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【イベントリポート】

FCC FORUM 2021

タナベ経営主催「ファーストコールカンパニーフォーラム2021~DX価値を実装する~」(2021年6~8月、オンデマンド開催)の講演録。デジタルを軸に、サービスやビジネスモデル、業務プロセス、組織風土を変革し、競争優位性を発揮する要諦を提言します。
イベントリポート2021.10.01

アナログなシステムと企業文化をDXで変革し「お客さま思考」を実現:嘉穂無線ホールディングス

 

DX推進プロジェクトを2015年に開始

 

タナベ経営・高島(以降、高島) 嘉穂無線ホールディングスは、北部九州・山口を中心にホームセンター「グッデイ」64店舗の運営を手掛けるグッデイや、データ活用事業を手掛けるカホエンタープライズ、電子工作キット販売のイーケイジャパンを傘下に置くホールディングカンパニーです。小売業の領域でデータ分析の共有やAIの活用によって現場課題を解決し、アナログ中心の業務をデジタル化するなど、DXを実現して目覚ましい成長を遂げられています。

 

柳瀬 店舗レジから毎日POS(販売時点情報管理)データを収集・蓄積し、AIで分析しています。従来はシステム間の同期やデータ連携の仕組みづくりにコストや時間がかかり、柔軟に運用できないのが課題でした。

 

そこで、全てのデータをクラウドで一元管理する仕組みをつくりました。自社店舗のさまざまなデータを簡単な操作で可視化し、分析結果は仕入れ先やバイヤー、店長にも共有できます。

 

高島 DXにつながるIT改革に着手したきっかけを教えてください。

 

柳瀬 当時の当社は非常にアナログで、業務は電話とファクスが中心でした。システムは、1990年代半ばに自社開発した基幹システムを使い続けていました。クラウドやビッグデータ、AI活用の時代が近付くにつれ、このままではいけないという危機感が募ってきました。企業風土も内向きで、「ルーティンワークを行えば結果が付いてくる」と、新しいチャレンジを行わない雰囲気でした。

 

高島 アナログな企業文化を変えようと、2015年に「DX推進プロジェクト」を立ち上げました。

 

柳瀬 「ITで会社を変革できる」と、ベンダー(製造元・販売供給元)に言われても確信が持てずにいましたが、自分たちで自主的にITを活用することで解決しました。成功の要因は3つあります。

 

1つ目は、多様な情報を共有できるグループウエアの導入です。自社開発に比べ圧倒的にコストが安く、しかもスピーディーにやりたいことが実現できるITツールが手に入りました。2つ目は、私自身も最新のデジタル技術を学んだことです。GoogleやAmazonのクラウドカンファレンスに参加し、「IT化・DXの空気感」を肌で感じたことが大きかったですね。プログラミングの基礎を学んで簡単なデータ分析のためのコーディングも行えるようになりました。3つ目は人材育成です。20~30歳代の若手社員を集めて毎週、自社研修プログラム「GooDay Data Academy」を開催し、自社でクラウドシステムを内製化できる体制を整えています。

 

 

DXのノウハウを汎用サービス化していく

 

高島 DXが業績向上に結び付いています。

 

柳瀬 右肩下がりの続いていた当社の売り上げが、データ分析を開始後、上昇軌道に反転しました。10分ごとに売り上げを分析できるので、店長はすぐに対策を打ち、無駄な販促費もコントロールすることで、利益面でも成果が生まれています。

 

社員の関心も高まって、今では現場の方がデータ分析に詳しくなり、思いも付かないツールの使い方で成果を生み出しています。成功事例は店長会議で共有していましたが、業務報告にもチャット機能を使い、その日のうちに水平展開できるようになりました。月次の情報が日次にアップデートされ、本部から一方向だった伝達も店舗同士で多方向に拡散。社内のデジタル化が進みつつあります。

 

高島 人材が育ち、優秀な人材も集まるようになったそうですね。

 

柳瀬 クラウドアプリを内製できるほど、当社のITリテラシーが高まりました。「最先端の仕事をしたいから」と中途採用への応募が増え、新卒採用では九州地方の就職人気ランキングで16位、小売業ではトップです。

 

高島 導入した当初だけ使い、そのうち誰も使わなくなる。そうならないためにも、しっかりと定着させていくことが重要です。

 

柳瀬 クラウド機能を使えば、今までできなかったことができるようになります。仕入れや売り場づくりにも通じることですが、新しい情報を常に社員が学び、アップデートしていく風土がとても重要だと実感しています。

 

高島 今後に向けた取り組みを教えてください。

 

柳瀬 まずは、自社でさらにDXを推進、それも内製化で推進していこうと考えています。現場ではお客さまとの接点をデジタル化し、音声で商品名を言うと売り場を表示する「商品場所案内システム」を試験的に運用しています。また、発注の自動化や需要予測など、DXを生かす余地はまだたくさんあります。

 

事業については、自社で構築したクラウドデータを活用するノウハウを汎用サービス化していきます。当社の水平展開の仕組みを広く共有すれば世の中に役立てると気付きました。2017年には、データ分析・コンサルティング事業を手掛けるカホエンタープライズを設立し、店舗別・商品別の売り上げデータを可視化・分析できる安価なSaaS(必要な機能を必要な分だけ利用できるソフトウエア)パッケージ「KOX(コックス)」の販売を開始しました。今後は経営者も、経験と勘をデジタル化し、データを分析して経営判断するべきだと思います。

 

さらに、業界標準となるような一元管理の仕組みを、「小売のDX」としてつくり上げていきたいと考えています。お客さまに対するアクションを起こせば、すぐに結果が出るのが小売業の醍醐味です。データ活用のフィールドとして、非常に魅力的でエキサイティング、しかも最先端であるような小売業界にしていきたいですね。

 

高島 本日はDX実装の具体的な取り組みをお聞かせいただき、ありがとうございました。

 

 

柳瀬 隆志(やなせ たかし)氏
嘉穂無線ホールディングス 代表取締役社長

 

 

PROFILE

  • 嘉穂無線ホールディングス(株)
  • 北部九州・山口を中心に64店舗を展開するホームセンター「グッデイ」の運営を手掛けるグッデイなどを傘下に置くホールディングカンパニー。グッデイではAIツールを活用し、毎日の需要予測を基に業務効率や生産性の改善に成功。ホームセンターというBtoC領域から、マーケティングDXを通じて自社で培った成功事例を基にBtoB領域へと拡大し、企業の需要予測をベースとした発注量の最適化や仕入れにおける省人化・効率化を実現している。

 

 

Interviewer

高島 健二(たかしま けんじ)
タナベ経営
執行役員
九州本部長

 

 

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