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【イベントリポート】

視察リポート

タナベコンサルティンググループが行った視察(展示会、フォーラム、海外企業など)をリポートします。
イベントリポート2022.06.21

グローウィン・パートナーズがM&A専門家の集う国際会議「The Rainmaker Copenhagen」に参加

 

 

デンマークの首都コペンハーゲンにて開催された国際会議「The Rainmaker Copenhagen」の様子

 

 

M&Aワールドワイド主催の国際会議「The Rainmaker Copenhagen」(2022年5月18~20日)に、タナベコンサルティンググループのグローウィン・パートナーズが参加した。コロナ禍の影響により2年ぶりに開催されたこの国際会議では、最新のM&A情報が交換され、日本企業の海外展開に役立つ案件情報も発信された。

※世界各国のM&Aブティックが加盟するグローバルM&Aネットワーク

 

世界のM&Aの潮流

デンマークの首都コペンハーゲンにて、M&Aワールドワイドによる国際会議「The Rainmaker Copenhagen」が5月18~20日の3日間にわたり開催された。2年前、本会議は開催寸前まで準備が進められたものの、コロナ感染拡大のため延期となった経緯がある。この度、デンマークのメンバーファーム「Cigno」が会議の再始動に向けて尽力した結果、約30カ国より49ファーム、総勢120名が参加する、盛大な会となった。

 

M&Aワールドワイドとしては今回で37回目の開催となった本会議。参加メンバーは雑談を交えながら、互いを良く知ることができた。より深い交流ができたのは、オンラインではなくリアルで開催できたことによるものだと実感している。

 

M&Aワールドワイドのエグゼクティブディレクターであるルイ・デルガド氏は「M&Aのビジネスモデルは、最新の主要な経済および市場の発展により変化している。ITの発展にも影響を受けており、AIがM&Aプロセスに変革を起こす可能性がある。本会議では、ITやESGの専門家を招待し、私たちが世界の最前線に立つための最新事情を共有した。M&Aワールドワイドは、わずか18年間で565件以上の取り引きを成立させた。取引数が大幅に増加した理由は、私たちがクライアントを深く理解し成長を支援したからだ。本会議によって参加メンバーの協力関係が強くなった。そのことがクライアントのグローバル化支援に役立つであろう」とコメントしていた。

 

当社は、日本のM&A市場について、コロナ禍においても、中小規模の案件数が特に好調に伸びていることをリポートした。同様に米国やインド、欧州のファームからもリポートがあった。特に印象的であった内容を2点ご紹介したい。

 

1.海外M&A増加への期待

2020年はコロナ禍、過剰な資金流入、そして2022年に入りウクライナ情勢の緊迫化など、社会はまさに「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」、つまりVUCAVolatility:変動性・Uncertainty:不確実性・Complexity:複雑性・Ambiguity:曖昧性)の時代である。こうした時代にあって、クロスボーダーの案件は移動の制限から縮小気味であったが、移動制限の解除とともにニーズは高まっていくとの見通しが示された。

 

2.ESGとテックとM&A

会議のトピックとしてESGEnvironment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンス)とAIが取り上げられ、それぞれ現地の専門家からのスピーチが行われた。AIやロボティクスでは新興企業が多数生まれ、一定の成長の後に大手企業とのM&Aによりエグジット(投資資金回収)を迎える。そして、新たなテーマで再起業をするアントレプレナーのストーリーが紹介された。

 

欧州においても、こうしたテックディールに対する関心の高さを感じることができた。また、そうした形で新規事業をスピーディーに立ち上げていく大手企業と、コア技術を持つベンチャー企業とをつなげるM&A専門家の役割の重要性について、再認識する機会となった。

 

ESGについて、現地の銀行からのプレゼンテーションで「これからは中小のディールであってもESGは無視できない要素となる。対応できていない企業の買収は資金調達上リスクとなり得る」とのコメントがあった。

 

ESGはM&A専門家にとってスモールキャップ(小型株)であっても、もはや他人事とは言えなくなってきている。製造業をはじめ、日本の企業でも今後はESGの視点を持って取り引きを行う重要性が高まっていくと考えられる。この分野では米国よりもEUが先行しており、今後も欧州の動向を注視していきたい。

 

 

「M&AにおけるESGの重要性は今後さらに高まっていく」と語るDanske Bank のNiels Bang-Hansen氏

 

