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【研究リポート】

FCC FORUM 2021

タナベコンサルティンググループ主催「ファーストコールカンパニーフォーラム2021~DX価値を実装する~」(2021年6~8月、オンデマンド開催)の講演録。デジタルを軸に、サービスやビジネスモデル、業務プロセス、組織風土を変革し、競争優位性を発揮する要諦を提言します。
研究リポート2021.10.01

マーケティングDX:タナベ経営 講義

タナベ経営 講義 01

顧客体験価値の質的向上

 

講師:タナベ経営 執行役員

   九州本部長

   高島 健二(たかしま けんじ)

 

「DXに着手して、D(デジタル化、効率化)は進んでいるが、X(トランスフォーメーション:変容)はまだ遠い」。経営者のそうした声を耳にします。「表面的なデジタル化はできても自社の変容には至っていない」ということです。

 

デジタルマーケティングを用いた顧客体験価値の向上施策を総称して、「マーケティングDX」と言います。SNSやメール広告を使うウェブマーケティング、見込み客に自動対応するMA(マーケティングオートメーション)ツールなど、それぞれの役割や目的を理解することがマーケティングDXを進める第一歩になります。

 

マーケティングDXは3つの戦略カテゴリー(以降、C)に分けられます。C1は「コスト・リスクの最小化」、C2は「収益の最大化」、C3は「企業価値の最大化」です。BtoBとBtoCではターゲットが異なるため、打つ手も変わります。(【図表】)

 

BtoBにおけるC1は、「非効率アプローチの削減」です。営業経費というコスト、機会損失というリスクを削減することで、営業活動のオンライン化を進めていきます。C2の「顧客育成の最適化」は、見込み顧客リストを資産と捉え、その創出・活用を進める考え方です。C3は「顧客価値・需要の予測」で、営業部門とマーケティング部門が連携して商談に進めたいターゲットを定め、新規リード顧客を獲得します。

 

BtoCにおけるC1は「マスからダイレクトへ」。顧客に伝わる広告宣伝活動でコストの削減とリスクの最小化を進めていきます。C2は「顧客志向から顧客主導へ」で、仮説ニーズの商品開発から、顧客の意思決定を踏まえた開発に転換していく取り組みです。C3は「インバウンドマーケティング」で、購買側の購入決定プロセスに、知りたい情報や製品知識をデジタルで提供する手法です。BtoB、BtoCのいずれも、顧客が相談・購入するまでに、顧客体験を向上させる接点とステップをつくり出す設計が重要です。

 

最後に、マーケティングDXの要諦を3点にまとめます。①経営者自らが費用対効果よりも投資対効果で考え決断する、②受注と失注の「ゼロか100か」ではなく、失注してもリサイクルできる資産として中長期的に顧客を育成し、コンテンツを増やしていく、③「本当に自社に必要なDX」を明確にする。これらを意識し、ご一緒に貴社の変革を実現しましょう。

 

 

【図表】マーケティングDXの戦略カテゴリー

 

 

 

 

タナベ経営 講義 02

デジタル機能で営業活動を再設計する

 

講師:タナベ経営

   中四国支社

   副支社長

   森重 裕彰(もりしげ ひろあき)

 

総合ディスプレー事業を手掛けるA社のマーケティングDX事例を紹介します。同社は、コロナショックで商業施設の改装需要が減少し、営業提案にも出られない日々が続きました。「今の延長線上に未来はない」と考えた経営トップは、MAツールの導入によるDXを決断。2カ月後、年間1件だった自社サイト経由の商談は8件に増え、受注も1件決まる成果につながりました。

 

成功のポイントは3つあります。1つ目は、メールマガジンの配信やマーケティングサイトの新設による「リアル営業活動以外の新たな顧客接点の創造」です。2つ目は、自社の多様なノウハウを集約し、マーケティングサイトでコンテンツ化。顧客開拓の武器に変える「組織営業」をスタートさせたことです。3つ目は、インサイドセールス部門を新設し、営業部門との連携によってリアルでの営業活動の成果を上げやすくする「営業機能の分化による組織の進化」を実現させたことです。

 

顧客の動きを見える化するMAツールの活用も、マーケティングサイトも、まだこれからブラッシュアップが必要ですし、一時的には組織体制の混乱も生じたと言います。それでもA社は、成果がすぐに出たことで変化を恐れなくなりました。

 

「過去にできなかったことを実現する」。この時代に生きる私たちの責務として、変化を恐れずにDXの第一歩を踏み出していきましょう。

 

 

 

タナベ経営 講義 03

リアル×デジタル×マネジメント

 

講師:タナベ経営 執行役員

   マーケティングコンサルティング本部

   副本部長

   庄田 順一(しょうだ じゅんいち)

 

札幌に本社を構え、注文住宅事業と規格住宅事業を展開する土屋ホームのDX事例を紹介します。モデルハウスの提案を中心とした従来の営業モデルに、市場の顧客行動の変化を捉えるデジタル活用を加えた顧客創造モデルを創出し、コロナ禍でも受注が増加しました。

 

成功の要因は次の3つです。1つ目は、アナログでの営業活動と、SNSやウェブ広告などのデジタルプロモーションとの連携で設定した、受注棟数やリード獲得数などの目標値をKGI(経営目標達成指標)として設定。「効果」という測定可能な共通言語を持ったことです。2つ目は、個別に作成していた営業資料を統一し、同社の営業デジタルツール・TS3(Tsuchiya Sales Support System)の活用を推進したことです。全社員にタブレット端末を配付して高レベルの平準化を実現し、デジタルリテラシーの向上にも寄与しています。3つ目は、デジタルを使った集客活動を全社展開したことです。経営トップも参加する全拠点参加型のデジタル戦略ミーティング「デジタル集客戦略会議」を月2回、Zoomで開催。他拠点の成功事例を共有し、高速でPDCAを回しています。

 

デジタルとアナログをつなぎ、いまは「非常識」であっても、近い未来に良い変化をもたらす「新常識」に変えていく。そんな全社的なマネジメント戦略で新たな顧客創造モデルをつくり、営業部門の生産性向上を実現してください。

 

 

 

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