくなる社風づくり

 

 

JR九州電気システム株式会社

代表取締役社長

小林 宰氏

1985年日本国有鉄道入社。民営化に伴いスタートしたJR九州において、主に車両・運輸・サービスの事業に従事し、九州新幹線開業に携わる。2018年 JR九州電気システム代表取締役社長に就任。「明日をつなぎ 笑顔と未来をつなぐ」NEXT KDSを掲げ、KDSアカデミーをはじめとした企業変革に取り組んでいる。

 

 

 

Session5 人的資源へ戦略的に投資するポイント

ニューノーマル時代における人材育成について、今回ご紹介した先進事例3社の共通ポイントは、「人」中心の経営をしていることだ。社員の成長が企業の成長につながるという信念を持って戦略的な投資を行っている。

 

3社に共通する人材育成の価値観

 

(1)育成対象は「全社員」
特定の階層・特定の人材だけでなく全社員の成長・活躍を真剣に考える。

 

(2)企業の役割は「育成支援」
自らのキャリアコースを自らが決め、自身に必要なスキル・能力を自ら認識し、自発的にその習得に取り組む「自立型人材」を育成。

 

(3)メッセージによる「共感」
人材育成に関するメッセージ(信念)を発信・実現し、「共感」を得ることでエンゲージメント(従業員の会社に対する愛着心や思い入れ)が高まる。

 

ニューノーマル時代の人材育成に向け、まずは、社員が成長する価値(社会・会社・自身に何をもたらすか)、求める人材像、具体的な支援内容を明確にしていただきたい。

 

株式会社タナベ経営

執行役員

HRコンサルティング東京本部長

川島 克也

2001年タナベ経営入社。2020年より執行役員。経営全般からマーケティング戦略構築、企業の独自性を生かした人事戦略の構築など、幅広いコンサルティング分野で活躍中。企業の競争力向上に向けた戦略構築と、強みを生かす人事戦略の連携により、数多くの優良企業の成長を実現している。

 

 

 

 

 

 

 

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