 

ポストコロナの海外事情

 

筆者自身、2020年2月以来2年ぶりの海外出張となった。そこで気付いたポストコロナの海外新潮流をお伝えしたい。

 

1.マスク着用なしの日常を取り戻す

コペンハーゲンでは、すでにマスクを着用しない生活がスタートしており、日常生活の制限はほぼなくなっていた。パブやレストランにはにぎやかさが戻り、現地でマスクをしている人の姿を見かけることはなかった。マスクをしている人の姿は、日本にいると特別な感じはしないが、欧州の人々にとっては特別なものであり、マスク着用の解除が日常生活を取り戻すことの象徴であるとあらためて感じた。

 

そのことから、かつて、米国の保険会社アフラックが日本参入を決めたきっかけとなったのは、日本人が風邪予防のために日常的にマスクをしている姿を見たことだというストーリーを思い出した。日本人の健康に関する意識が高いところに、商機を見いだしたのである。日本でも早く「マスクの着用は自身の健康管理のため」という意識で、全員がマスクをしていなくても不安のない社会となることを願っている。

 

2.EVの普及速度

現地に到着して、タクシー乗り場に並び、まず感じた印象はEV車の多さである。乗車したタクシー車両は「テスラ3」だ。運転手によると、「以前乗っていたメルセデスベンツよりメンテナンスが少なく、確実に稼働できるのでタクシーとして十分な耐久性がある。加えて、補助などがあり価格競争力もある」とのことであった。

 

肌感覚ではあるが、市街地で見かける乗用車の2割前後がEV車であり、また、路上のパーキングスポットには多くの給電ステーションが備え付けられていた。デンマーク政府は2030年までにガソリン車・ディーゼル車を廃止し、2035年までにハイブリッド車も廃止していく計画を発表している。計画倒れにならないよう、着実に社会実装が進んでいる印象を受けた。

 

 

パーキングスポットに備え付けられた給電ステーション

 

 

3.自転車とカーボンニュートラルシティー

コペンハーゲンで過ごして気付いたのは、自転車が市民生活に浸透しているということである。コペンハーゲン市は「2025年までに世界初のCO2ニュートラルな市となる」という目標を掲げ、グリーン・モビリティーの一環として自転車の利用を促進し、インフラの整備を進めている。

 

市街地の道路には、歩道とは別に「自転車専用路」が整備されていた。また、市街地のいたるところに駐輪スペースが設置されており、美しい街並みに自転車が整然と置かれている光景を何度も目にした。自転車の鉄道持ち込みも行われているほか、シェアサイクルの整備も進んでいるようで、アプリで起動する自転車と電動キックボードのステーションを見かけた。

 

 

自転車が整然と並ぶ自転車の駐輪スペース。コペンハーゲンでは珍しくない光景

 

 

ポストコロナ経済におけるグローバルビジネスの再構築

今回の国際会議への参加で、2020年からの2年で世界に起こったことと、今後の予兆を肌で感じることができた。クロスボーダーM&Aのニーズは高まっており、日本企業に紹介してほしいという海外案件の情報も増えてきている。コロナ禍では移動が制限され、日本企業の海外展開は、難しかっただろう。予防接種の浸透や医学・科学的な努力で、人類はコロナ禍を克服し、新しい時代に向かおうとしている。2022年6月以降、徐々に入国制限や海外渡航も緩和されて、コロナ禍以前に戻りつつある。

 

中長期戦略において、海外事業展開は多くの企業にとって重要な経営課題であろう。グローバルビジネスを実行するためには、経営者が直接、海外に行って意思決定をすることが大切だ。肌で感じたことはより深く印象に残り、実体験からは新鮮な発見がある。経営者の皆さまが、安全に海外視察を再開できる日を願っている。

 

 

グローウィン・パートナーズ フィナンシャル・アドバイザリー事業部 海外FA部 部長
田内 恒治(Koji Tauchi)
コンサルタントとして長年にわたり、日本企業の海外戦略立案、実行支援コンサルティングを多数実施。前職ではホーチミン事務所長を歴任したほか米国での駐在経験を有する。アジア欧米の幅広いネットワークと知見を活用した海外戦略立案、パートナー探索からクロスボーダーM&A、戦略的資本提携の実施に至る一気通貫のアドバイス業務に強みを持つ。

 

 

 

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