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【研究リポート】

FCC FORUM 2021

タナベコンサルティンググループ主催「ファーストコールカンパニーフォーラム2021~DX価値を実装する~」(2021年6~8月、オンデマンド開催)の講演録。デジタルを軸に、サービスやビジネスモデル、業務プロセス、組織風土を変革し、競争優位性を発揮する要諦を提言します。
研究リポート2021.10.01

アッテル
AIによる資質診断でハイパフォーマーを分析

データ活用で成果を創出するHRDXを実践

 

タナベ経営・岡原(以降、岡原) アッテルはヒューマンリソース(HR)DX領域において、AIによる資質診断サービスの提供で急成長されています。まずは会社と事業の概要についてお聞かせください。

 

塚本 当社はHR領域におけるデータ分析に特化しているスタートアップです。データを使って、多くの企業で活躍・定着人材が増えるよう取り組んでおり、現在約400社にサービスをご提供しています。サービス内容をご紹介する前に、まず、当社で行った調査結果についてお話しします。

 

HRに関わる方を対象に、採用面接における人材の見極め精度が「自分は平均以上だと思うか」という質問をしたところ、7割の方が「平均以上」だと答えました。しかし、「自分の採用面接の成果を確認したことがあるか」という質問では9割の方が「ない」と答えています。これは、企業においてHR担当者の感覚(勘・経験)のみで採用・配置が成されている可能性があることを示しています。

 

また、「ストレス耐性が高い人は離職しにくい」「エンゲージメントスコアが高ければ退職率は低い」といった通説は、際の数値とは異なるとの研究結果もあります。

 

HRデータを活用する際は、担当者の感覚のみに頼らず、入社後にミスマッチが起こらないような正しい適性検査を行うことと、自社のハイパフォーマーとローパフォーマーの違いや特徴を踏まえた上で分析することが重要になります。当社ではこれらのポイントを押さえたサービスを分析から改善までワンストップで提供しています。

 

 

データから課題を可視化して解決を図る

 

岡原 アッテルのプロダクトサービスで、どのようなことが実現できるのか、事例を交えながらお聞かせください。

 

塚本 大きく分類すると、HRDXの目的は「業務の効率化」と「AIを使って成果を創出すること」であり、当社が取り組んでいるのは後者です。成果創出のためのHRDXでは、データを取得・蓄積し、それを可視化して、分析・予測、実行・検証するという流れで目的達成につなげていきます。

 

しかし、当社では、このフローに逆順で取り組んでいく必要があると考えています(【図表】)。目標設定が重要で、そこから逆算して目標を達成するためにはどのような打ち手や分析、データが必要なのかという順番でHRDXに取り組むと、比較的に実現しやすいと分かっています。

【図表】目的・打ち手から逆算したHRDXの全体設計

出所:対談資料よりタナベ経営作成

 

具体的な分析をご紹介します。採用時の面接では良い人材だと思ったのに、入社後なかなか活躍しないという課題解決の事例です。

 

ある営業系の組織では、コミュニケーションが得意である「外向的」な資質を持った人材よりも、真逆である「内省的」な資質を持った人材の方が活躍しているというデータが出ました。一般的に、営業はコミュニケーションが得意な方が向いているとされていますが、この会社の商材は、お客さまの状況を深く考えてアドバイスをすることが重要だったので、内省型の資質を持った人材の方が活躍・定着されていたのです。その後、同社は採用基準を大幅に変更しました。

 

人材配置も悩みの1つだと思います。ある企業では、営業と事務ではハイパフォーマーとローパフォーマーの傾向が大きく異なるという結果が出ました。そこで、事務のハイパフォーマー傾向を持っている営業担当者を事務職に異動させて課題を解決したという事例もあります。

 

岡原 興味深い試みですね。データを取得することで、これまで見えなかった傾向や職種の特徴が見えてくる。それを活用することで、より自社に合った人材採用や人材配置などに役立てられるということですね。

 

最後に、アッテルの今後のビジョンと、DXを推進しようとしている企業に向けてメッセージをお願いします。

 

塚本 入社後の活躍・定着を見極める定量化の手法としては、資質以外にスキルとモチベーションも重要です。そこで、この2つを定量化できるようにしたいです。最終的には、求職者と企業のデータを大量に蓄積することによって、社会全体での最適配置を実現していきたいと考えています。

 

また、HRDXを検討中の企業の皆さまには、3つのポイントを提言します。まずは、先ほども申し上げた「目的を定める」こと。AIを使って「何をするのか」を明確にすることです。2つ目は、「中長期のコミットメント」。HRDXは時間がかかる一方、競争優位をつくるものでもあります。一朝一夕では成し遂げられないことを念頭に置いておくと良いでしょう。最後が「アジャイルに進める」ことです。HRDXは成果が分かりにくい部分があるので、細かくPDCAを回していくことが大切です。この3点にご注意いただくことでHRDXの成果が上がるはずです。

 

岡原 本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

 

塚本 鋭(つかもと えい)氏
アッテル 代表取締役

 

 

PROFILE

  • (株)アッテル
  • 「脱。感覚人事。」を掲げ、AIが活躍人材・早期退職を予測するピープルアナリティクスサービス「アッテル」の企画・開発・販売・運営を行う。社員の適性検査により人材情報を定量化し、データ分析・予測・改善までをワンストップで提供している。2018年4月に(株)トランスとして設立、2020年5月に(株)アッテルへ社名変更。

 

 

Interviewer

岡原 安博(おかはら やすひろ)
タナベ経営
HRコンサルティング東京本部 部長代理

 

 

 

 

 

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